「あの人は田久保市長派だ!」ウソの噂を流して落選させようという動きも…「新人候補は疑われる」公示直前で“足の引っ張り合い”ですでにカオス状態〈伊東市議選は大混乱〉

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静岡県伊東市の田久保眞紀市長(55)の学歴詐称疑惑を背景に行なわれる10月19日の出直し市議選の前哨戦が、異例の様相を呈している。田久保市長の失職を求めている候補者に対し、得票を削ろうとして「あの人は実は“隠れ田久保派”だ」という噂が流されているというのだ。
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市議会に不信任を議決された田久保市長は延命のために市議会を解散したが、それに伴う市議選でも市長の不人気ぶりが浮き彫りになっている。
市議選は定数20で、選挙後に構成される次の市議会で再度不信任が議決されれば田久保市長は強制失職となるが、7人が採決に参加しなければこれを回避できる。これを狙う田久保市長の支持者は当初「少なくとも7人、できれば9~10人を立候補させたい」と口にしていた。
この目標はどうなったか。地元記者クラブに加盟するメディアが共同で、10月12日の告示を前に立候補予定の前職18人と新人12人の計30人に、田久保市長に対する姿勢をたずねるアンケートを行なったところ、前職全員と新人7人の計25人が田久保市長への再度の不信任に「賛成」と答えている。
「残る5人のうち1人は明確に『反対』と答え、4人は態度を明らかにしませんでした。ただ、『賛成』と答えた25人の中にも田久保さんを支持していたことが知られている人物が2人おり、仮に全員が当選して田久保さん擁護に回れば計7人になります」(地元記者)
だがそれは机上の数合わせに過ぎないようだ。
「実際には田久保さんへの逆風が強すぎて構図も変わりました。まずコアな支持層も分裂したようです。田久保さんの言動に見切りをつけた支援者らの中で“後継者”を模索する動きがあり、あつれきが生じ、今も田久保さんを強く支持する一部を除き、多くが離脱したようです。
また、当初は田久保市長支持を隠して立候補し、不信任に反対する“ステルス田久保派”が立候補するのではないかとも言われていましたが、アンケートで不信任に賛成すると答えた人が当選した後に立場を変えることは世論が許さず難しいでしょう。
アンケートで態度を明らかにしなかった人のうち複数は田久保さんの支持者とみられていますが、こうした人たちも変わらず市長支持なのか様子見なのかわかりません」(同記者)
そもそも卒業証書と称するものを周囲に見せ「東洋大卒業」と主張した田久保市長は、卒業が事実でないと判明した後も“卒業証書”の公開を拒み、それがこじれて議会解散という大ごとに発展した。その後も田久保市長は態度を変えず、他にこれといった政策を打ち出したわけでもないため、批判的な世論が変わる材料はない。
そんな市長の不人気を背景に選挙の前哨戦では珍事も起きている。解散で失職し、出馬準備を進める前市議のA氏が話す。
「○○候補は公職選挙法違反だとか、刑事告発されるだとか根も葉もない噂がさまざまな候補者に対して流されています。そのなかで今回異様なのは、田久保市長を支持していない市議に対して『あの人、実は田久保市長支持派だよ』という噂を流すというのが流行っていることです。
私自身も『あなたはステルスの田久保市長支持派って聞いたけど、市長を支持するの?』って周囲の人から言われました。支持なんてしていない、冗談じゃないって感じです」
A前市議は9月1日の田久保市長の不信任決議案に賛成し、「市長派」でないことは確かな人物だ。
また、前市議のなかには噂対策として、「田久保市長は辞職しろ」と書いたポスターを手に街頭に立っている立候補予定者もいるという。
いっぽう、解散前の市議会で市長の疑惑を追及する調査特別委員会(百条委)に属し、田久保市長と対決したことが知られている前市議のB氏は、別の形で田久保市長への拒否反応の高まりを感じるという。
「今回、有権者と話すと『とりあえずは現職(前職)に票を入れたい。新人は口で何と言っても市長のことをどう考えているか分からない』という人は多いです。前職の市議は全員一致で市長の不信任決議案を可決させたので、市長寄りではないという安心感がある反面、新人は田久保派でないことを確認できないという気持ちなのでしょう」(B前市議)
田久保市長を支持する声がどの程度市内にあるのかは見方が異なるが、この市議選の結果は田久保市長の今後の行動を決める可能性もある。
新人で立候補した反田久保市長派のC氏は、「田久保さんは今年5月の市長選で1万4000票余りを得ました。このうち半分でも残っていて、それを等分すれば3人か4人は楽々当選できると予想されます」と話す。
反対に、伊東の政界関係者D氏は「2023年の前回市議選にも出馬した田久保さんは700票余りの得票で最下位当選でした。市長選での得票は前市長への批判票とみるべきで、本当の彼女の支持者の数は市議選で現れた票数くらいじゃないですかね。そうすると1人当選できるかどうかというところでしょう」と厳しく見積もる。
「現状は、市議選で田久保派が7人当選するのは難しい。2回目の不信任決議案が可決されて市長が失職し、出直し市長選が行われることになるでしょう。そうなったとき、市議選での田久保派の当選が1人か2人にとどまれば田久保氏は市長選出馬をあきらめ、市長交代によって今回の問題は収束するかもしれません」と伊東市内の建設業者は話す。
しかし、公職選挙法違反容疑などで複数の刑事告発を受けている田久保市長は市長職を退けば捜査の手が一気に迫ると考え、最後まで延命を模索して再出馬するとの見方もある。
市政の混乱がいつまで続くのかは、相変わらず田久保市長の考えにかかっている。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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