「安く、早く」というのもわかるけど…子どもの散髪、1000円カットで済ませると失敗する理由

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今回は、お子様カットにまつわるお話。
【写真】この記事の写真を見る(2枚)「できるだけ安く、早く済ませたい」という考えから、お子様のカットに1000円カットを選ぶ方は多いのではないでしょうか。 ですが美容師としては、その選択はあまりオススメできません。なぜなら美容師にとって、子供のカットは簡単ではないからです。 では何がそんなに難しいのか? 解説します。iStock.com子供のヘアスタイルは「洗いっぱなし」にしたい 美容師は大人のカットをする場合、カットの提案だけでなく、具体的なスタイリングの仕方もアドバイスをすることが多いです。

ちょっとしたポイントをお客様に実践してもらうことで、ヘアスタイルの持ちを良くすることができ、かつヘアスタイルの完成度も上がるので、カットの評価自体も高くなります。 ですが、子供のヘアカットの場合、基本的にざっと乾かしただけの「洗いっぱなし」で完結するヘアスタイルを求められます。「洗いっぱなし」だと髪の毛の生えグセが反映されやすく、スタイリングなどの方法でカバーができないため、修正もしにくい。 そんな「何もしなくてもカッコいい、可愛い」スタイルは、美容師の技術力が反映されやすいのです。大人の髪の毛と、子供の髪の毛 そもそも子供の髪の毛は、大人と少し違います。二次性徴で大人の髪の毛に変わるまで、多くの子供の毛が細く、柔らかく、毛量が少ないです。また東洋人の子供の場合、ウェーブが弱めな子が多く、全体的にストンと落ちる感じになりやすい。「毛量が少なく、ウェーブが弱い」髪を切ると、ハサミで切った線がそのまま残りやすくなります。ぱっつん前髪のようにピシッと切った線を出す目的があるなどの例外的なケースを除き、線がそのまま残ってしまうと不自然に見えてしまいます。それは美容師としては避けたいことです。 またロングヘアの子どもは、後頭部の辺りの髪が絡まっていることが多く、毛を解くことに時間がかかったりと、なにかとカットに不都合が起きやすいです。落ち着きがない子を切るのは大変 子供は頭が小さいので、カットの手数が減る側面もありますが、「子供を切ること」に慣れているかどうかにおいても、技術的な差が出やすいです。 特に小学1~2年生ぐらいまでのお子さんを切る時には、予想しない動きに注意する必要があります。 興味が散漫で、あっちこっちと向いてしまうことは当たり前。振り上げた腕で美容師さんの手元を邪魔してしまったり、ジャンプするように座り直したり。くすぐったくて動いてしまったり、切った毛が首について、「かゆいかゆい!」となってしまうことも多いです。 美容師のハサミの切れ味はとてもよく、手元が狂うと自分の手を深く切ってしまうこともあります。そんなハサミが誤って子供に触れてしまったら、大惨事です。 また幼稚園ぐらいまでのお子さんだと、「髪を切るのは痛い」と怖がってしまう子も多いです。さらに、2~3歳の子たちは、慣れない場所に来た緊張も重なって、ご機嫌ななめになってしまうこともあります。飽きてしまって“帰りたいモード”になったり、逆に寝てしまって、頭がグラングランすることも。 そのためお子様カットはあまり時間をかけず、ササッと終わらせてあげるのが鉄則です。対する美容師は、時間に追われている 美容師は予約時間に合わせた時間割や、立ち寄ったお客様の順番待ちの中で仕事をしています。よほど暇でなければ、一人一人にかけられる時間は決まっているのです。1000円カットの場合は、10分で仕上げることが前提のビジネスモデルです。圧倒的な安さは、数をこなすことでカバーされています。 そのため、子供がぐずってしまったから時間を延長、とはいきません。1000円カットのように時間を十分に確保できない営業スタイルの美容室や床屋さんでは、ルーティンワークになりがちで、細部に目を配れないカットになってしまいます。子供にだって「こうしたい」「これはイヤ」がある 美容師として子供に接していると、子供の「なりたいヘアスタイル」が親御さんの意向と食い違う場面に立ち会うことがままあります。カットの頻度を減らそうと必要以上に短めを推す親御さんに対して、切り過ぎるのを明らかにイヤそうにしているお子さん。 美容師としては自分が手を下すことになるので、ふてくされたり、泣きっ面になっているお子さんを見るのは、正直心苦しいです。 そして、子供の「なりたいヘアスタイル」を理解するのは難しいです。言葉が拙いのは仕方がないことですが、ニュアンスを掴むのに時間がかかることもあります。ですがちゃんと聞いてあげると、その子の「こうしたい」「これはイヤ」はちゃんと伝わります。 また、女の子はどの世代でも「お洒落になる」「可愛くなる」ことに素直に反応しますが、ある時期から男の子には「カッコつけるのは、カッコ悪い」といったムードが生まれるように思います。 カッコよくなって嬉しいことに素直になれないムードは、だいたい小3ぐらいから、中学卒業まで引きずります。やり過ぎると学校で“ナルシスト”の烙印を押されてしまう。世代が変わっても、やはり仲間内のそういった空気感はあるようです。トラウマになる子もいる いつも不本意なヘアスタイルになることから、髪を切ること自体がイヤになってしまう子供たちもいます。 実は、僕もそうでした。「伸びたから切ってきなさい」と母親に言われる小学生の僕は、近所の床屋さんで切ってもらっても思い通りにならないヘアスタイルがイヤでした。 既に一人で床屋に行くようになっていた小5の僕は、一度、「こうしたい」と母親には伝えず、床屋のおばちゃんに自分の口から細かくオーダーしたことがあります。するとおばちゃんは、母の確認を取るために自宅にTEL…。お年頃で恥ずかしい想いをしたことを、今でも覚えています。 また別の1000円カットの床屋さんに行ったときは、雑すぎて、毎回耳を軽く切られる恐怖を味わっていたし(僕だけでなく兄弟もみんな耳を切られていた)、短すぎるカットは「今の伸びた髪の方がカッコいいのに」と、既に美意識の芽生えていた僕にはある種トラウマのようになっていました。そんなこともあって、中学生になってからは自分で切っていました。 美容室でカッコよく、可愛くしてもらえる今の子供たちは、本当にうらやましいと思います。美容室や床屋が嫌いになってしまうのは可哀想。なので、僕は、なるべく親御さんよりお子さんの意見を尊重しています。お手頃に済ませたい親御さんの気持ちもわかりますが、子供のカットに時間をかけてくれ、子供の要望を丁寧にすくってくれる美容院を選んでみませんか? お子さんをカットすることはなにより微笑ましく、癒されることです。美容師としては、笑顔で帰ってもらえれば本望です。(操作イトウ)
「できるだけ安く、早く済ませたい」という考えから、お子様のカットに1000円カットを選ぶ方は多いのではないでしょうか。
ですが美容師としては、その選択はあまりオススメできません。なぜなら美容師にとって、子供のカットは簡単ではないからです。
では何がそんなに難しいのか? 解説します。
iStock.com
美容師は大人のカットをする場合、カットの提案だけでなく、具体的なスタイリングの仕方もアドバイスをすることが多いです。
ちょっとしたポイントをお客様に実践してもらうことで、ヘアスタイルの持ちを良くすることができ、かつヘアスタイルの完成度も上がるので、カットの評価自体も高くなります。
ですが、子供のヘアカットの場合、基本的にざっと乾かしただけの「洗いっぱなし」で完結するヘアスタイルを求められます。「洗いっぱなし」だと髪の毛の生えグセが反映されやすく、スタイリングなどの方法でカバーができないため、修正もしにくい。
そんな「何もしなくてもカッコいい、可愛い」スタイルは、美容師の技術力が反映されやすいのです。
そもそも子供の髪の毛は、大人と少し違います。二次性徴で大人の髪の毛に変わるまで、多くの子供の毛が細く、柔らかく、毛量が少ないです。また東洋人の子供の場合、ウェーブが弱めな子が多く、全体的にストンと落ちる感じになりやすい。
「毛量が少なく、ウェーブが弱い」髪を切ると、ハサミで切った線がそのまま残りやすくなります。ぱっつん前髪のようにピシッと切った線を出す目的があるなどの例外的なケースを除き、線がそのまま残ってしまうと不自然に見えてしまいます。それは美容師としては避けたいことです。
またロングヘアの子どもは、後頭部の辺りの髪が絡まっていることが多く、毛を解くことに時間がかかったりと、なにかとカットに不都合が起きやすいです。
子供は頭が小さいので、カットの手数が減る側面もありますが、「子供を切ること」に慣れているかどうかにおいても、技術的な差が出やすいです。
特に小学1~2年生ぐらいまでのお子さんを切る時には、予想しない動きに注意する必要があります。
興味が散漫で、あっちこっちと向いてしまうことは当たり前。振り上げた腕で美容師さんの手元を邪魔してしまったり、ジャンプするように座り直したり。くすぐったくて動いてしまったり、切った毛が首について、「かゆいかゆい!」となってしまうことも多いです。
美容師のハサミの切れ味はとてもよく、手元が狂うと自分の手を深く切ってしまうこともあります。そんなハサミが誤って子供に触れてしまったら、大惨事です。
また幼稚園ぐらいまでのお子さんだと、「髪を切るのは痛い」と怖がってしまう子も多いです。さらに、2~3歳の子たちは、慣れない場所に来た緊張も重なって、ご機嫌ななめになってしまうこともあります。飽きてしまって“帰りたいモード”になったり、逆に寝てしまって、頭がグラングランすることも。
そのためお子様カットはあまり時間をかけず、ササッと終わらせてあげるのが鉄則です。
美容師は予約時間に合わせた時間割や、立ち寄ったお客様の順番待ちの中で仕事をしています。よほど暇でなければ、一人一人にかけられる時間は決まっているのです。1000円カットの場合は、10分で仕上げることが前提のビジネスモデルです。圧倒的な安さは、数をこなすことでカバーされています。
そのため、子供がぐずってしまったから時間を延長、とはいきません。1000円カットのように時間を十分に確保できない営業スタイルの美容室や床屋さんでは、ルーティンワークになりがちで、細部に目を配れないカットになってしまいます。
美容師として子供に接していると、子供の「なりたいヘアスタイル」が親御さんの意向と食い違う場面に立ち会うことがままあります。カットの頻度を減らそうと必要以上に短めを推す親御さんに対して、切り過ぎるのを明らかにイヤそうにしているお子さん。
美容師としては自分が手を下すことになるので、ふてくされたり、泣きっ面になっているお子さんを見るのは、正直心苦しいです。
そして、子供の「なりたいヘアスタイル」を理解するのは難しいです。言葉が拙いのは仕方がないことですが、ニュアンスを掴むのに時間がかかることもあります。ですがちゃんと聞いてあげると、その子の「こうしたい」「これはイヤ」はちゃんと伝わります。
また、女の子はどの世代でも「お洒落になる」「可愛くなる」ことに素直に反応しますが、ある時期から男の子には「カッコつけるのは、カッコ悪い」といったムードが生まれるように思います。
カッコよくなって嬉しいことに素直になれないムードは、だいたい小3ぐらいから、中学卒業まで引きずります。やり過ぎると学校で“ナルシスト”の烙印を押されてしまう。世代が変わっても、やはり仲間内のそういった空気感はあるようです。
いつも不本意なヘアスタイルになることから、髪を切ること自体がイヤになってしまう子供たちもいます。
実は、僕もそうでした。「伸びたから切ってきなさい」と母親に言われる小学生の僕は、近所の床屋さんで切ってもらっても思い通りにならないヘアスタイルがイヤでした。
既に一人で床屋に行くようになっていた小5の僕は、一度、「こうしたい」と母親には伝えず、床屋のおばちゃんに自分の口から細かくオーダーしたことがあります。するとおばちゃんは、母の確認を取るために自宅にTEL…。お年頃で恥ずかしい想いをしたことを、今でも覚えています。 また別の1000円カットの床屋さんに行ったときは、雑すぎて、毎回耳を軽く切られる恐怖を味わっていたし(僕だけでなく兄弟もみんな耳を切られていた)、短すぎるカットは「今の伸びた髪の方がカッコいいのに」と、既に美意識の芽生えていた僕にはある種トラウマのようになっていました。そんなこともあって、中学生になってからは自分で切っていました。 美容室でカッコよく、可愛くしてもらえる今の子供たちは、本当にうらやましいと思います。美容室や床屋が嫌いになってしまうのは可哀想。なので、僕は、なるべく親御さんよりお子さんの意見を尊重しています。お手頃に済ませたい親御さんの気持ちもわかりますが、子供のカットに時間をかけてくれ、子供の要望を丁寧にすくってくれる美容院を選んでみませんか? お子さんをカットすることはなにより微笑ましく、癒されることです。美容師としては、笑顔で帰ってもらえれば本望です。(操作イトウ)
既に一人で床屋に行くようになっていた小5の僕は、一度、「こうしたい」と母親には伝えず、床屋のおばちゃんに自分の口から細かくオーダーしたことがあります。するとおばちゃんは、母の確認を取るために自宅にTEL…。お年頃で恥ずかしい想いをしたことを、今でも覚えています。
また別の1000円カットの床屋さんに行ったときは、雑すぎて、毎回耳を軽く切られる恐怖を味わっていたし(僕だけでなく兄弟もみんな耳を切られていた)、短すぎるカットは「今の伸びた髪の方がカッコいいのに」と、既に美意識の芽生えていた僕にはある種トラウマのようになっていました。そんなこともあって、中学生になってからは自分で切っていました。
美容室でカッコよく、可愛くしてもらえる今の子供たちは、本当にうらやましいと思います。美容室や床屋が嫌いになってしまうのは可哀想。なので、僕は、なるべく親御さんよりお子さんの意見を尊重しています。お手頃に済ませたい親御さんの気持ちもわかりますが、子供のカットに時間をかけてくれ、子供の要望を丁寧にすくってくれる美容院を選んでみませんか?
お子さんをカットすることはなにより微笑ましく、癒されることです。美容師としては、笑顔で帰ってもらえれば本望です。
(操作イトウ)

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