糖尿病は「空腹時血糖値」だけで判断できない。日本人に多い「かくれ糖尿病」を見逃さないための検査とは

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厚生労働省の「患者調査の概況」によると、2023年に糖尿病で治療を受けていた患者総数は552万3,000人だったそうです。日本の深刻な健康課題である糖尿病について、国際医療福祉大学医学部教授で糖尿病専門医の坂本昌也先生は「“ちょっと血糖値が高い”という現象は、みなさんが考えているよりリスクが高い」と語ります。そこで今回は、坂本教授の著書『世界中の研究結果を調べてわかった!糖尿病改善の最新ルール』より一部引用、再編集してお届けします。
【図】「75g経口ブドウ糖負荷試験」の流れと、試験後の血糖値
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医療の現場で数値の変動を重視している
健診を受けると、多くの人は「今年の結果がどうだったか」という一点に注目しがちです。数値が基準内なら安心し、少しでも超えると不安になる。しかし本当に注目しなければいけないのは、一度きりの数値ではなく「変動」です。
いまは、その変動をどうとらえるかが医療のトレンドになっています。
体重、ヘモグロビンA1c、血圧、eGFR(腎機能の指標)などは、単に高いか低いかだけではなく、どのように変動しているかを見ることが重要です。なぜなら、変動することにもリスクが隠れているからです。
例えば、体重の変動がもっとも大きかった人は、安定していた人に比べて死亡率が2倍、心筋梗塞や脳卒中のリスクも2倍、さらに糖尿病発症リスクは78%も高まるという報告があります。収縮期血圧(一般には「上の血圧」「最高血圧」といわれる)が不安定な人も死亡リスクが上がり、eGFRの変動が大きい人は腎機能の低下が早いことが我々の研究でもわかっています。
もちろん、基準値を超える数値が悪いのは当然ですが、そこに至るまでの経過を見なければ本当のリスクは判断できません。例えば80点の成績をとった人がいたとして、それが50点、60点、70点と上がってきての80点なのか、それとも100点をとり続けてきた人の80点なのかで、80点のとらえ方が異なってくるからです。
健診の数値に一喜一憂するのではなく、日内変動、日差変動、季節変動、年間変動など、さまざまな時間軸でどう推移しているかを見ることが欠かせません。わたしたちが注視しているところでもあります。
『世界中の研究結果を調べてわかった!糖尿病改善の最新ルール』(著:坂本昌也/あさ出版)
血糖値にしても、ヘモグロビンA1cが基準値内だからといって安心できるわけではなく、食後に大きく上がってその後急激に下がる「血糖値スパイク」が繰り返されていれば、血管へのダメージは進んでいます。
LDLコレステロールには季節変動があり、それが体重と相関していることも報告されています。BMI、血糖値、血圧、コレステロールの長期的な変動は心不全のリスクとも関わることもわかってきています。
基準値に入っているから安心、外れたから不安ではなく、自分の数値がどう推移してきたのかに注目するようにすると、よりリスクを実感できるようになります。
そもそも糖尿病は、瞬間的な血糖の状態を測る「空腹時血糖値」だけで判断できません。空腹時血糖値が基準値内だと安心する人も多いようですが、日本人の場合、それだけでは糖尿病を見逃してしまうことがあります。
日本人は、欧米人に比べてインスリンを分泌する力が弱いため、空腹時は正常でも食後に血糖値が大きく上がる「かくれ糖尿病」が多いからです。
食後の高血糖はやっかいです。というのは、自覚症状がほとんどないため、本人は健康だと思っている人が多いのです。
しかし実際は、毎食後に血糖値が急上昇し、そのたびに血管の内側が傷つき、動脈硬化が進んでいます。心筋梗塞や脳梗塞、腎不全といった合併症リスクが高まるのも、この見えない変動が積み重なるからです。
この食後高血糖は、糖尿病を発症する10年くらい前から始まっているといわれています。
かくれ糖尿病を見逃さないための検査が、「75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)」です。これは空腹時にブドウ糖の入った水を飲み、その後の血糖値を追う検査で、通常は空腹時と2時間後の数値で診断します。
ところが日本人の場合、空腹時と2時間後の数値が正常でも、1時間後の血糖値が高ければすでにリスクがあることがわかってきており、「1時間値」に注目すべきだという議論も進んでいます。
内臓脂肪がたっぷりついている人や高血圧の人は、すでに糖尿病になっている確率が高いです。ところがこれらは本人はもちろん、医師でさえ気づいていないケースが多く、検査をしなければわかりません。そういう人たちが心筋梗塞などで入院したときに75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行うと、約半数が糖尿病と診断されたというデータがあります。また、心疾患で心臓カテーテル治療を受ける患者さんの多くが、検査によって糖尿病または予備軍と診断されるといいます。
かくれ糖尿病のまま、長い間、血管を傷つけてきたということです。逆にいえば、もっと早く糖尿病に気づけていれば、心筋梗塞や狭心症などを発症することはなかったかもしれないということです。
糖尿病は10~15年をかけて進行する病気です。しかも、その間はほとんど自覚症状がありません。もし、境界型から血糖コントロールしていれば、さらに心疾患のリスクを抑えられたはずです。
肥満や高血圧を指摘された人は、空腹時血糖やヘモグロビンA1cの数値だけに安心することなく、持続血糖測定(CGM)やOGTTを受けることを検討してもよいでしょう。
かくれ糖尿病に気づけるかどうかが、その後の心臓や脳の健康を大きく左右します。気づかないまま放置すれば、血管のダメージは進み、ある日突然命に関わる病気として襲いかかってくることもあります。
※本稿は、『世界中の研究結果を調べてわかった!糖尿病改善の最新ルール』(あさ出版)の一部を再編集したものです。

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