ずっと恨んでいた“毒親”は「アスペルガー症候群」だった…30代娘の告白「母親のせいで私の人生は…」

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対人関係を築く共感性や、コミュニケーション能力に難はあるもの、特定の分野に没頭すると、著しい能力を発揮する子ども。彼らの存在に気づいたのは、オーストリア人の小児科医・ハンス・アスペルガーだった。彼の名前にちなみ、このような特性は後年、アスペルガー症候群と名付けられた。アインシュタインら世界的な偉人もアスペルガー症候群の傾向があったと言われている。
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発達障害の臨床経験が豊富な医師・宮尾益知氏は『発達障害と人間関係 カサンドラ症候群にならないために』(講談社現代新書)において、「アスペルガー症候群の罹患率は68人に1人(1.46%)とも報告され、日本の人口にあてはめると180万人以上、世界の人口では一億人以上もいる計算になります」と彼らがそれほど少数ではないことを指摘している。
宮尾氏は『発達障害の夫に振り回されないために カサンドラのお母さんの悩みを解決する本』(河出書房新社)において、アスペルガー症候群を「社会性の障害」「コミュニケーションの障害」「こだわり行動」という三つの特性があると定義している。
具体例をあげてみよう。・一方的に話す・相手の表情が読み取れない・こだわりが強く、自分の言うことが正しいと思っている。・自分だけのルールを周囲におしつける・思い通りにならないとパニックを起こす・金銭トラブルに巻き込まれることが多い・電話を聞きながら、メモが取れない
上記の特徴は、彼らの特性に由来するものであって、決して悪意があっての行動ではない。しかし、これらの行動が彼らの特性によってなされていることを知らない人の立場から考えてみると、そういう仕打ちが繰り返されれば傷つくし、場合によっては心身のバランスを崩してもおかしくはないだろう。「カサンドラ症候群」とはアスペルガー症候群の人と密に接した場合、情緒的なやりとりの欠乏に疲弊し、その影響が精神的・身体的に表れることがある。主なものとして、抑うつ、パニック障害、睡眠障害、激しい自己否定、自己評価の低下があるが、これらを英国の心理学者、マクシーン・アストンはカサンドラ症候群と名付けた。カサンドラ症候群は病名ではなく、“状態”であるが、この状態から脱するのは簡単なことではない。前出・宮尾氏は「カサンドラ状態からの回復は、治療のみによって達成しうるものではない、ということです。その症状は、抑うつ症状、パニック症状などさまざまですが、それらをなくすことが必ずしもゴールとは言えないからです」と心身の不調を投薬治療で解消することはできても、それですべてが解決とはいかないカサンドラ症候群の難しさについて解説している。 離婚して配偶者と離れればカサンドラ症候群から脱することができるだろうと思う方もいるだろうが、取材を重ねていくと、離婚したのにも関わらず、カサンドラ症候群がずっと続いている人もいるし、離婚後の新しいパートナーがまたアスペルガー症候群だったというケースもあり、カサンドラ症候群がアスペルガー症候群の人の特性によってもたらされるとは言いきれない複雑さを示している。接する側がどうすべきか発達障害であろうとなかろうと、他人に全く迷惑をかけずに生きることは不可能だろう。その際に求められるのは、相互理解と歩み寄りではないだろうか。発達にデコボコがある子どもむけ番組『でこぼこポン!』(Eテレ)、ネットフリックスで配信中の自閉症スペクトラムの女性弁護士の成長を描いた韓国ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』は、多くの視聴者を得ている。彼らを理解しようという動きが進みつつあるが、彼らと接する側はどうすべきなのか、接する側が困ったときや負担を感じた時にどのようにすべきかについてのサポートが手薄いように感じている。本稿はカサンドラ症候群に陥り、そこから立ち直った人たちの体験談から、彼らに寄り添い、脱カサンドラのヒントとなるキーワードを提案していくことを目的とする。アスペルガー症候群とカサンドラ症候群は表裏一体の関係だと私は考える。カサンドラ症候群の人に積極的なアプローチをしていくことは、カサンドラ症候群に悩む人はもちろん、アスペルガー症候群の人の人間関係及びパートナーシップの向上に寄与すると言えるのではないだろうか。なお、アスペルガー症候群という表記について、一言申し添えたい。かつて「アスペルガー症候群」「自閉症」「広汎性発達障害」「特定不能型広汎性発達障害」と呼ばれていた特性は、現在は「自閉症スペクトラム障害(ASD)」とひとくくりにされるようになった。そのため、アスペルガー症候群という表記は正確ではない。 しかし、カサンドラ症候群という言葉は、もともとアスペルガー症候群の配偶者の陥る抑うつ症状を指した言葉であることから、本稿ではあえてアスペルガー症候群という言葉を使用していく。トリマーとして犬の美容院を経営している直美さん(仮名・30代)は、ずっと親子関係に悩んできた。「うちの親はいわゆるネグレクトというか毒親と呼ばれる人たちで、私は生きづらさを抱えてきました。摂食障害や恋愛依存も経験し、おまえらのせいで、私の人生はこんなになってしまったとずっと恨んでいました。けれど、約10年前、摂食障害でかかっていた医師に『お母さんはアスペルガー症候群かもしれませんね』と指摘されたんです。それがきっかけで私は生き直すことができたと思います」毒親だと思っていたが、実はアスペルガー症候群だった、そんな親と精神的な決別を果たして、自分の人生を生きられるようになった直美さんの来し方は「カサンドラ症候群」からの立ち直りにも応用できると思われるので、次回『「子どもの頃、朝ごはんを食べたことないです」“アスペルガー症候群”の母親を持った30代娘が「うちって変だな」と思った小学生時代』よりご紹介していく。直美さんが、自分を取り戻すための長い長い旅のお話である。
上記の特徴は、彼らの特性に由来するものであって、決して悪意があっての行動ではない。しかし、これらの行動が彼らの特性によってなされていることを知らない人の立場から考えてみると、そういう仕打ちが繰り返されれば傷つくし、場合によっては心身のバランスを崩してもおかしくはないだろう。
アスペルガー症候群の人と密に接した場合、情緒的なやりとりの欠乏に疲弊し、その影響が精神的・身体的に表れることがある。主なものとして、抑うつ、パニック障害、睡眠障害、激しい自己否定、自己評価の低下があるが、これらを英国の心理学者、マクシーン・アストンはカサンドラ症候群と名付けた。
カサンドラ症候群は病名ではなく、“状態”であるが、この状態から脱するのは簡単なことではない。前出・宮尾氏は「カサンドラ状態からの回復は、治療のみによって達成しうるものではない、ということです。
その症状は、抑うつ症状、パニック症状などさまざまですが、それらをなくすことが必ずしもゴールとは言えないからです」と心身の不調を投薬治療で解消することはできても、それですべてが解決とはいかないカサンドラ症候群の難しさについて解説している。
離婚して配偶者と離れればカサンドラ症候群から脱することができるだろうと思う方もいるだろうが、取材を重ねていくと、離婚したのにも関わらず、カサンドラ症候群がずっと続いている人もいるし、離婚後の新しいパートナーがまたアスペルガー症候群だったというケースもあり、カサンドラ症候群がアスペルガー症候群の人の特性によってもたらされるとは言いきれない複雑さを示している。接する側がどうすべきか発達障害であろうとなかろうと、他人に全く迷惑をかけずに生きることは不可能だろう。その際に求められるのは、相互理解と歩み寄りではないだろうか。発達にデコボコがある子どもむけ番組『でこぼこポン!』(Eテレ)、ネットフリックスで配信中の自閉症スペクトラムの女性弁護士の成長を描いた韓国ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』は、多くの視聴者を得ている。彼らを理解しようという動きが進みつつあるが、彼らと接する側はどうすべきなのか、接する側が困ったときや負担を感じた時にどのようにすべきかについてのサポートが手薄いように感じている。本稿はカサンドラ症候群に陥り、そこから立ち直った人たちの体験談から、彼らに寄り添い、脱カサンドラのヒントとなるキーワードを提案していくことを目的とする。アスペルガー症候群とカサンドラ症候群は表裏一体の関係だと私は考える。カサンドラ症候群の人に積極的なアプローチをしていくことは、カサンドラ症候群に悩む人はもちろん、アスペルガー症候群の人の人間関係及びパートナーシップの向上に寄与すると言えるのではないだろうか。なお、アスペルガー症候群という表記について、一言申し添えたい。かつて「アスペルガー症候群」「自閉症」「広汎性発達障害」「特定不能型広汎性発達障害」と呼ばれていた特性は、現在は「自閉症スペクトラム障害(ASD)」とひとくくりにされるようになった。そのため、アスペルガー症候群という表記は正確ではない。 しかし、カサンドラ症候群という言葉は、もともとアスペルガー症候群の配偶者の陥る抑うつ症状を指した言葉であることから、本稿ではあえてアスペルガー症候群という言葉を使用していく。トリマーとして犬の美容院を経営している直美さん(仮名・30代)は、ずっと親子関係に悩んできた。「うちの親はいわゆるネグレクトというか毒親と呼ばれる人たちで、私は生きづらさを抱えてきました。摂食障害や恋愛依存も経験し、おまえらのせいで、私の人生はこんなになってしまったとずっと恨んでいました。けれど、約10年前、摂食障害でかかっていた医師に『お母さんはアスペルガー症候群かもしれませんね』と指摘されたんです。それがきっかけで私は生き直すことができたと思います」毒親だと思っていたが、実はアスペルガー症候群だった、そんな親と精神的な決別を果たして、自分の人生を生きられるようになった直美さんの来し方は「カサンドラ症候群」からの立ち直りにも応用できると思われるので、次回『「子どもの頃、朝ごはんを食べたことないです」“アスペルガー症候群”の母親を持った30代娘が「うちって変だな」と思った小学生時代』よりご紹介していく。直美さんが、自分を取り戻すための長い長い旅のお話である。
離婚して配偶者と離れればカサンドラ症候群から脱することができるだろうと思う方もいるだろうが、取材を重ねていくと、離婚したのにも関わらず、カサンドラ症候群がずっと続いている人もいるし、離婚後の新しいパートナーがまたアスペルガー症候群だったというケースもあり、カサンドラ症候群がアスペルガー症候群の人の特性によってもたらされるとは言いきれない複雑さを示している。
発達障害であろうとなかろうと、他人に全く迷惑をかけずに生きることは不可能だろう。その際に求められるのは、相互理解と歩み寄りではないだろうか。発達にデコボコがある子どもむけ番組『でこぼこポン!』(Eテレ)、ネットフリックスで配信中の自閉症スペクトラムの女性弁護士の成長を描いた韓国ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』は、多くの視聴者を得ている。
彼らを理解しようという動きが進みつつあるが、彼らと接する側はどうすべきなのか、接する側が困ったときや負担を感じた時にどのようにすべきかについてのサポートが手薄いように感じている。
本稿はカサンドラ症候群に陥り、そこから立ち直った人たちの体験談から、彼らに寄り添い、脱カサンドラのヒントとなるキーワードを提案していくことを目的とする。アスペルガー症候群とカサンドラ症候群は表裏一体の関係だと私は考える。カサンドラ症候群の人に積極的なアプローチをしていくことは、カサンドラ症候群に悩む人はもちろん、アスペルガー症候群の人の人間関係及びパートナーシップの向上に寄与すると言えるのではないだろうか。
なお、アスペルガー症候群という表記について、一言申し添えたい。かつて「アスペルガー症候群」「自閉症」「広汎性発達障害」「特定不能型広汎性発達障害」と呼ばれていた特性は、現在は「自閉症スペクトラム障害(ASD)」とひとくくりにされるようになった。そのため、アスペルガー症候群という表記は正確ではない。
しかし、カサンドラ症候群という言葉は、もともとアスペルガー症候群の配偶者の陥る抑うつ症状を指した言葉であることから、本稿ではあえてアスペルガー症候群という言葉を使用していく。トリマーとして犬の美容院を経営している直美さん(仮名・30代)は、ずっと親子関係に悩んできた。「うちの親はいわゆるネグレクトというか毒親と呼ばれる人たちで、私は生きづらさを抱えてきました。摂食障害や恋愛依存も経験し、おまえらのせいで、私の人生はこんなになってしまったとずっと恨んでいました。けれど、約10年前、摂食障害でかかっていた医師に『お母さんはアスペルガー症候群かもしれませんね』と指摘されたんです。それがきっかけで私は生き直すことができたと思います」毒親だと思っていたが、実はアスペルガー症候群だった、そんな親と精神的な決別を果たして、自分の人生を生きられるようになった直美さんの来し方は「カサンドラ症候群」からの立ち直りにも応用できると思われるので、次回『「子どもの頃、朝ごはんを食べたことないです」“アスペルガー症候群”の母親を持った30代娘が「うちって変だな」と思った小学生時代』よりご紹介していく。直美さんが、自分を取り戻すための長い長い旅のお話である。
しかし、カサンドラ症候群という言葉は、もともとアスペルガー症候群の配偶者の陥る抑うつ症状を指した言葉であることから、本稿ではあえてアスペルガー症候群という言葉を使用していく。
トリマーとして犬の美容院を経営している直美さん(仮名・30代)は、ずっと親子関係に悩んできた。
「うちの親はいわゆるネグレクトというか毒親と呼ばれる人たちで、私は生きづらさを抱えてきました。摂食障害や恋愛依存も経験し、おまえらのせいで、私の人生はこんなになってしまったとずっと恨んでいました。けれど、約10年前、摂食障害でかかっていた医師に『お母さんはアスペルガー症候群かもしれませんね』と指摘されたんです。それがきっかけで私は生き直すことができたと思います」
毒親だと思っていたが、実はアスペルガー症候群だった、そんな親と精神的な決別を果たして、自分の人生を生きられるようになった直美さんの来し方は「カサンドラ症候群」からの立ち直りにも応用できると思われるので、次回『「子どもの頃、朝ごはんを食べたことないです」“アスペルガー症候群”の母親を持った30代娘が「うちって変だな」と思った小学生時代』よりご紹介していく。直美さんが、自分を取り戻すための長い長い旅のお話である。

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