“午前0時待ち”高速道路にトラック大渋滞…“深夜割引”求め 背景に“燃料費高騰”

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“午前0時待ち”という言葉を知っていますか?深夜の高速道路にできるトラックの渋滞のことですが、取材を進めると、運送業界の切実な事情があることが分かりました。
■高速2車線にトラック行列“大渋滞”
午後11時40分、東名高速道路の東京料金所付近。高速の出口直前にもかかわらず、1台のトラックがハザードランプをつけて、路肩に止まります。
さらに、午後11時51分、もう1台が路肩に止まります。1分後、もう1台止まり、列が4台になりました。
高速道路で車を止めるのは、事故などのやむを得ない場合を除き、原則禁止されています。
しかし、ついには走行車線に停止するトラックまで現れ、2車線が完全に埋め尽くされました。
ノロノロと料金所の方に向かってはいますが、なかなか料金所を通過せずに、渋滞ができてしまっています。すべての車線がトラックで埋め尽くされています。
トラックが押し寄せていたのは料金所だけではなく、パーキングエリアの外まで延びるトラックの列。中に入ってみると、小型車用の駐車スペースを何台分も使って、駐車するトラックもありました。
出口付近では、パーキングエリアから長く続く路肩駐車の列は、本線との合流地点まで延びていました。
日付が変わると、料金所の手前にいたトラックの車列に動きがありました。
せきを切ったように、次々とトラックが料金所を通過。そして、午前0時5分ごろには、先ほどまで道路を埋め尽くしていたトラックがほぼいなくなりました。
■待機理由は“深夜割引”…会社指示も
東名高速道路で毎晩、日付が変わる直前に発生するトラックの大渋滞。一体なぜ、こんなことが起きているのでしょうか?
実際に並んだことがあるというトラックの運転手は、次のように話します。
0時待ちをしたことがあるトラック運転手:「たまに(会社から)指示があってやったりします。1万円とかも安くなる場合もあります」
トラックが集結している理由は、高速道路の“深夜割引”です。深夜0時から午前4時の間に高速道路を利用すると、すべての通行料が3割引きになります。
例えば、大阪-東京間をトラックで走行した場合、深夜割引を利用すると、5000円以上安くなります。
そのため、午前0時になるまで、料金所の入り口付近で多くのトラックが待機しているのです。
■“燃料費高騰”で…「運輸業」倒産最多
少しでも安い通行料を求める背景には、物流業界を直撃する深刻な“燃料費の高騰”があります。
0時待ちをしたことがあるトラック運転手:「ずっと燃料高いままだし、物価が上がっても運賃が上がらない」「どこも(経営が)厳しいのかなと思って。だからその分、そういうの(深夜割引)で会社に貢献できるのだったら」
帝国データバンクによると、燃料費や原材料の高騰が原因で倒産した企業を業種別で見ると、「運輸業」が最多となっています。
■運送費値上げできず「仕事失う恐怖」
40台のトラックを所有し、主に工場製品を日本全国に輸送する栃木県の運送会社を取材しました。
サンコー・阿部光記社長:「大型車と言って、最大積載重量が13トン900キロ。(燃料は)満タン入れて、九州まで行って、ギリギリ帰って来られるくらい。(給油すると)1万円から1万5000円ぐらい。今年のほうが高いのが現状」
トラックの燃料に使われる軽油は、去年の同じ時期よりも1リットルあたり10円近く値上がりしています。
この会社では、毎月の燃料費は、去年よりおよそ80万円も増加しています。しかし、運送費への転嫁はなかなか進んでいないといいます。
阿部社長:「『(大変なのは)おたくだけじゃないよ』という部分を真っ先に言われてしまったり。うちだけが値上げをした際に、他の運送会社と比較をされて、そこで仕事を失っていく恐怖というのは、間違いなくあります」
この状況が続けば、事業の在り方を考え直さなければならないといいます。
阿部社長:「長距離というのをやらない。遠くに走っていかない。店頭に物が並ばないということが、これから生まれていってしまうと思う。一時的に軽油税を引き下げるとかいったことを、国のほうでも考えてもらえるとありがたいなと」
運送業界が抱える厳しい現状。改善する手立てはあるのでしょうか。

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