「うちの子はやっていない。もう話し合う気は一切ない」いじめの暴行で難聴を負った小4男子が加害児童の保護者に浴びせられた“驚きの一言”とは

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〈「耳からチャプチャプ音がする」「これはやばい」京都市の小4男子が“壮絶ないじめ暴力”で難聴に 羽交い締め状態で頭を3発殴られ…〉から続く
京都市の市立小学校4年生だったツトムくん(仮名)が、2024年11月に複数の同級生からいじめによる暴行を受け、右耳に外傷性の感音難聴を負った。
【写真】羽交い締め状態で、右耳の付近を3発殴られたツトムくん。その時に負った感音難聴に今も苦しんでいる。
ツトム君の母親は学校に対して、同級生の男子児童Aによるいじめや、それを見て見ぬふりをした担任教師への対応を求めた。
12月9日にはツトムくんが3年生だった時の担任や教務主任、教頭らと相談し、教頭はツトムくんの前で「お母さんと最後まで一緒に戦いましょう。これはいじめです」と発言した。
いじめにあうまで、学校で一度も泣いたことがなかったというツトムくん 家族提供
その夜、両親は校長とも話し合いの場を持った。
「私たちの希望は保護者会を開くことでした。ツトムと私が、暴力を受けた経緯やその恐怖、耳が聞こえなくなった被害などについて他の児童の前で話させてほしい、と伝えたんです。もちろん加害児童の名前は出さないことも伝えました。校長の答えは全て曖昧でしたが、一度は保護者会を開くことを認めました」(母親)
ツトムくんは他の児童への説明で話す内容について考え始めていたという。
「周りの友達に、僕と同じ思いをしてほしくなかったんです。同じような怪我をしてほしくないし、みんなと自分の安全が欲しかった。僕は学校で楽しく過ごしたいだけで、そのために教室を荒らす子たちを違うクラスに移動させてほしかったし、それが難しいなら転校させて欲しいと思っていました」(ツトムくん)

一度は保護者会を開くことを認めた校長だったが、翌日には早くもその答えが覆ってしまった。
「連絡があって、家まで校長と教頭が訪ねてきました。玄関を開けると同時に『説明と保護者会はできません』と言われました。理由はクラスの子どもたちが可哀想だから、犯人探しになるから、というものでした。他にも『教員免許のない人間を教壇に立たせることはできない』『他の保護者からクレームが来るようなことはさせられない』とも言われました。全く納得できませんでした」(母親、以下同)
同時に、ツトムくんに対するいじめの中心人物だったAの保護者が、暴行事件に対して「うちの子はやっていない。もう話し合う気は一切ない」と反応したことも伝えられた。
母親は抗議したが結局保護者会は中止になった。市の教育委員会に助けを求めたが、教育委員会も学校の判断に同調したという。
「『訴えたらいいのか?』と電話で怒鳴ってしまったんですが、教育委員会の担当者には『訴えたら困るのはそちらですよね?』と言われました。あまりにも頭に来て、そのまま電話を切ってしまいました」
そして12月11日から、ツトムくんは学校へ行けなくなった。

「ツトムはそれまで学校生活で泣いたことはなかったんですが、初めて大泣きをしました。それ以降は、YouTubeでいじめや自殺に関する動画を探すようになりました。『学校に嘘をつかれた』と悲しんでいました」
ツトムくんの母親は警察にも相談していたが、それも事態の改善にはつながらなかったという。
「学校が事態に対応しないことや、学校として謝罪してもらうことはできないかと相談していたんです。しかし、『証人がいないからできない』と言われ、聞き取りもされませんでした」
ツトムくんの不登校は冬休みをまたいでも続き、25年1月7日には精神科で「適応障害」の診断を受けた。診断書には「睡眠の入眠困難、途中覚醒がみられ、また登校に対する恐怖心があり、その為登校困難の状態にあり、さらに今後どうすれば良いかに関しての強い不安が認められる」と、症状が書かれている。
ツトムくんが学校へ行けない間も、学校側はAやクラスへの聞き取りを行ってはいた。しかしAは加害行為を認めず、それ以上の対応はなされていなかった。
母親は3月に入ると、「いじめ重大事態調査」の申請書を市教委あてに郵送した。その後、一転してAが加害行為を認めたため、「いじめ重大事態」と認定。8月からは第三者委員会による調査も行われることが決定した。京都市の教育委員会によれば、市内の公立学校でいじめ重大事態による第三者委員会が設置されたのは初めてだという。

並行して、3月にはツトムくんの転校もようやく認められた。
「引っ越しをしないで転校するには校長の許可が必要なのですが、いじめが大事になるのを避けたかったのか、なかなか認めてくれなかったんです。保護者会も開いてくれないし、Aの話は聞くのにこちらの要望は『やります』と言うばかりで何もしてくれない。ちゃんと対応してくれると思った私がバカでした。ここまで問題が長引いたのは校長のせいだと思います」
ツトムくんは4月からは新しい学校に登校を始めているが、病院への通院も続いている。Aとは離れられても、聴力の回復はやはり望めないという。
(渋井 哲也)

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