女子大の危機が報じられて久しい。受験生の共学志向で経営が悪化し、1998年のピーク時の98校から現在は60校ほどに減少しているのだ。
存亡危機にあるのは女子大だけではない。男子校の減少も激しい。文部科学省の調査によると’24年度は、全国の国公私立高校4774校のうち男子校は2%以下のわずか92校。20年前の’04年(173校)から半減している。同じく20年前と比較した女子校の数(438校→266校)より、減少の度合いが急激なのだ。
教育ジャーナリストの石渡嶺司氏が背景を解説する。
「男子校が激減した理由は主に2つあります。1つは少子化です。当然ですが別学にしていれば、男子校には男子しか、女子校には女子しか応募できません。子どもの数が減っている現状では、共学化にして男子と女子の両者から受験生を集めないと経営不安となりかねないでしょう。
2つは男女別学への違和感です。特に公立校では、保護者を中心に『生徒を性別で分ける必要があるのか』という意見が多いと聞きます。現在でも埼玉県や群馬県など一部の自治体では男女別学の公立校が残っていますが、福島県や宮城県などは’00年代以降に全校共学化に踏み切りました。私立でも生徒の確保が難しい中堅以下の学校では、共学化がどんどん進んでいます」
石渡氏の指摘どおり近年共学化したのは中堅以下の学校が多く、現在でも男子校を維持しているのは大半が上位校だ。そうした上位校の一部は、男子校の危機が叫ばれる一方で進学実績が急上昇している。以下は、代表的な3つの男子校の20年前(’05年)と今年の東京大学合格者数の比較である。
・聖光学院(神奈川県横浜市):49人→95人
・早稲田(東京都新宿区):5人→30人
・本郷(東京都豊島区):2人→15人
石渡氏が続ける。
「男女別学のメリットは、異性を気にせず勉強に専念できることです。男子校は女子校より減少比率が大きい。選択肢が減ったため、別学を希望する優秀な男子生徒が、より一部の上位校に集中するようになったのかもしれません」
東日本なら開成(東京都荒川区)、麻布(東京都港区)、武蔵(東京都練馬区)の御三家、西日本なら灘(兵庫県神戸市)や東大寺学園(奈良県奈良市)などの難関校はいずれも男子校。減少こそすれ、伝統的な男子校は今後も存在感が薄らぐことはなさそうだ。