巨大施設の″成れの果て″ 廃墟ホテル

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壁が剥(は)げ落ち、ガラスは割れ、館内にまで雑草が生い茂っている–。掲載したのは、全国各地の廃墟ホテルの写真だ。何十年も放置され荒れ放題となった、巨大施設の″成れの果て″である。
「バブル期まで盛んだった団体旅行が減り、経営不振から廃業したホテルの建物が手入れもされない状態で多数残されています。こうした廃墟ホテルは全国に300ヵ所以上あるといわれ、自治体を困らせているんです」(旅行業界関係者)
静岡県下田市は、いくつもの廃墟ホテルに悩まされている自治体だ。無人となり心霊スポットとして知られていた旅館では、3年ほど前に火災が発生。倒壊した瓦礫(がれき)が隣接する民家を直撃するなど深刻な被害が出たため、市は今年8月に行政代執行による解体に踏み切った。さらに、市が買い取った廃墟ホテルもある。’00年頃に閉業した大型施設(上写真)だ。
「景観への悪影響や大地震の際に建物が倒壊する危険性などを考え、約4年前に土地建物を購入しました。今後、更地(さらち)にしたうえで公園を整備する予定です。解体費を含む総事業費は13億~23億円。市の財政のみで賄(まかな)うことは困難なため、国や県の補助金と民間資金の活用を検討しています」(下田市建設課)
有名な鬼怒川温泉があり、″東京の奥座敷″と呼ばれる栃木県日光市も、廃墟ホテルへの対応に困っている自治体だ。年間100万人の宿泊者で賑(にぎ)わう温泉街の中には、忽然(こつぜん)と廃墟ホテルが立ち並ぶ一角がある。いずれも’90~’00年代に廃業したホテル群だ。不法侵入などのトラブル防止のため、市は建物を封鎖している。
「市内にある、経営実態のないホテルは15ヵ所ほどです。連絡のつく所有者には、適切な管理をお願いしていますが対応してもらえない。市民からは温泉街のマイナスイメージを避けるために廃墟となった宿泊施設の解体を望む声が上がっている一方、費用は一棟あたり10億円程度とされ市が対応できる範囲ではありません。国に対応してもらわなければ、打つ手がない状態です」(日光市企画総務部)
観光庁は、’21年度から最大1億円(補助率は解体費の半分まで)の廃屋撤去補助を実施してきた。だが、「解体費の高騰(こうとう)から撤去できないとの声がある」(観光庁観光産業課)ことから、ようやく補助金を引き上げる新たな制度の検討が始まった。廃墟ホテル問題に詳しい、不動産鑑定士の冨田建氏が指摘する。
「地価が低い場所では数億円の解体費用をかけ更地にしても、解体費用に見合う価値が得られない。経営難に陥った所有者が、建物を解体せず廃墟ホテルとして放置している一因です。これ以上廃墟ホテルを増やさないためには、宿泊施設を建てた段階で、事業者から将来の解体費用を少しずつ強制的に徴収して積み立てる制度改正が必要ではないでしょうか」
廃墟ホテルは観光地を廃(すた)れた印象に変えかねない。インバウンド収入が年間約10兆円の日本では、対策が喫緊の課題だ。
『FRIDAY』2025年12月12日号より
取材・文:形山昌由(ジャーナリスト)

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