「江ノ電」71年ぶりダイヤ改正、「12分」間隔から「14分」に…歴史的変更に戸惑いも

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神奈川県藤沢市と鎌倉市を結び、住民や観光客の交通手段として欠かせない江ノ島電鉄(藤沢市片瀬海岸)が3月18日のダイヤ改正で、早朝と深夜帯を除いて運転間隔を「12分」から「14分」とする。
間隔の変更は1952年(昭和27年)以来71年ぶり。多発する運行遅れの改善などが目的とされるなか、長年の利用者は理解を示しながらも歴史的な変更に戸惑いを隠せない。(津村浩、川崎大輝)
■「慣れるまで時間」
「沿線住民には12分間隔が染み込み、時刻表を見なくても出発時刻を分かっていた。慣れるまでに時間がかかってしまう」
藤沢市観光協会で副会長を務め、江の島で土産店を営む二見将幸さん(54)は語る。電車の音を目覚まし時計のように聞いている知人もいる。ただ、近年は混雑や周辺道路の渋滞が、電車の運行に影響していたことも知っており、「定時運行や安全面を考えると仕方がないか……」と加えた。
藤沢駅を利用し、鎌倉高へ通う1年の男子生徒(16)は「登下校時は超満員なのに、本数が減ってもっと混むのはつらい。学校でも話題になっている」と心配しつつ、「わずか2分だけど大きな違い。8時ちょうどの電車を『8エノ』と暗号みたいに呼んでいたのにできない」と惜しむ。沿線には七里ガ浜高、鵠沼高など学校も多い。
江ノ電の発表によると、日中は1時間に5本運行してきたが、変更後は4、5本となる。1日の運行も181本から15%ほど減って154本。藤沢から鎌倉まで15駅を34分ほどで結んでいるが、所要時間は37分に増える。
単線運行のため、混雑や江ノ島―腰越駅の路面区間の道路事情で遅延が発生すると、1便の遅れが全体に影響してしまう。回復力を高め、安定輸送の確保を図る狙いがある。
■コロナで客数半減
一方、鎌倉市の統計によると、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年度の江ノ電鎌倉駅乗降客数は944万3568人だったが、20年度は488万7531人と半数近くに減少。新たな生活スタイルや働き方の浸透にも配慮する。
市内に9駅があり、観光や通勤通学の動脈となっている鎌倉市の松尾崇市長は「間隔が分かりやすかった分、残念な思いもある」と語る。コロナ禍前の観光客の増加や日常的な路面区間の渋滞も考慮し、「現実的には定時運行が難しくなっていた。定時性、安全性の確保のための決断を尊重する」と受け止める。
藤沢市観光課の担当者は「需要と供給からの判断だろう。今後も状況を見極めて効率的なダイヤを検討するのではないか」とみる。

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