近年Z世代の若い女性を中心に人気が広がっている中国・四川省発祥のスープ料理「麻辣湯(マーラータン)」。“第二のタピオカブーム”とも言われているほど注目されている。
数種類のスパイスで作られたピリッと辛いスープに、野菜や肉などの具材を自由に選んでカスタマイズする食べ方が一般的で、日本国内では話題の麻辣湯チェーン店がいくつも現れている。なかでも都内の店舗で行列ができるほどの人気を誇るのが、現在日本国内に19店舗を展開する「楊國福(ヤングオフー)」だ。
楊國福を運営する楊國福グループは2003年に中国で創業。麻辣湯ブランドを確立するとともに急成長を遂げ、中国本土と海外10か国で7000店舗以上を展開し、麺類のファストフードをけん引する存在となっている。
そんな楊國福だが、昨年から日本国内の店舗で相次ぐ食品問題や疑惑が報じられている。
昨年11月、銀座店を訪れたとみられる利用客がTikTokに写真を投稿したのだが、そこには食べる前と思われる麻辣湯に何かの幼虫のような虫が浮いており、物議を醸したのだ。
さらに今年7月にも、「楊國福」と書かれたのれんの先にある厨房で、スタッフが床で牛骨をカットする様子が写った動画がTikTokに投稿された。投稿者は《まさかスープに入れてないよね、、、》と心配するも、メディアの取材に対して同店のフランチャイズオーナーは「ゴミを処分しているところを撮影された」と説明し、客への提供については否定している。
こうしたトラブルや疑惑が発生しているにもかかわらず、いまだに行列ができる店舗も少なくない楊國福。今回は楊國福の対応や人気が続くワケについて、都内の中華料理店を食べ歩き、麻辣湯にも詳しいフードブロガーの阿生氏に話を聞いた。(以下「」内は阿生氏の発言)
そもそも現在の麻辣湯ブームはどのように広がっていったのか、その経緯から伺っていこう。
「日本国内ではおそらく2021年ごろから、一部の女性インフルエンサーや女優の方々が、ヘルシーフードとして麻辣湯を取り上げて徐々に浸透していき、昨年ごろからブームと言われるようになるほどの人気となっています」
麻辣湯は野菜が豊富に摂れることに加え、小麦麺ではなく春雨を使用していること、さらに唐辛子によって脂肪燃焼効果が期待できることなど、“低カロリーでヘルシー”といったイメージが若い女性たちの心をつかんだとみられている。
麻辣湯ブームとともに店舗数の増加も目立ってきている楊國福だが、日本ではどのような展開を見せているのだろうか。
「楊國福は2018年12月に池袋に店をオープンし日本に初進出を果たしました。その後、2021年頃から高田馬場や御徒町など、東京都内で在日中国人の多い町を中心に展開していましたので、どちらかというと日本人よりも在日中国人などをメインの客層として狙っていたのではないでしょうか。
そして日本人にも麻辣湯人気が高まり始めた2022年以降は展開エリアを広げていき、大阪や福岡など、東京以外にも進出していったのです。麻辣湯ブームが本格的になってからは、都内でも渋谷や吉祥寺、下北沢などの若者に人気の街にも出店していきました。楊國福は時代の変化に敏感で、ほかの麻辣湯チェーン店よりもトレンドを活かした出店戦略が巧みであったことが、人気店へと上り詰めた理由と言えるでしょう」
ちなみに阿生氏によると、東京の麻辣湯チェーンの“二大巨頭”となっているのが、楊國福と、メディアで「ラーメン王」の異名を誇っていた石神秀幸氏が創業した「七宝 麻辣湯(チーパオ マーラータン)」だという。楊國福が牛骨を使った少々こってりとしたスープが特徴的なのに対し、七宝麻辣湯は日本人好みのさっぱりとした薬膳系のスープが特徴とのことだ。
ここから楊國福の食品問題や疑惑について見ていこう。
まず昨年11月の麻辣湯に虫が混入していた件については、発覚後、日本国内の主な楊國福を運営している大天元が、公式Xにて弁護士や警察に調査を依頼している旨を発表。その約1週間後に、《虫混入の件について最新状況のご報告》として、原因を説明するポストを投稿した。
公式Xの原因説明では、《問題が発生したのは業務用スーパーで仕入れた非油揚げの乾麺である可能性が極めて高いことが確認されました》、《全ての店内ではこの非油揚げ乾麺の使用を禁止し、しかるべき場所にて証拠として保管しております》とし、謝罪している。
その後、12月にも公式Xを更新し、《本日、顧問弁護士と共に、ノンフライ乾麺の輸入業者兼販売業者である株式会社神戸物産の品質管理担当者および法務担当者と打ち合わせを行いました。神戸物産側は、今回の件について謝罪し、問題解決に向けてマレーシアの製造元と連携し、原因調査を行うことを約束しました》と投稿。引き続き問題発生の原因について追及していくことを報告している。
そして今年7月に発覚した牛骨を床でカットする動画については、大天元の公式Xで《本部より問題のあった名古屋伏見店に対し、すでに営業停止および業務改善の処分が下されております》と説明、謝罪した。
少々複雑だが、この名古屋伏見店は大天元の運営ではなく、べつのフランチャイズとなるのだが、同店のオーナーはJ-CASTニュースの取材に対して以下のように回答していた。
《ゴミを処分しているところを撮影されました。しかし、お客様から見られるようなところでやったのは、よくなかったと考えています。それが誤解されてしまったところです。衛生的な問題はないと考えています。ですから、保健所に来てもらうこともありません》
名古屋伏見店は、中国本部からの指示で1日だけ営業停止し、ごみ処理方法を確認するとともに店内の片づけにあたり、翌日から営業再開したという。
こういった楊國福の食品問題への対応を阿生氏はどう見たのか。
「虫混入トラブルについては、SNSでの投稿者に対して法的措置をほのめかす投稿もしていたと記憶していますし、輸入先の会社の責任を強く主張するなど中国式のトラブル対応の方法をとっているように見えました。このような件があったにもかかわらず、牛骨を床でカットする問題など、もう少し日本人が顧客であることを意識した従業員の教育や衛生意識が必要だと思います」
こうした食品問題が相次いでいたにもかかわらず、現在も楊國福には行列ができる店舗も存在する。それはなぜなのだろうか。
「まだまだ麻辣湯ブームは続いており、SNSなどでは麻辣湯の投稿が数多く見られます。そんななか楊國福の食品問題の件は、麻辣湯についてのポジティブな投稿や意見で徐々に薄れていっているのでしょう。最近では牛丼チェーンの異物混入騒動などもありましたが、けっきょく商品自体の人気が高ければ、影響は一時的なもので客入りはそこまで減ることはなく、大きな影響はないのです」
しかし、こうしたブームに乗じているだけでは人気を保つことはできないのではないかと阿生氏は指摘する。
「“第二のタピオカブーム”とも言われているように、この麻辣湯ブームも一時的なものに過ぎないと予想されています。現在ではブームによって、楊國福以外の中国の麻辣湯チェーン店も参入し始めていて、まさに激戦化しています。こういったなかで人気を保ち続けていくためには、先に説明した店舗の衛生管理やトラブルが起きた際の対応などをより真摯に行なうことや、顧客を大切にする姿勢を示していくことが重要になってくるでしょう。
さらに麻辣湯は、楊國福と七宝 麻辣湯は特徴の違いはありますが、そこまで味で差別化が図りにくく、個性が出しづらいのが難点。そんななか楊國福では現在、女性客を意識してか、内装のデザインを凝ったものにして、オシャレな空間を演出する店舗もあり、店舗づくりに工夫が見られます。楊國福ならではの店舗経営や空間づくりが成功すれば、これからも人気を維持していけるのではないでしょうか」
――現在の麻辣湯の人気は、一過性のブームとして過ぎ去ってしまうのか、それとも料理の定番のひとつとして日本に定着するのか。今後の楊國福の展開も含め注目だ。
(取材・文=瑠璃光丸凪)
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