〈京都の大行列踏切〉非常ボタンが押されるほどの群衆、車道に怒号、整理にあたる係員「なぜか線路に10円玉を置いた外国人観光客の姿も…」

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大型連休に入り、日本各地が観光客でにぎわっている。日本を代表する観光都市・京都ももちろんそのひとつだ。だが、近年は観光客の急増により街の様子が大きく変わってしまうこともあるほど、オーバーツーリズムが深刻な社会問題になっている。ネット上でも話題になった“ある場所”を、実際に訪れてみた。
【画像】線路に10円玉! 外国人観光客がひっそりと置いていった
今年1月26日、JR西日本・奈良線の東福寺駅~稲荷駅間で、踏切の非常ボタンが押されるという出来事が起きた。非常ボタンが押される行為自体はさほど珍しいことではないが、その原因が「外国人観光客による大行列」ということで、ネット上で大きな話題を呼んだ。
SNSでは、車道を埋め尽くすほどの観光客が踏切を渡る様子を収めた動画が、〈外国人で埋め尽くされた伏見稲荷の踏切で、非常ボタンが押されたもよう〉とのコメントとともに拡散され、多くの反響を呼んだ。
コメント欄には、外国人観光客の急増によって引き起こされる混乱を嘆く声が相次いだ。
〈これを公害と言わずして何と言うんだ。地域に住んでる人にはとてつもない迷惑だろ。踏切が渡れないような量っていうのは異常なんだよ〉
〈日本政府には怒りしかないです。これ、だれ得ですか?こんなん、誰が幸せを感じますか?日本人はもとより、本当に日本が好きで来日する外国人もうんざりするわ〉
〈京都に行きたいのに中国人や外国人の傍若無人を見て観光どころでは無くなるので行かなくなった。そういう日本人多いんじゃないかな〉
〈ほんと京都にはもうウンザリ。実家が近いから帰省の際に京都に泊まってから帰っていたが、はんなりもクソもあったもんじゃないわ。あんなインバウンド地獄では生活が脅かされるよな〉
問題となった現場を確認するため、筆者は4月下旬の休日、伏見稲荷近くの該当する踏切を訪れた。1月ほどの混雑ではないものの、それでも多くの外国人観光客が踏切を行き交っており、現場では係員が笛を吹いて誘導にあたっていた。
踏切の警報が鳴るたびに係員が注意喚起し、遮断機が上がるとすぐに通行を整理する。この作業を繰り返し続ける姿が印象的だった。
近くに住む住民に、この踏切について話を聞くことができた。
「1月の件以降、この場所に通行整理の係員さんが配置されるようになりました。でも毎日いるわけではなくて、今日いるのは“稲荷祭”の期間中だからだと思います」(近隣住民、以下同)
確かに、この日は地元の祭りの影響で非常に多くの人が集まっていた。しかし、祭りの有無に関係なく、ふだんから混雑は続いているようだ。
「電車が止まるたびに100人近くの観光客が降りてきて、踏切が一気に人であふれます。その影響で車が通れなくなり、タクシーの運転手がイライラして、バンバンとクラクションを鳴らしまくったり……。あと警備員の方も、人によっては強めの口調で怒鳴っている姿を見かけます」
なぜこの踏切がここまで混雑するのか。住民によると、日本の交通ルールが外国人観光客に浸透していないことも要因の一つだという。
「観光ツアーのガイドさんも外国人だったりすることが多いんですが、歩行者が右側通行だって知らない人が多くて、来る側と帰る側の団体がすれ違いざまにぶつかってしまうんです。それがさらに渋滞を引き起こすんですよ。そこにさらに車も通るので、運転手もイライラしてクラクションを鳴らす、まさに悪循環ですね」
さらに驚いたのは、踏切が開いている間に線路内で記念撮影をする観光客の姿だ。実際、インタビュー中にも線路内でポーズをとる人が見受けられた。
さらに取材中、思わず目を疑うような場面にも遭遇した。
40~50代と思しき白人男性が、線路内に数歩足を踏み入れると、財布から小銭を取り出し、それを線路の上に置いたのだ。最初は記念撮影かその国特有のおまじないか何かと思ったが、男性は踏切の音が鳴るとそのまま立ち去り、小銭はその場に放置された。
あまりのことにあっけにとられてしまい、注意することもできなかった。
幸い、その後通過した電車は反対方向行きだったため、なにも起こることはなかった。踏切が再び開いたあと、筆者は急いで線路上の小銭を回収した。10円玉だった。もしこれが電車に弾かれて人混みの中へ飛んでいたら、下手すれば脱線でもしていたら──と思うと、ゾッとする。
なぜこのようなことをしたのだろうか。インタビュー中の地元住人も「なんのつもりでしょうね……」と困惑していた。小銭を置いた男性はその後すぐに人ごみに消えていったので、真相はわからない。
もちろん、すべての外国人観光客がマナー違反をしているわけではないし、日本人だって海外で問題を起こすことはある。ただ、それを理由にこうした問題を放置してよいはずもない。
世界的な観光地であり、日本の由緒正しき伝統を重んじる京都だからこそ、誰もが気持ちよく過ごせる工夫や、ともに守るべきルール作りが求められている。
取材・文・撮影/集英社オンライン編集部

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