「当院では、胃がんと大腸がんの内視鏡検査を専門に行っています。胃がんと大腸がんは自覚症状がほとんどなく、発見が遅れがち。40代、遅くとも50代になったら、必ず一度は内視鏡検査を受けることが大事です」
こう語るのは、順天堂大学消化器内科を経て寺井クリニックを営む寺井毅医師だ。
胃がん・大腸がんは、通常の検診だとバリウムを飲んでレントゲン検査を受けたり、便潜血検査を受けて済ませることが多い。あらかじめ食事制限などが必要な内視鏡検査は、ハードルが高いと感じる人も多いだろう。
一方で胃がん・大腸がんは、数あるがんの中でも罹患数あわせて年間25万人以上と、トップクラスに患者が多い。しかも女性の死亡数では、じつは大腸がんが最多なのである。
「便潜血検査は、肛門からの出血で陽性になることや、逆にがんがあっても見逃すことがあり、確実とはいえません。年配になってから便潜血で陽性になると、がんがかなり進行しているケースも少なくないのです」
内視鏡検査は、医師の力量の差が大きく出るといわれる。受診するときにまず見たいのは、病院に日本消化器内視鏡学会が認定する専門医資格の保有者や、有名病院での検査歴を十分に持つ医師がいるかどうかだ。
大きな病院では、かえってどんな医師が検査を担当するか予測できないので、寺井氏のようなベテラン専門医が直接検査してくれる、小規模なクリニックを選ぶのもひとつの手だろう。
内視鏡の技術も大きく進歩を遂げている。寺井氏が導入しているのが拡大内視鏡とNBI(狭帯域光観察)とよばれる技術だ。
拡大内視鏡はその名の通り、小さな病変やポリープを、瞬時に拡大して観察することができる。NBIとは、粘膜の表面を走る毛細血管を、強調して見ることができるシステムである。
「がんなどの病変では、そこだけ毛細血管が集まったように見えるため、肉眼では見逃してしまうような病変も、NBIだと見つけやすいのです。ここ数年は、こうした技術に加えて、AIのサポートでポリープが良性か悪性かを解析するシステムを使う病院も出てきています。
また初期のがんであれば、内視鏡検査でそのまま切除する内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)という手法が普及しています。さらには、胃や腸の一部の腫瘍で内視鏡全層切除術(EFTR)という手法も開発されてきています。
私がクリニックを開業してもうすぐ20年になりますが、内視鏡の技術は大きく進み、検査の質も上がったと実感しています」
おっくうがらずに、まずは内視鏡専門医がいる病院の扉を叩こう。検査を受けて、後悔することはきっとないはずだ。
「週刊現代」2025年2月22・3月1日合併号より
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