「死んだほうがいい」進学校に入学したIQ136“天才女子高生”が高2で精神崩壊…いったいなぜ? 彼女が抱える“生きづらさ”の正体

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〈病院の仕事でミス連発→患者から次々とクレーム→うつ病を発症…国立大卒の高学歴看護師(20代)が、職場に適応できなかったワケ〉から続く
高学歴で知的レベルが高く、有名校や一流企業に所属しているのに、大学で周囲から孤立、職場ではまったく評価されない。空気が読めず、ミスを連発してしまう。将来を約束されたエリートだった彼ら彼女らに共通しているのは、「発達障害」を抱えているということだ。
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ここでは、精神科医の岩波明氏が、高学歴発達障害の人々の現状や、いかにして回復して社会復帰するかを提示した著書『高学歴発達障害 エリートたちの転落と再生』(文春新書)より一部を抜粋。IQ136と判定された優秀な知的能力を持つ女性の“特性”について紹介する。(全4回の4回目/はじめ から読む)
写真はイメージです maruco/イメージマート
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INさん(女性、初診時10代)が発達障害の専門外来を受診したのは高校2年生のときで、その時点では留年をして2回目の2年生をしていた。彼女はこれまで何か所か精神科の受診歴があり、入院も経験していた。診断としてはADHDがベースにあると考えられた。
INさんは子供のころから、感情的に不安定になりやすい傾向がみられたが、一方で人見知りをしないところがあり、知らない人にも平気で声をかけることがあった。小学校で友だちは普通にいたが、4年生のときに、男子からひどいいじめに遭った。日常的には授業に集中できないことが多く、片付けは苦手だったが、成績は良かった。また普段はおしゃべりで、つい言い過ぎて周囲の顰蹙を買うことがたびたびあった。
中学生の時には新しい友人もでき、部活動にも参加していたが、いじめに遭ったことなどをきっかけに、何度かリストカットをした。それでも成績は上位で、地元の進学校である県立高校に入学できた。INさんは高校時代の検査でIQ136と判定されており、優秀な知的能力を持っている人だった。
高校1年のときは、比較的うまくいっていた。吹奏楽部に入り、部活も楽しかった。2年生になり部活が多忙になるとともに、勉強の負担も増したことをきっかけに、体調が悪化し、朝起きられないことが多くなった。このため、学校をよく休むようになった。
また精神的にも不安定となり、高校2年の2学期、「本当は死にたくないのに、死んだほうがいいと思う気持ち」がふらっと出てしまい、ベランダから飛び降りようとしたところを父親に保護された。この直後、近隣の精神科に約2か月入院となっている。このため高校は留年になった。
2度目の高校2年生は、見るからにつらそうだった。本人は学校がきついとは言わなかったが、よく発熱して休んだ。発熱の原因ははっきりしなかった。家で両親、特に父親と衝突することが頻繁になった。父親は社会的な地位のある人で、広告会社の管理職だったが、多忙で彼女の話をしっかりと聞いてくれなかった。
専門外来を受診してからはADHDの治療薬と睡眠薬の処方を継続したが、「眠れない、悪夢をみる」という訴えが頻繁にみられた。処方を変更しても、彼女の訴えに変化はなかった。今から思えば、発熱も睡眠障害も学校と家庭のストレスが原因の症状だったと考えられる。発熱については総合病院の内科を受診したが、身体的な異常はみられなかった。
それでも高校の文化祭や修学旅行などの学校行事にはしっかり参加していたが、高2の3学期には疲弊してしまい、精神科に短期の入院となった。3週間ほどの入院であったが、退院後には登校できなくなった。そのため高校は退学し、別の通信制の高校に転校することを本人が決めた。通信制に移って精神的には安心した様子であったが、体調はなかなか改善しなかった。長い期間、原因不明の発熱と睡眠障害が持続した。

高校を卒業後、INさんは、夜間の美術系の専門学校に進学した。もともと興味のある分野であったことに加えて、夜間という点が幸いし、3年間継続して通学することができた。それでも体調は安定せず、夜間の悪夢と中途覚醒、疲労感などの訴えは続いていた。
彼女が本調子になったのは、専門学校を卒業して美術系の大学に進学してからのことである。授業は朝からあり、通学ができるかどうか周囲は心配したが、自ら進んで規則正しい生活を送るようになり、表情も生き生きとして大学生活を楽しめるようになった。まだ在学中であるが、単位を落とすことなく、勉強についても順調に経過している。
このINさんのケースは、本来は高校生の項目に記載するのが適切だったかもしれないが、高校在学時にメンタルダウンし、6~7年という長い経過の中で回復に至ったことからこの章に含めた。
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【厚生労働省のサイトで紹介している主な悩み相談窓口】
▼いのちの電話 0570-783-556(午前10時~午後10時)、0120-783-556(午後4時~同9時、毎月10日は午前8時~翌日午前8時)
▼こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556(対応の曜日・時間は都道府県により異なる)
▼よりそいホットライン 0120-279-338(24時間対応) 岩手、宮城、福島各県からは0120-279-226(24時間対応)
(岩波 明/文春新書)

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