「自分たちの国でも取り入れたい!」給食の配膳や学級会の進行まで行う姿に驚愕…日本の小学校を見た海外からの“思いがけない反響”

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「よく働くね、責任感やチームワーク力があるね……アメリカで働き始めた当時、私が周りから受けた評価です。でもそれって私個人の能力というより“日本人”だからじゃないのかな、と思ったんです」
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現在公開中のドキュメンタリー映画『小学校~それは小さな社会~』。制作のきっかけは、本作の監督・編集を手がけた山崎エマさん自身のそんな経験だった。イギリス人の父、日本人の母を持ち、日本で生まれ育った山崎さん。しかし中学からはインターナショナルスクールに通い、大学もアメリカを選んだ。
「すると、私の“日本人”的なものが培われた場所は、6年間通った大阪の公立小学校しかないんですよね」
山崎エマ監督
日本人らしさの鍵は小学校にある。この仮説を裏付けるべく、都内のある小学校に1年間、密着したのが本作だ。
春、期待に胸を膨らませて入学式に臨む新1年生。それを「かわいい」と見守る6年生。撮影時期は2021年。緊急事態宣言によるオンライン授業の導入や林間学校の中止も経験しながら日常は続き、秋になれば運動会に向けて練習に励み、冬には次の新入生を迎える準備を始める。その中に、子どもたち、教師たちをめぐる小さなドラマがあり、成長の軌跡と感動がある――。映し出されるのは、そんな私たちがよく知る小学校の姿だ。コロナ禍という異常事態下ではあるものの、また地域差、年代差こそあれ、おそらく多くの日本人が同様の感慨をもって本作を観るだろう。

ところが、「思った以上の反響があったのは、むしろ海外です」と山崎さん。日本公開に先んじて行われた各国の映画祭で聞いたのは「自分たちの国でも、この教育方法を取り入れたい!」の声。なんと教育先進国として知られるフィンランドでは、上映が20館に拡大、4カ月間のロングランを記録するほどの評判に。
「例えば、教室の掃除に始まって、給食の配膳や学級会の進行まで子どもたちだけで行うことに驚いたと。私たちにとってはごくありふれた光景がとても新鮮なのだそうです」

さらにカメラは、困っている級友に進んで手を貸し、目標達成に向けては教師も一緒になって取り組む姿も捉える。それを“個の尊重と他者への思いやりの両立”という新たな教育課題に頭を悩ませる北欧の教育者たちは大きなヒントと受け止めているという。
「ほかにも、『これを観て日本人のことがやっとわかった気がする』と言ってくれた人もいました。海外で日本といえば、ニンジャ、スシ、アニメ。それはそれでいいですが(笑)、もっと本質的で根本的なことを伝える機会になっているならうれしいですね」
やまざきえま/兵庫県生まれ。19歳で渡米、ニューヨーク大学で映像制作を学び、現在は東京を拠点にドキュメンタリー監督として活動。代表作は、『モンキービジネス:おさるのジョージ著者の大冒険』(17)、『甲子園:フィールド・オブ・ドリームス』(19)。ほかにNHKで『ETV特集』『ノーナレ』『BS1スペシャル』のディレクター、エディターも務める。
映画『小学校~それは小さな社会~』 (全国順次公開中)https://shogakko-film.com/
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年12月26日号)

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