「鬼滅」グッズや限定ミニカー…献血謝礼品のネット出品相次ぐ、1万円で売買のケースも

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若者の献血者が減り続ける中、関心を高めようと配布した謝礼品が、インターネット上で売られるケースが相次いでいる。
非売品にもかかわらず、5000円以上で取引されたものも。献血は無償での協力が前提となっており、厚生労働省は謝礼品が換金される事態に頭を悩ませている。(星野達哉)
■鬼滅の刃、SPY×FAMILYなど出品
「献血でもらいました。余ったので出品します」「新品未開封です」。個人間の取引ができる国内大手のフリマサイトで、「献血 記念品」と検索すると、販売済みも含め500件以上の商品が表示される。
若い世代に人気のアニメ「鬼滅(きめつ)の刃(やいば)」や「SPY×FAMILY(スパイファミリー)」のキャラクターが描かれたポスター、クリアファイルに加え、献血を繰り返した人がもらえるグラスも出品されていた。
多くは数百円から1000円程度で取引されている。だが、日本赤十字社が大手玩具メーカー「タカラトミー」と共同制作した日赤のマークが入った限定ミニカーは、1万円の高値で売れていたケースもあった。
出品されているのは、いずれも献血の協力者に配られたグッズで、日赤が制作費を負担し、企業側の協力を得て作られている。日赤がこうしたグッズを配布している背景には、若者の献血離れがある。
■若年層の献血者は2005年度の半分
献血者は2005年度以降、毎年500万人前後で推移している。一方、30歳未満の若年層の落ち込みは顕著で、05年度は173万人だったが、21年度は91万人と半分近くに減った。
「仕事や家事で時間がない」という理由が多く、最近ではコロナ禍で学校での集団献血が中止になったことも影響しているという。
献血できるのは、16歳以上69歳以下。少子高齢化で輸血する人が増え、献血者が減れば、輸血用の血液製剤が不足する事態になる。日赤の試算では、35年度には46万人分の献血が足りなくなる恐れがあるという。
危機感を募らせた日赤は14年頃から、若者に人気のアニメなどを謝礼品に取り入れるようになった。日赤は「献血になじみのない層に協力してもらうきっかけ作りになる」と説明する。
こうしたグッズは、謝礼品が記載されたホームページで「転売禁止」と明示しているが、事業を所管する厚労省は、数年前からフリマサイトやオークションサイトに出品されているのを確認しているという。
■謝礼品の高値取引は「売血」の恐れも
血液法は有料での採血を禁止しており、献血はボランティアで協力することになっている。
転売問題に詳しい福井健策弁護士(57)は「謝礼品を売る行為は公益目的に反する。高値で取引されれば『売血』につながる恐れもあるため、対策を強化するべきだ」と話す。
グッズには売ることを禁じる文言はなく、日赤は配布時にも説明していない。福井弁護士は、サイト側に対し、グッズを売る行為が禁止であることを利用者に呼びかけてもらったり、受け取る人に売らないことを約束させたりすることが必要だと指摘する。
厚労省血液対策課では、サイトの運営側と対応について協議し、謝礼品の出品を禁じる措置をとるよう要請することなどを検討しているという。
■若者へ協力呼びかけ、あの手この手で…
全国には、献血できる場所が136か所ある。若者の協力を増やそうと、日赤は工夫を凝らしている。
アニメの専門店が並ぶ東京・秋葉原の献血ルームには、フィギュアやプラモデルを展示するスペースがあり、訪れる若い男性が増えているという。
川崎市のJR川崎駅前の献血ルームでは、地元で人気のプロサッカーチーム・川崎フロンターレの選手が、献血を呼びかけるサイン入りのサッカーボールやユニホームを飾っている。
雑誌や小説、漫画などが1000冊以上並び、無料のWi―Fi(ワイファイ)が使えるのは、横浜市西区の献血ルーム。室内は木目調で、おしゃれなカフェ風の造りが人気だ。
コロナ禍でリモートワークが進み、企業に献血バスが出向いても、協力者が集まりにくくなっている。日赤は、ネット上で予約できる会員サービスの利用を呼びかける。予約して献血すればポイントがつき、日用品と交換できる。

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