毒!毒!!毒!!! 毒が主役の展覧会「毒展」の魅力を総合監修の博士に聞いた

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動物も植物も鉱物も、約250点の展示物はすべて毒。今、国立科学博物館で開催中の特別展「毒」は毒だらけの展覧会だ。
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【写真を見る】保険金殺人事件で有名になったトリカブト 数ミリグラムの摂取で絶命「私にとって毒とは、永遠に続く議論の種です」 特別展「毒」の総合監修を務める、国立科学博物館の細矢剛博士はそう語る。「毒にも薬にもならない」という表現があるように、使いようによって、同じ物質が毒にもなるし、薬にもなる。 それが毒。「益」か「害」かの判断は見方によって、どちらともなる。

人気の「トリカブト」展示 展覧会会場に入った観客はまず、毒をもつ動植物の巨大な模型に圧倒されるだろう。特別展「毒」(公式HPより) 高精細の3Dプリンターで作製されたため、巨大ではあるが細部まで緻密だ。 30倍の大きさで再現された「ハブの牙」も、構造まではっきりと分かって面白い。 ほかに訪れた人の多くが足を止めるのが「トリカブト」だ。 保険金殺人事件で使用されたため有名になった毒草だが、日本に自生する植物の中では特に毒性が強く、古くから狩猟用の毒として使われていた歴史がある。 また、高圧蒸気処理で減毒化し、漢方薬として利用することもある。 ちなみに人の場合、主成分であるアコニチンは数ミリグラムの摂取で絶命する。食べると1週間悶絶して死亡 生活に身近なキノコ類も実は怖い。 白くかわいらしい形状から「デス・エンジェル」の異名で呼ばれるのが「ドクツルタケ」。 たんぱく質の合成を阻害する毒をもち、誤って食べた場合、まず肝臓を破壊された後、そのほかの臓器も次々に破壊され、1週間悶絶して死亡するという。 食べても危険だが、触っただけで皮膚に炎症を引き起こす「カエンタケ」も怖いキノコといっていいだろう。 意外なのは「ウナギ」だ。 実は「ニホンウナギ」の血液と粘液には毒性がある。 焼いたり蒸したりする高温調理で無毒化され、かば焼きとして、おいしくいただくことができるのだ。人はなぜ毒に魅せられるのか 細矢博士はこう語る。「今回の特別展は科学博物館の動物学、植物学、地学、人類学、理工学の研究者が、それぞれの視点から毒とは何かに取り組んだ成果です。人はなぜ毒に魅せられるのか、その答えが見つかるかもしれません」 まさに「毒研究」の集大成といえるこの展覧会。 毒の魅力に触れたいと思う方は、オンラインによる日時指定の予約が必要なためご注意を。 国立科学博物館での展示の会期は来年2月19日まで。その後、大阪での巡回も予定されているそうだ。撮影・福田正紀「週刊新潮」2022年12月8日号 掲載
「私にとって毒とは、永遠に続く議論の種です」
特別展「毒」の総合監修を務める、国立科学博物館の細矢剛博士はそう語る。
「毒にも薬にもならない」という表現があるように、使いようによって、同じ物質が毒にもなるし、薬にもなる。
それが毒。
「益」か「害」かの判断は見方によって、どちらともなる。
展覧会会場に入った観客はまず、毒をもつ動植物の巨大な模型に圧倒されるだろう。
高精細の3Dプリンターで作製されたため、巨大ではあるが細部まで緻密だ。
30倍の大きさで再現された「ハブの牙」も、構造まではっきりと分かって面白い。
ほかに訪れた人の多くが足を止めるのが「トリカブト」だ。
保険金殺人事件で使用されたため有名になった毒草だが、日本に自生する植物の中では特に毒性が強く、古くから狩猟用の毒として使われていた歴史がある。
また、高圧蒸気処理で減毒化し、漢方薬として利用することもある。
ちなみに人の場合、主成分であるアコニチンは数ミリグラムの摂取で絶命する。
生活に身近なキノコ類も実は怖い。
白くかわいらしい形状から「デス・エンジェル」の異名で呼ばれるのが「ドクツルタケ」。
たんぱく質の合成を阻害する毒をもち、誤って食べた場合、まず肝臓を破壊された後、そのほかの臓器も次々に破壊され、1週間悶絶して死亡するという。
食べても危険だが、触っただけで皮膚に炎症を引き起こす「カエンタケ」も怖いキノコといっていいだろう。
意外なのは「ウナギ」だ。
実は「ニホンウナギ」の血液と粘液には毒性がある。
焼いたり蒸したりする高温調理で無毒化され、かば焼きとして、おいしくいただくことができるのだ。
細矢博士はこう語る。
「今回の特別展は科学博物館の動物学、植物学、地学、人類学、理工学の研究者が、それぞれの視点から毒とは何かに取り組んだ成果です。人はなぜ毒に魅せられるのか、その答えが見つかるかもしれません」
まさに「毒研究」の集大成といえるこの展覧会。
毒の魅力に触れたいと思う方は、オンラインによる日時指定の予約が必要なためご注意を。
国立科学博物館での展示の会期は来年2月19日まで。その後、大阪での巡回も予定されているそうだ。
撮影・福田正紀
「週刊新潮」2022年12月8日号 掲載

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