60代、家を買わずに「賃貸」にする理由。老後のことを考えた際のメリットとは

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「持ち家か賃貸か」というのは、多くの人が悩む問題ですよね。「私は賃貸派で、今後も家を買う予定はありません」と話すのは、50歳から本格的にミニマムな暮らしをスタートさせた、カナダ在住のミニマリストでブロガーの筆子さん(現在60代)。ここでは、筆子さんが家を買わなかった理由を教えてもらいました。
「持ち家と賃貸のどちらがいいか?」というのは、よく議論になりますが、その答えは、「人による」となるでしょう。それぞれ、考え方、家族構成(ペット含む)、生活環境、家や人生に求めているものが違いますから。
私は賃貸派で、今後も家を買う予定はありません。それは以下の理由からです。
私が家を買わなかったいちばんの理由は、経済的に余裕がなかったからです。
私は娘が生まれる直前に夫と暮らし始めました。私も夫ももうすぐ40歳という年齢で、彼は失業しており、時折アルバイトをしていました。毎月の生活費の支払いですら苦しいのに、家を買う頭金など、とても用意できません。マイホームなんて、まったく考えていませんでした。
57歳になった春、老後資金の積立の相談をしに、銀行に出向きました。
相談事がすべて終わったあと、銀行員に「家を買ったら?」とすすめられました。当時、夫は定職についており、18歳になっていた娘は、アルバイトでそれなりに稼いでいました。私も合わせて「家族3人とも収入があるのだから、家賃を払うより、家を買ったほうがいい。住宅ローンの支払いのほうが、今の家賃より安い」。こう銀行員は言いました。
同様の考え方をする人はたくさんいるでしょう。「家賃を払っても、その家は自分のものになるわけじゃない。それは、どぶにお金を捨てるようなものじゃない?」と。
しかし、私はマイホームの方がお金がかかると思います。賃貸ならば、収入具合に合わせて、より家賃の安い場所に引っ越すことができますが、家を買ったら、そう気軽には、引っ越しできません。
固定資産税の支払いがあるし、家の修繕にかかわる費用はすべて自分持ちです。そして、家は必ず老朽化します。日本では、火災や地震保険もはずせないでしょう。
ローンを組んで購入する以上、持ち家が必ず資産になるとは言えず、リスクを伴うし、負債になってしまう可能性もあります。今年、カナダは、インフレをおさえるために中央銀行がどんどん金利をあげました。その結果、月々の住宅ローンの支払いにあえいでいる人がたくさんいます。物価高もあいまって本当に苦しい状況です。
賃貸なら、リース契約なので、契約期間の間、毎月払うべき家賃が確実にわかります。しかし、持ち家は、突然どこかが壊れたり、経済状況の変化が起きたりすると、想定外のお金が出ていきます。
家はたいていローンで買うので、たとえ手持ちが少なくても、定職についていれば、買うことはできるでしょう。しかし、私は、家そのものをあまり欲しいとは思いません。
カナダに来てから、私よりかなり若いけれど、同じ頃に子どもを生んだ日本人の友人ができました。
彼女はマイホームを持つことを目標にがんばっていた人で、念願叶って、とても素敵な白い家を建てました。友人が新築の家に入居してすぐに、娘(当時5歳ぐらい)と遊びに行ったことがあります。
郊外の果ての果てにあったその家は、かなり広く、白くて、新しくて、2階建てでひろびろとして、バスルームが2つあり、ゲストルームもありました。アイランドカウンターがあるキッチンは、アメリカのドラマにでてきそうです。
「まあ、すてきねえ」と言った私の言葉に嘘はありませんでしたが、心の中では、「でも、こんな大きな家、私は絶対いらない」と思いました。
巨額の住宅ローンを払うことになるし、部屋がたくさんあるから掃除も大変。なにより、こんな大きな家にものを溜めこみがちな夫と入居したら、どこもかしこもたちまち、夫のもので埋まってしまいます。収納スペースがあると、人はものをためこみますから。
持ち家があると、よくも悪くもその家にしばられるので、それも私の性格に合いません。人は必ず年をとるから、老後にダウンサイジングを迫られることもあるでしょう。病気、離婚、失業、転職など、家を買ったときには、予想もしていなかったことが、ローンを支払っている間に、起こるかもしれません。
こんな理由から私は賃貸住まいですが、北米でも、「マイホームを持って一人前」、「マイホームを持つのが夢」と考える人がたくさんいます。自分の家は、自分の好きなようにできますし、なによりその人のプライドやアイデンティティの拠り所になります。
ただ、私にとってマイホームは、ものすごく巨額の買い物のわりには、維持や管理にお金がかかり、行動を制限し、ガラクタの温床になりそうな厄介なものなのです。

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