ジャーナリスト「上杉隆氏」、編集主幹に就任した新聞社から提訴されていた

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

上杉隆氏といえば、故・鳩山邦夫元代議士の秘書を経てジャーナリストとして活躍し、2016年には東京都知事選にも出馬。現在は、ネットニュース番組「ニューズ・オプエド」を運営する、株式会社NOBORDERの代表取締役も務める著名ジャーナリストである。そんな上杉氏は、昨年6月に「にいがた経済新聞社」の“編集主幹”に就任したことを発表して話題になったばかり。だが、ここに来て、その新聞社から訴訟を起こされていたことが分かった。
***
【写真を見る】N国党の幹事長に就任したことも「私たちはNOBORDER社と業務提携契約を結び、その後、上杉さんの提案で、人工知能を使って記事を自動生成する“AI記者”システムを開発してもらう契約も結びました。しかし、前金を振り込んだにもかかわらず、“AI記者”は納品されず、上杉さんとも連絡が取れなくなってしまったのです」東京都知事選に出馬した際の上杉氏 そう語るのは、有限会社にいがた経済新聞社の代表取締役・今井一志氏である。 元新潟県議の石塚健氏が2016年に立ち上げた同社は、2年ほど前からネット媒体に軸足を移し、地元向けのニュースサイト「にいがた経済新聞(にいけい)」を運営している。石塚氏も鳩山邦夫元代議士の秘書を務めた経歴があり、かねてより上杉氏と親交があったという。 上杉氏は同社の“編集主幹”に就任した際、自身のメルマガに記事を寄せている(『上杉隆の「ニッポンの問題点」』/2022年6月14日付)。 そこには、〈何を隠そう、新聞社の編集主幹への就任は、若き日の夢のひとつだった。組織ジャーナリズムの頂点、とりわけ新聞の編集トップは、自由な言論を守る砦の役割を果たす重責だと考えていた〉といった言葉が並んでいた。 では、なぜ両者の関係は裁判沙汰に至るまでこじれてしまったのか。先の今井氏はこう続ける。「2021年8月にNOBORDER社と業務提携して以降、私たちは同社が運営する『ニューズ・オプエド』にコンテンツを提供し、一方で、上杉さんの記事を『にいけい』に掲載してきました。そうしたなかで、上杉さんから“AI記者”についての提案を受けたのです。“AI記者”は上杉さんが代表を務める『株式会社メディアカウンター』が開発しているシステムで、これを導入すれば『にいけい』の業務効率化が図れるということでした。たしかに、記事を自動で作成できるシステムは人的負担の軽減に繋がるため、社員数の少ない弊社にとってメリットは大きい。総事業費は前金として500万円、納品後に1000万円の計1500万円と提示されました。ただし、経産省の“ものづくり補助金”制度を利用することで、納品後に1000万円の補助金を得ることができる、と。つまり、弊社側の負担は実質500万円で済むというので、昨年4月に、上杉さんが代表を務めるメディアカウンター社と契約を結ぶことになりました」期日までに納品されず… その当時、にいがた経済新聞社の代表は上杉氏と親しい石塚氏だったという。「その頃は、創業者の石塚が編集面のトップ、私が経営面のトップを担っていたので、メディアカウンター社との契約も私が担当しました。契約段階での前金は約500万円でしたが、石塚が上杉さんから頼まれ、契約書に記載された金額のおよそ2倍に当たる1200万円を振り込んだのです」(今井氏) もちろん、実際に“AI記者”が納品され、補助金を手にすることができていれば大きな問題にはならなかっただろう。ところが――、「当初のスケジュールでは昨年9月30日までに完全納品され、10月には検証結果のレポートを経産省に提出し、補助金が支払われるはずでした。しかし、8月に上杉さんと打ち合わせをした際に“開発の進捗状況はいかがですか”と尋ねると、“『にいけい』からの支払いが遅いから”と誤魔化されました。たしかに融資を得るのに時間を要しましたが、期日が迫っても一向に納品される気配がなく、まもなく上杉さんからの連絡が途絶えてしまった。何度、上杉さんに問い合わせても返事が来なくなったのです」(今井氏) 今井氏はメディアカウンター社がシステムの開発を外注した会社の社長にも確認したそうだが、「“開発は進めているが、上杉さんから代金が支払われないので納品はできない”と言われてしまった。そこで10月3日、弁護士を通じて“AI記者”の提供を求める催告書をメディアカウンター社に送りました。しかし、期限が過ぎても返答がないどころか、NOBORDER社など上杉さんが関係する数社から“ホームページ広告の掲載費用”“オプエド動画CM費”“プログラム番組買取広告費”といった名目で、合計1億円を超える請求書が送られてきたのです。弊社とNOBORDER社との間では、互いのメディアにコンテンツを提供し合う契約を交わしていますが、広告費用やコンテンツ制作費用を請求するような関係性ではありません。こうした請求は寝耳に水で、事実無根としか言いようのないものでした」(今井氏)「“残念”と言うほかありません」 上杉氏との窓口になっていた石塚氏にも話を聞いた。「上杉さんにも色々と事情があったのだとは思いますが、“AI記者”に関しては、多額の前金を支払ったものの話が全く進んでいないのは事実です。こんな結末は予想していませんでしたし、正直、“残念”と言うほかありません。なお前金は、契約書上は500万円となっていたところ、上杉さんから1000万円にするよう頼まれました。そこに、こちらの融資の関係で200万円を加えた合計1200万円を支払い、200万円はすぐに返してもらう形をとりました。また、この件で『にいけい』が催告書を送った際に、大量の請求書が届いた話は今井から聞いています。『にいけい』とNOBORDER社の業務提携は、広告費用を請求されるような内容ではありません。そもそも、『にいけい』は定期的に『ニューズ・オプエド』の番組コンテンツの制作を担当しており、他にも頻繁にニュースを提供していた。その代わり上杉さんには『にいけい』でコラムなどを書いてもらっていました。我々としてはコンテンツを提供し合っていたという認識ですが、上杉さん側は“番組の枠を広告として『にいけい』に提供していた”と曲解しているのではないでしょうか。『ニューズ・オプエド』の番組では『にいけい』のCMも流してもらっていましたが、こちらのサイトでも『ニューズ・オプエド』のバナー広告を貼っていました。私と上杉さんの間で何らかの内諾があったということもありません。コンテンツ制作の負担は『にいけい』側の方が重かったと思うので、上杉さん側の請求が通るなら、むしろこちらが請求したいくらいですよ」 石塚氏はすでに代表を退任し、今井氏が新代表に就任。そして、昨年11月14日、にいがた経済新聞社は、メディアカウンター社と上杉氏を相手取り、訴訟を起こしたのである。「当初の訴状ではシステムの納品も請求項目に入れていましたが、“AI記者”に対する信頼が揺らぎ、経産省の補助金にも期限があるため、12月2日に請求内容を変更し、損害賠償を求めています。また、今後は刑事告訴も検討しているところです」(今井氏)上杉氏側の回答は… こうした指摘に上杉氏はどう答えるのか。上杉氏が代表を務めるNOBORDER社と、上杉氏の弁護士の事務所に取材を申し込むと、以下の回答書が寄せられた。 まず、にいがた経済新聞社とメディアカウンター社が、“AI記者”の開発に関する契約を結んだ経緯については、次のように説明する(以下、表記は回答書のまま)。〈2021年10月にソフトウェア開発を(有)にいがた経済新聞(以下「にいけい」)から依頼され、契約を締結することとなったが、にいけいの一方的な事情により、半年間、契約が締結されなかった。しかし、その間にも開発を急ぎたいにいけいから強い要望があり、NDA(編集部註:秘密保持契約)しか結ばないまま口頭での依頼で作業を開始した(第一フェーズ実装済)。2022年2月、一方的に契約締結を遅れさせているにいけいに対して、メディアカウンター社(以下「M社」)から受注辞退を申し入れたところ、4月になって、にいけいから一方的に契約書が送り付けてきた〉 にいがた経済新聞社が振り込んだという1200万円については、〈2022年5月より遅れぎみの他の作業AI開発チームらによって最終算出し、これまでの作業人、初期構築費として3分の2の1000万円をにいけいに請求し、一方、下請け各社には、M社の親会社のNoborder社が立て替えで支払いを行った。請求書および口座振り込み歴あり。なお、にいけいからM社への振り込みは、上記について了解したうえで、にいがた経済新聞の石塚社長から1200万円が振り込まれた(記録あり)。同日、「振込金額を間違えた」と石塚氏から連絡があり、200万円の返金を求められ、同時刻、にいけいの口座に返金した。全体の請求金額は1500万円で、残り500万円は納品後に支払うとなっており、開発作業の詳細を定期的に打ち合わせ中に、なんの前触れもなく一方的ににいけいが訴訟してきたために、作業を中断している〉 加えて、NOBORDER社が立て替えたという下請け業者との金銭的なやり取りに関しては、こう綴られている。〈事前作業分を行った下請け各社に対してはNoborder社が立て替え支払い済です。なお、立て替え払いをしていたNoborder社には、6月27日にM社から500万円払われております。記録あり。また8月24日に事務代行費などの手数料の200万円をN社(P社やI社などのエンジニアに)、さらに追加作業分として10月2日にS社(編集部註:回答書では企業名)に200万円支払い。10月の時点で、合計900万円を作業している会社に支払っています。残りの100万円はメディアカウンターの契約通り10%の手数料です〉〈訴権の乱用どころか、虚偽告訴罪に該当すると考えています〉 一方、にいがた経済新聞社側は500万円とされた前金が、上杉氏の依頼で増額されたと主張する。その点については、〈ありません。上記の通り、すでに行われた作業費を含め当初から1500万円の請求です(そのうちの1000万円が振り込まれた)〉と説明。にいがた経済新聞社側は刑事告訴も辞さない構えだが、〈どうぞ。訴権の乱用どころか、虚偽告訴罪に該当すると考えています〉。 また、にいがた経済新聞社側は“AI記者”の引き渡しを求めて催告書を送ったというが、それに対しては、〈代理人(編集部註:回答書では弁護士の実名)が即日委任、対応しております〉。 さらに、にいがた経済新聞社側は催告書への返答がないまま、事実無根の巨額の請求書が届いたと主張しているが、上杉氏側は次のように述べている。〈一方的に訴訟をしてきた相手に連絡も何もない。そもそも9月、一方的に連絡を断ったのはにいけいである〉、〈請求書、支払調書、受領書、契約書、すべてあります〉食い違う双方の主張 前出の今井氏はこう語る。「AIシステム開発に関する契約締結までに時間を要したのは、“ものづくり補助金”に採択されたら契約を結ぶという約束だったからです。融資に時間がかかったのは事実ですが、昨年4月18日に正式に契約を結び、その契約書には上杉さんの名前と共に、メディアカウンター社の社判も押されています。メディアカウンター社から“受注辞退”の申し入れがあったことは承知していません。前金のやり取りに関しては、石塚から、“融資の都合で200万円をプラスして払い、この分はすぐに戻してもらった”と聞いています」 また、今井氏が所持する〈ソフトウェア開発に関する契約書〉には、〈対価〉について次のように記されているという。「〈対価〉については、〈本件契約書提携時〉に税込みで〈金5,500,000円〉、〈ユーザ〉のにいがた経済新聞社が、〈ベンダ〉のメディアカウンター社から〈本件成果物の提供を受けたことを確認し〉、〈ユーザが確認書を交付した時〉に同じく税込みで〈金 11,000,000円〉を支払うと記されています。そして、契約書では〈2022年9月30日までに、ユーザに本件成果物を提供する〉と納品期限も設定しています。しかし、契約書にある金額の倍近い“前金”を支払ったのに、期限内に納品されることはなかった。私たちが送った催告書に対する反応も巨額の“請求書”のみで、他には何もありません」(今井氏) 食い違う双方の主張――。裁判はどんな結末を迎えるのか。デイリー新潮編集部
「私たちはNOBORDER社と業務提携契約を結び、その後、上杉さんの提案で、人工知能を使って記事を自動生成する“AI記者”システムを開発してもらう契約も結びました。しかし、前金を振り込んだにもかかわらず、“AI記者”は納品されず、上杉さんとも連絡が取れなくなってしまったのです」
そう語るのは、有限会社にいがた経済新聞社の代表取締役・今井一志氏である。
元新潟県議の石塚健氏が2016年に立ち上げた同社は、2年ほど前からネット媒体に軸足を移し、地元向けのニュースサイト「にいがた経済新聞(にいけい)」を運営している。石塚氏も鳩山邦夫元代議士の秘書を務めた経歴があり、かねてより上杉氏と親交があったという。
上杉氏は同社の“編集主幹”に就任した際、自身のメルマガに記事を寄せている(『上杉隆の「ニッポンの問題点」』/2022年6月14日付)。
そこには、〈何を隠そう、新聞社の編集主幹への就任は、若き日の夢のひとつだった。組織ジャーナリズムの頂点、とりわけ新聞の編集トップは、自由な言論を守る砦の役割を果たす重責だと考えていた〉といった言葉が並んでいた。
では、なぜ両者の関係は裁判沙汰に至るまでこじれてしまったのか。先の今井氏はこう続ける。
「2021年8月にNOBORDER社と業務提携して以降、私たちは同社が運営する『ニューズ・オプエド』にコンテンツを提供し、一方で、上杉さんの記事を『にいけい』に掲載してきました。そうしたなかで、上杉さんから“AI記者”についての提案を受けたのです。“AI記者”は上杉さんが代表を務める『株式会社メディアカウンター』が開発しているシステムで、これを導入すれば『にいけい』の業務効率化が図れるということでした。たしかに、記事を自動で作成できるシステムは人的負担の軽減に繋がるため、社員数の少ない弊社にとってメリットは大きい。総事業費は前金として500万円、納品後に1000万円の計1500万円と提示されました。ただし、経産省の“ものづくり補助金”制度を利用することで、納品後に1000万円の補助金を得ることができる、と。つまり、弊社側の負担は実質500万円で済むというので、昨年4月に、上杉さんが代表を務めるメディアカウンター社と契約を結ぶことになりました」
その当時、にいがた経済新聞社の代表は上杉氏と親しい石塚氏だったという。
「その頃は、創業者の石塚が編集面のトップ、私が経営面のトップを担っていたので、メディアカウンター社との契約も私が担当しました。契約段階での前金は約500万円でしたが、石塚が上杉さんから頼まれ、契約書に記載された金額のおよそ2倍に当たる1200万円を振り込んだのです」(今井氏)
もちろん、実際に“AI記者”が納品され、補助金を手にすることができていれば大きな問題にはならなかっただろう。ところが――、
「当初のスケジュールでは昨年9月30日までに完全納品され、10月には検証結果のレポートを経産省に提出し、補助金が支払われるはずでした。しかし、8月に上杉さんと打ち合わせをした際に“開発の進捗状況はいかがですか”と尋ねると、“『にいけい』からの支払いが遅いから”と誤魔化されました。たしかに融資を得るのに時間を要しましたが、期日が迫っても一向に納品される気配がなく、まもなく上杉さんからの連絡が途絶えてしまった。何度、上杉さんに問い合わせても返事が来なくなったのです」(今井氏)
今井氏はメディアカウンター社がシステムの開発を外注した会社の社長にも確認したそうだが、
「“開発は進めているが、上杉さんから代金が支払われないので納品はできない”と言われてしまった。そこで10月3日、弁護士を通じて“AI記者”の提供を求める催告書をメディアカウンター社に送りました。しかし、期限が過ぎても返答がないどころか、NOBORDER社など上杉さんが関係する数社から“ホームページ広告の掲載費用”“オプエド動画CM費”“プログラム番組買取広告費”といった名目で、合計1億円を超える請求書が送られてきたのです。弊社とNOBORDER社との間では、互いのメディアにコンテンツを提供し合う契約を交わしていますが、広告費用やコンテンツ制作費用を請求するような関係性ではありません。こうした請求は寝耳に水で、事実無根としか言いようのないものでした」(今井氏)
上杉氏との窓口になっていた石塚氏にも話を聞いた。
「上杉さんにも色々と事情があったのだとは思いますが、“AI記者”に関しては、多額の前金を支払ったものの話が全く進んでいないのは事実です。こんな結末は予想していませんでしたし、正直、“残念”と言うほかありません。なお前金は、契約書上は500万円となっていたところ、上杉さんから1000万円にするよう頼まれました。そこに、こちらの融資の関係で200万円を加えた合計1200万円を支払い、200万円はすぐに返してもらう形をとりました。また、この件で『にいけい』が催告書を送った際に、大量の請求書が届いた話は今井から聞いています。『にいけい』とNOBORDER社の業務提携は、広告費用を請求されるような内容ではありません。そもそも、『にいけい』は定期的に『ニューズ・オプエド』の番組コンテンツの制作を担当しており、他にも頻繁にニュースを提供していた。その代わり上杉さんには『にいけい』でコラムなどを書いてもらっていました。我々としてはコンテンツを提供し合っていたという認識ですが、上杉さん側は“番組の枠を広告として『にいけい』に提供していた”と曲解しているのではないでしょうか。『ニューズ・オプエド』の番組では『にいけい』のCMも流してもらっていましたが、こちらのサイトでも『ニューズ・オプエド』のバナー広告を貼っていました。私と上杉さんの間で何らかの内諾があったということもありません。コンテンツ制作の負担は『にいけい』側の方が重かったと思うので、上杉さん側の請求が通るなら、むしろこちらが請求したいくらいですよ」
石塚氏はすでに代表を退任し、今井氏が新代表に就任。そして、昨年11月14日、にいがた経済新聞社は、メディアカウンター社と上杉氏を相手取り、訴訟を起こしたのである。
「当初の訴状ではシステムの納品も請求項目に入れていましたが、“AI記者”に対する信頼が揺らぎ、経産省の補助金にも期限があるため、12月2日に請求内容を変更し、損害賠償を求めています。また、今後は刑事告訴も検討しているところです」(今井氏)
こうした指摘に上杉氏はどう答えるのか。上杉氏が代表を務めるNOBORDER社と、上杉氏の弁護士の事務所に取材を申し込むと、以下の回答書が寄せられた。 まず、にいがた経済新聞社とメディアカウンター社が、“AI記者”の開発に関する契約を結んだ経緯については、次のように説明する(以下、表記は回答書のまま)。
〈2021年10月にソフトウェア開発を(有)にいがた経済新聞(以下「にいけい」)から依頼され、契約を締結することとなったが、にいけいの一方的な事情により、半年間、契約が締結されなかった。しかし、その間にも開発を急ぎたいにいけいから強い要望があり、NDA(編集部註:秘密保持契約)しか結ばないまま口頭での依頼で作業を開始した(第一フェーズ実装済)。2022年2月、一方的に契約締結を遅れさせているにいけいに対して、メディアカウンター社(以下「M社」)から受注辞退を申し入れたところ、4月になって、にいけいから一方的に契約書が送り付けてきた〉
にいがた経済新聞社が振り込んだという1200万円については、
〈2022年5月より遅れぎみの他の作業AI開発チームらによって最終算出し、これまでの作業人、初期構築費として3分の2の1000万円をにいけいに請求し、一方、下請け各社には、M社の親会社のNoborder社が立て替えで支払いを行った。請求書および口座振り込み歴あり。なお、にいけいからM社への振り込みは、上記について了解したうえで、にいがた経済新聞の石塚社長から1200万円が振り込まれた(記録あり)。同日、「振込金額を間違えた」と石塚氏から連絡があり、200万円の返金を求められ、同時刻、にいけいの口座に返金した。全体の請求金額は1500万円で、残り500万円は納品後に支払うとなっており、開発作業の詳細を定期的に打ち合わせ中に、なんの前触れもなく一方的ににいけいが訴訟してきたために、作業を中断している〉
加えて、NOBORDER社が立て替えたという下請け業者との金銭的なやり取りに関しては、こう綴られている。
〈事前作業分を行った下請け各社に対してはNoborder社が立て替え支払い済です。なお、立て替え払いをしていたNoborder社には、6月27日にM社から500万円払われております。記録あり。また8月24日に事務代行費などの手数料の200万円をN社(P社やI社などのエンジニアに)、さらに追加作業分として10月2日にS社(編集部註:回答書では企業名)に200万円支払い。10月の時点で、合計900万円を作業している会社に支払っています。残りの100万円はメディアカウンターの契約通り10%の手数料です〉
一方、にいがた経済新聞社側は500万円とされた前金が、上杉氏の依頼で増額されたと主張する。その点については、〈ありません。上記の通り、すでに行われた作業費を含め当初から1500万円の請求です(そのうちの1000万円が振り込まれた)〉と説明。にいがた経済新聞社側は刑事告訴も辞さない構えだが、〈どうぞ。訴権の乱用どころか、虚偽告訴罪に該当すると考えています〉。
また、にいがた経済新聞社側は“AI記者”の引き渡しを求めて催告書を送ったというが、それに対しては、〈代理人(編集部註:回答書では弁護士の実名)が即日委任、対応しております〉。
さらに、にいがた経済新聞社側は催告書への返答がないまま、事実無根の巨額の請求書が届いたと主張しているが、上杉氏側は次のように述べている。
〈一方的に訴訟をしてきた相手に連絡も何もない。そもそも9月、一方的に連絡を断ったのはにいけいである〉、〈請求書、支払調書、受領書、契約書、すべてあります〉
前出の今井氏はこう語る。
「AIシステム開発に関する契約締結までに時間を要したのは、“ものづくり補助金”に採択されたら契約を結ぶという約束だったからです。融資に時間がかかったのは事実ですが、昨年4月18日に正式に契約を結び、その契約書には上杉さんの名前と共に、メディアカウンター社の社判も押されています。メディアカウンター社から“受注辞退”の申し入れがあったことは承知していません。前金のやり取りに関しては、石塚から、“融資の都合で200万円をプラスして払い、この分はすぐに戻してもらった”と聞いています」
また、今井氏が所持する〈ソフトウェア開発に関する契約書〉には、〈対価〉について次のように記されているという。
「〈対価〉については、〈本件契約書提携時〉に税込みで〈金5,500,000円〉、〈ユーザ〉のにいがた経済新聞社が、〈ベンダ〉のメディアカウンター社から〈本件成果物の提供を受けたことを確認し〉、〈ユーザが確認書を交付した時〉に同じく税込みで〈金 11,000,000円〉を支払うと記されています。そして、契約書では〈2022年9月30日までに、ユーザに本件成果物を提供する〉と納品期限も設定しています。しかし、契約書にある金額の倍近い“前金”を支払ったのに、期限内に納品されることはなかった。私たちが送った催告書に対する反応も巨額の“請求書”のみで、他には何もありません」(今井氏)
食い違う双方の主張――。裁判はどんな結末を迎えるのか。
デイリー新潮編集部

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。