福祉関係の仕事に就く美紀さん(仮名・42歳)は、約10年交際するパートナーがいる一方で、男女の関係については長年複雑な思いを抱えていた。そんな彼女が選んだのが女性用風俗「女風」だったのだが、その選択の背景には一体何があったのか。
【画像】42歳女性が語る女風利用のリアルがわかる
大泉りかの新刊『女風に行ったら人生変わった』(鉄人社)から一部を抜粋・再構成してお届けする。
女風のユーザーを取材する度に思うのは、皆どこか艶やかというか、湿りけのある色気があるというか、あまりこういう言葉遣いはよくないかもしれないが「メスみ」があるということだ。
女風ユーザーであるということはイコール現役で色事を楽しんでいるということだから当然といえば当然でもあるが、待ち合わせの場所に現れた美紀(仮名、42歳、福祉系)を見た瞬間にも、やはり同じ感想を抱いた。
ふんわりとしたワンピースに、すっきりとひとつにまとめた髪の毛。声が澄んでいて喋り方が愛らしい。全体の印象から30代半ばくらいかと思ったが、年齢を尋ねたら40歳を越えているという。
そんな美紀がまず語り始めたのは、自らの性嫌悪についてだ。
「わたし、セックスに対して嫌悪感があるんです。被害者意識の塊なんですよ。セックスの最中は蹂躙されているっていうか、なにかを奪われている感覚があって、すごく悔しくなっちゃう。
本意じゃないのに男に好きに体をまさぐられて、犯されてるっていう気持ちがどうしても拭えない。いつも性奴隷ってこんな感じなのかな、とすら思ってる。
そんなわたしがよく女風に踏み切ったなって、自分でも驚きです」
そこまで性に対してネガティブな感情を持っているというのに、なぜ女風を利用するに至ったのか。性への嫌悪感を打ち破り、美紀を女風へと突き動かしたのは、時折、爆発的に生じる〈性欲〉だった。
「不思議なもので、セックスは嫌いなのに、性欲がわく時ってあるんですよ。だいたいオナニーで済んじゃうんですが、どれだけオナニーをしても、どうしてもムラムラして収まりがつかない時もある。
一応、10年くらい付き合ってるパートナーはいるんだけど、でも、その人とはしたくないんです。満足できないってわかっちゃってるから。その人、前戯をあんまりしないで即挿入してくるんですよ。だから性交痛が酷いんです。
それに誘い方だっておざなりで、『入れたい』とか『出したい』とか、いくらなんでも直接的すぎますよね。文句をいったこともあるんですけど、まったく改善してくれない」
体の相性が合わない上に、自分勝手なセックスしかしないパートナーとはしたくはない。かといってセフレを作ったり、マッチングアプリで相手を見繕うのも面倒くさかった。
「わたし、もともと恋愛したいって感覚がないんですよね。実際に付き合った経験もふたりしかないし、初体験も20代の後半。性欲だけ解消したらもういいっていうか。
パートナーにも一応は情があるから、付き合いを解消する気はない。二番目の相手を作るっていうのもちょっと違うっていうか。
それに、どうせセックスが上手な男なんていないじゃないですか。だいたいの男って、こっちが盛り上がっていないのに、いきなり局部を触ってきたりする。
わたし、以前、経済的な事情で風俗で働いていたことがあるので、タダで普通の男とヤルのが許せないって気持ちもあるし、ついつい仕事モードにもなっちゃう。
だったら、プロにお金を払ってお願いして満足させてもらったほうがいいなって思ったんです。中イキとかってしたことがなくって、興味があったこともあったし」
あくまでも傾向のひとつだが、風俗やキャバクラといったナイトワークで働く女性は、女風やホストクラブなどに踏み出すハードルが昼職の女性よりも低い。
自らもそうであるため、性的サービスもしくは色恋のような感情労働と、金銭とをトレードすることに対しての抵抗感がないことが多いからだ。
とにもかくにも、一般の男性とのセックスに絶望している美紀が選択したのは女風で満たしてもらうことだった。
「早速、女風のHPで見繕うことにしたんですけど、所属しているセラピストのプロフィールを見ても正直、よくわからないんですよね。みんな同じに見えちゃって選びようがない。
けど、わたしの場合は、嫌だなってタイプは把握できていて、毛深い人とか男くさい人が苦手。だから『毛深くなくって中性的で子犬っぽい、ワンコ系の男の子でお願いします』ってお店にリクエストしたんです。そうしたら20代半ばくらいの若い男の子で普通にイケメンが来ました」
確かに女風のウェブサイトのプロフィールだけで、好みのタイプの男性を引き当てるのはなかなかに難しいとわたし自身、サイトを覗くたびに思う。
顔全体や口元がぼかしで隠されていることも多いし、加工もされている。あれやこれやと比較して選ぶことが好きで、喜びを感じるタイプの女性であれば、写メ日記などの本人発信のコンテンツや、ウェブサイトから個人で発信しているSNSを辿ったりして、誰を指名しようかと考える時間自体が楽しいのだろうけども、それが面倒な作業だとしか思えないタイプにとっては億劫でしかない。
どこまで理想に近いセラピストを求めるかの兼ね合いになってくるが、美紀の場合は、嫌でなければいいとあっさりと割り切った。
「わたしが予約したのは120分かそこらのコースだったんですが、一応はパートナーに対しても多少は気持ちがあるから、キスはNGにしてマッサージの後に性感してもらいました。
こんな気持ちいいことあっただろうかってほど良かったですね。外イキもできたし、中イキまでできちゃったし、潮まで吹けちゃった。自分では吹いたって意識はなかったけど、『潮、吹いてたね』っていわれて確かにシーツを確かめたらビショビショで」
パートナーとのセックスに対して抱いていたような嫌悪感がなかったどころか、これまでの人生で、一度も感じたことのない強烈な快感を得ることまでできた。
しかしかといって美紀は、そのセラピにハマったわけではなかった。
「上手いは上手かったけど、別にリピートしたいって気持ちにはならなくって。満足して性欲が収まっちゃったっていうか、もともとセックスしたいっていう欲が薄いし、気持ちよかったとはいっても、やっぱり嫌悪感のほうが強い。
それにそのセラピスト、施術の最中はずっとパンツ履いててくれたんだけど、最後の最後に『本番どうします?』って尋ねてきて。もちろん『いや、大丈夫です』って断って、パンツの上から相手の性器を触るくらいで済ませましたけど」
セラピストのテクニックに満足はしたものの、以降、女風を利用することはなかった。
「でもいまだに、彼以上のテクニックを持っているセラピには会ったことがないですね。どこのお店だったかも覚えてないし、名前も忘れちゃったけど、今になって『あれだけ上手だったんだから、もう一回くらい会っておけばよかったな』ってちょっとだけ後悔もあります」
文/大泉りか
大泉りか
2026/4/30
1,760円(税込)
256ページ
ISBN: 978-4865373226
――あの夜、彼女たちは勇気をもって一歩を踏み出した。トラウマ、孤独、絶望。誰にも言えなかった痛みを抱えた11人の女性たち。・「男みたいだ」と言われ続け、自分を否定してきた研究職の女性・うつに追い詰められ、このまま消えてしまおうとしていたOL・ときめきを忘れ、ただ日々をこなすだけになっていた60代の看護師――彼女たちはなぜ、“男を買う”という選択をしたのか。そして、そのたった一度の経験は、人生をどう変えたのか。本書は、女性用風俗――通称「女風」をきっかけに、心と体を解き放っていった女性たちの、性の変革と再生のルポルタージュである。