「私の母も霊感商法にハマって…」安倍晋三元首相殺害事件の初公判、傍聴に訪れた「山上徹也を応援する人」の本音

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2025年10月28日、奈良地裁で山上徹也被告の初公判が行われ、多くの傍聴希望者が集まった。安倍晋三元首相を殺害した被告の母が旧統一教会の信者であったことから、教団の被害者らの姿もあった。東大阪市に住むAさんもその一人だ。
前編記事『「山上ガールズ」や「安倍シンパのおじいさん」が殺到…!山上徹也被告初公判、“倍率22.7倍”傍聴券抽選に集まった人々の「それぞれの理由」』に続き、紹介する。
「私が傍聴できたら、退廷を求められることになっても山上被告に声をかけたいんです。『山上くん、身体に気を付けてください。私の家庭も統一教会に壊されました』って……」
そう話すのは東大阪市に住む55歳の会社員の女性だ。この女性は、安倍晋三元首相を殺害したとして、殺人罪などに問われている山上徹也被告(45歳)の初公判を傍聴するため、奈良地裁へ足を運んだ一人である。
2025年10月28日、奈良地裁で始まった初公判には多くの人が傍聴を希望し、抽選に727人が詰めかけた。
なかには冒頭の東大阪市在住の女性のように、旧統一教会に人生を狂わされた人も訪れていた。以下、この女性をAさんとする。
Aさんの母親は熱心なクリスチャンだった。Aさんと兄は幼いころから母親に連れられて、近所の教会に通い、讃美歌を歌い、聖書を学んだ。異変が起きたのはAさんが中学生のころだった。
「起きたら食卓に白い陶磁器の壺が置かれていたんです。これが何か尋ねると母親は『おつぼさんや』と答えました」(前出・Aさん、以下「」も)
その壺は近所に住む旧統一教会会員が100万円ほどで母親に売ったものだった。
「壺には“Korea ILShinStone”と書かれていました。罪が清められる壺だそうです。それに母はこの壺を買うことで、統一教会が当時勧めていた”日韓トンネル建設”にも協力したいと考えていたようです。ほかにも印鑑などを買わされていました。毎日押したら運が良くなる、と説明されたそうです」
そうした品物が増えるにつれ、家庭の空気は変わっていったという。
「うちの中が暗くなり、私はストレスで病気になりました。手術をしましたが入院費用がなく、術後5日で退院させられました。私は教団を恨みました。母は旧統一教会の信徒でも会員でもないし、旧統一教会の施設に行ったり、教えを学んだこともなかった。ですが、さまざまな高額商品を会員から買わされていたんです」
ある日、Aさんは信者に連れられて教団の商品販売会場に足を運んだ。そこでは壺などのほか、水晶やアメジストでできた仏像なども並んでいたという。
「キリスト教なのになんで仏像なのかを尋ねると『日本はキリスト教の下地がない。だから下地のある仏教から入ったほうがいい』と言われたんです。変な話ですよね」
会場では宝石や着物などの高額商品ばかりが売られていたという。
「値段の高いものばかりで、『広めたいなら安くすればいいのに』と聞いたら、信者の人は黙ってしまいました。あとで、それが韓国への送金や渡航費に使われていると知りました」
Aさんの家庭では、200万円以上を支払ったという。
「1億円くらい払った人もいますし、土地を失った人もいます。その人たちに比べたら額が少ないので、あまり被害を訴えることもできませんでした。でもね、うちの一番の問題はキリスト教家庭だったという点です」
Aさんの母親が旧統一教会と関係を持ったのは1980年代中盤~90年代前半にかけて。当時、旧統一教会は社会問題化していた。
「母は牧師や教会の人に、統一教会の商品を買っていることは隠していました。事情を知らない私が話しそうになったとき『話さないでいい』と止められたこともあります。母は多分、自分がおかしいことをしていることをわかっていたんだと思います」
壺などを購入したり、霊能者に傾倒する母親に疑問を抱いたAさんは、たびたび衝突した。
「母に『どういうつもりなの?教会でダメって言われているものを家に入れないで!』と怒って伝え、喧嘩になることが増えました。母から叩かれたり、蹴られたこともあります。『母親らしいことをしてほしい』と伝えたけど、変わらなかった。それまでは母のこと、すごく好きだったんです。でも、耐えられなくなり、家を出ました」
1998年、母親は病気で亡くなった。生前に和解できなかったことをAさんは今も悔やんでいる一方で、「許せない」という気持ちも残る。いまなお葛藤を抱えているのだ。
「私はお葬式には出ませんでした。周囲の人は母と旧統一教会のことを知らない。なぜ私が家を出たのかも知りません。晩年の母はキリスト教の信仰に支えられて、這ってでも教会に行っていたそうです」
母親は「騙された」と口にしたこともあったという。それでも病床で旧統一教会の関連企業が販売する高額な高麗人参茶を飲み続けていた。旧統一教会とのつながりは切れなかったようだ。
「効果はなかったみたいです。ソフトボールくらいの大きさで8万円ほどしたものでした。私が母と決裂したきっかけは『合同結婚式に出たらあかんよ』と言われたことでした。統一教会を否定しておきながら、実際には商品を買っていた。家族の仲もおかしくなっていき、兄と私は教会に行くこともやめました。
今でも悔しいのは高校進学のころも『お金がない』と言われ、希望する高校に行けなかったことです。旧統一教会に払ったおカネがあったら進学できたんです。旧統一教会は家族、親子や夫婦の関係ばかりではありません……多くの人の将来を壊してきたんですよ」
母親に統一教会員を紹介したのは自民党員だったという。
「母は職場トラブルがあり、それを解決してくれたのが自民党員でした。その人から統一教会の方を紹介されたそうです」
Aさんによると、父親は身体が弱く病気がち、母親が家計を担っていたという。職場でも責任のある立場、そうしたプレッシャーが旧統一教会にハマるきっかけを作ってしまったようだ。
実はAさん自らも山上被告と同じ道を歩みかけたことがあるという。
「山上くんが事件を起こす前、演説に来た安倍さんと会ったことがあります。そのころには安倍さんと統一教会の関係を知っていました。
もちろん、何かしてやろうというつもりはありませんでしたが、『安倍、統一教会からカネをもらうな!』って叫ぼうと思っていました。ちょうど山上くんが事件を起こした位置と同じくらいの場所に私もいましたが……結局言えませんでした。だから山上くんの気持ちはわかるんです」
最後にAさんは静かに言った。
「傍聴できなくてもいいんです。私は旧統一教会の信者でも2世でもないけど、旧統一教会の被害に遭った家族がいることを知ってほしいんです」
初公判の傍聴席は32席で、抽選は727人。倍率は22.7倍だった。
初公判開始直前の裁判所周辺や建物内には何人もの警察官が配備され、警備に当たっていた。元迷惑系ユーチューバーで奈良市議会議員のへずまりゅう氏とその妻、動画を撮影する男性配信者、やじ馬らでごった返していた。
抽選に漏れた人たちも裁判所の前に集まり、初公判の行方を見守っていた。
公判は続く。山上被告はこの先、法廷で何を語るのだろうか。
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