大量閉店「サンマルク」4年で4分の1が”消滅”の背景

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

店舗数の減少が続くサンマルクカフェ。一体なぜなのでしょうか(写真:筆者撮影)
【写真アリ】サンマルクカフェが減少する一方、同HDの「珈琲系チェーン」も不採算店が閉鎖に…
家での作業に飽き、外で仕事をしようと思った。そこで、向かったのが自宅近くにある「サンマルクカフェ」。しかし、驚いた。閉店してなくなっているのだ。
「カフェ不足」が叫ばれている昨今。都市部では、土日はもちろん、平日でもカフェはどこでも人でいっぱいだ。
「サンマルクカフェ、いったいどうしたんだろう……」
ふと気になって調べてみると、どうやらサンマルクカフェはここ数年で「大量閉店」しているらしい。
なぜサンマルクカフェは大量閉店しているのか。これからどこへゆくのか。サンマルクカフェを含めた「サンマルクホールディングス(HD)」の「いま」を紹介する。
サンマルクカフェは1989年に岡山県で誕生した、ベーカリーレストランを源流とする、都市型のカフェチェーンである(今でもこのベーカリーレストランは存在し、「ベーカリーレストラン サンマルク」と言う)。
商業施設や都心ビル、都心の繁華街などに店舗がある。創業者は片山直之氏で、創業の1年後には東京に進出。その後も店舗数を増やしてきた。
名物は「チョコクロ」というチョコレート味の小さなクロワッサン。これを目当てにサンマルクカフェに行く人も多いだろう。チョコクロを含めたパンは店内で焼いていて、その焼きたてパンが売りの1つでもある。同社はかつてパンの製造業も営んでおり、その流れを汲んでいる。
そんなサンマルクカフェだが、店舗数が減っているのだ。
どれほどまでに減ったのか? コロナ禍以後の店舗数の推移を見てみると、2021年3月時点で374あった店舗は2025年3月時点で285店舗になっている。コロナ禍以後だけで、実に25%の店舗が消滅している。「大量閉店」といっても差し支えないだろう。
かつては、スターバックス、ドトール、コメダ珈琲店、タリーズに継ぐ店舗数を誇っていたが、現在では星乃珈琲店に数を抜かされてしまった。
この大量閉店は、いったいなぜ起こっているのか。
大きな理由としてあげられるのが「不採算店舗の縮小」である。そもそも、サンマルクHDはコロナ禍前から経営不振に苦しんでいた。2017年3月期までは4年連続で最高純利益を更新するなど絶好調だったのだが、それ以後は徐々に経営が傾いていった。
そもそも、サンマルクHDは絶好調だった2015~16年にかけて、店舗数を一気に増加させていた。1年に100店舗近い店舗が増えていたのである(サンマルクカフェ単体で20店舗程度)。「店舗急拡大による経営状態の悪化」は、チェーン飲食店ではよく見られるが、まさにその状態に陥っていた。
特に都心部を中心に店舗を広げるサンマルクカフェは郊外などに比べて相対的に賃料が高く、それも経営状況を圧迫していたに違いない。
さらにその裏側には、2017年から創業者である片山直之氏が病気療養のために経営の一線を退いたこともあるといわれている。その翌年の2018年、療養の甲斐虚しく片山氏は死去してしまう。
そこを襲ったのが、コロナ禍だ。飲食業全体が大きなダメージを負ったわけだが、サンマルクHDの場合は折からの経営不振も災いして、その影響はあまりにも大きかった。
実際に業績はどう推移したか。本業でのもうけを表す営業利益の推移を見ていこう。
最高純利益を記録していた2017年3月期では営業利益が77億円だったのに対し、2018年3月期は前年よりも10億円減った67億円、さらにその2年後の2020年3月期には41億円まで落ち込んでしまう。
そしてコロナ禍真っ只中の、2021年3月期の営業利益はマイナス40億円、さらにその翌年2022年3月期ではマイナス35億円という大幅な赤字が続いたのである。
2010年代以降、ありとあらゆる悪要因がサンマルクを襲ったのである。
コロナ禍には売上が減少し、営業赤字となった(出所:同社のIR資料より)
こうしたなか、サンマルクHDはその対応策として店舗数を大幅に減らすことになる。これが「不採算店舗の縮小」である。
先ほども述べたように、全店舗の25%近い店舗が2021年から2025年の間に閉鎖された。タイトルではやや煽る形で表現したが、閉店は決してネガティブなワケではなく(ポジティブでもないが)、適正な規模感だったり、筋肉質な組織へと変えていく手段の1つだ。
それと同時に既存店舗の改装も進めた。現在、いくつかの店舗ではセルフレジの導入などが行われているが、こうした収益体質の改善を進めている最中なのである。
珈琲系チェーンが増えるなか、そこまで伸びているわけでもない「倉式珈琲店」
また、同じサンマルクHDに属するカフェ「倉式珈琲店」についても同様で、不採算店舗の閉鎖を進めている。「倉式珈琲店」はサンマルクカフェよりも少しお高めのカフェであるが、ホールディングスとしてはカフェ事業そのものにメスを入れている。
「サンマルクが消えている」……と、少しセンセーショナルに書いてしまったし、現にサンマルクカフェは経営不振を背景に、店舗数を減らしている。

ただ、こうした取り組みの成果が現れ始めたのだろうか。サンマルクカフェを含むサンマルクHDの業績は、ここ2年ほどで改善してきている。
2023年3月期の営業利益は2億円と黒字化。さらに、2024年3月期の営業利益は993%増の26億円と、大幅すぎる回復を成し遂げた。文字通りの「V字回復」である。
ちなみに同じ期(2024年3月期)を見ると、売上高は11%しか増加していないので、客足が大幅に伸びたというより、不採算店舗を閉店したことによる営業効率の大幅な改善の効果が現れたといえるだろう。最新決算である2025年3月期の営業利益も、前年比39%増の36億円で、閉店の効果がしっかり出ている。
とはいえ、昨年サンマルクHDが発表した「中期経営計画」では2026年3月期までの目標として「『サンマルクカフェ』業態を中心とした運営効率の改善」が目指されており、その改革は現在進行形である。
(出所:決算説明会資料より)
その意味でも、これからもあなたの近所のサンマルクが閉店する……なんてことがあるかもしれない。これらの改革は長期にわたるものであり、今後の顛末が待たれるところだ。
では、どのようにサンマルクは変わっていくのか。ポイントは「カフェ以外の業態が中心になっていくかも?」ということだ。
【後編】大量閉店「サンマルク」好調な業界で一人負けの訳 では、サンマルクカフェ衰退の背景と、サンマルクHDとしての打開策となる業態について、より詳細に報じている。
(谷頭 和希 : 都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SNSでもご購読できます。