ごめん、母さん…年金10万円・シニア向けマンションで楽しく暮らす〈75歳母〉だったが、余裕の老後を狂わせる〈48歳・ひとり息子〉が伝えた「残酷な現実」

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日本における持ち家率は6割。高齢者になると8~9割となります。ただ夢のマイホームに、そのまま住み続けられるかといえば、高齢者には難しい部分も。建て替えか、それとも住み替えか……難しい選択です。
母親(75歳)が5年前よりシニア向け分譲マンションに入居しているという斉藤誠さん(仮名・48歳)。
――母が70代となり、今の実家では高齢のひとり暮らしが大変そう……建て替えるか、それとも住み替えるか検討しました
ベンチャーサポートグループ株式会社が60歳以上の男女を対象に行った『シニアの住み替えに対する意識調査』によると、住み替えを検討している人が多いのは「65歳以上~70歳未満」で41.3%。住み替えの検討理由として最も多かったのが「家が老朽化しているため」で16.0%。「住宅設備が古く、バリアフリー化されていないため」15.5%と続きます。また住み替えを検討するうえでの懸念点としては、「希望する物件が見つかるかどうか」が最多で31.6%。「住み替え費用の捻出」が25.6%と続きます。
斉藤さん親子が最終的に決めたのは、シニア向け分譲マンションへの住み替え。シニア向け分譲マンションは、 高齢者が生活しやすいように配慮されたバリアフリー化された分譲マンション。老人ホームなどの福祉施設とは異なり、 購入後、入居者の所有財産になり、所有権を売却したり、譲渡したり、賃貸に出したりと自由に行うことができます。
シニア向け分譲マンションの対象となるのは、自立=介護等を必要としていない高齢者。年齢の条件は物件により異なりますが、60歳以上ということが多いようです。
初期費用として購入費を払います。一般的な分譲マンションと同様、住宅ローンを利用して購入することも。入居後にかかる月額費用には管理費や修繕積立金、サービス料金などがかかります。食費は、定額で上乗せされていたり利用分だけかかったりなど施設により異なります。ローンを利用しているなら、さらにその返済分も月々の費用にプラスされます。
費用は初期費用として数千万円から。富裕層向けとなると億を超えます。さらに月額費用も10万~30万円程度と幅があり、またオプションでさらに上乗せ金額がかかることも。予算内で生活が可能か、しっかりと検討することが重要です。

シニア向け分譲マンションへの住み替えにあたり、実家は売却。母親の貯蓄と合わせて初期費用の5,000万円を工面しました。問題は月額費用。母親の収入は年金月10万円ほど。対し月額費用も10万円。しかしそこには食費等生活費は含まれていません。
――住み替えを機に、毎月10万円ほど、母親に仕送りすることにしたんです。それくらいあれば、余裕ある生活が送れるのではないかと考えて……
斉藤さんのサポートもあり、シニア向け分譲マンションでの暮らしは充実。入居者のなかにも仲のよい友人ができ、楽しい日々を過ごしているよう。母親からもたびたび「毎日が楽しいのは誠のおかげ。ありがとう」といわれ、親孝行ができてよかったと思っていたといいます。
しかし、そんな日々に終わりが訪れます。斉藤さんが勤めていた会社が業績不振に陥り、給与が大幅ダウン。自身の住宅ローンの返済や子どもの教育などを考慮すると、母親への仕送りはこれ以上不可能でした。
――ごめん、お母さん。これ以上は仕送りができない……
これを機に、斉藤さんの母親は退去&売却を決意。しばらく、誠にさんの家に厄介になることに。さらにつらい状況は続きます。マンションがなかなか売れず、誠さん一家との同居を解消できずにいるといいます。
シニア向け分譲マンションを売ろうとしても売れない……そんなケースがあります。まだ歴史の浅いシニア向け分譲マンション、中古市場が確立されていないことが売りにくくしている一因です。入居を維持するコストが通常のマンションよりも高いのも売却においてはネガティブな要素。今後、高齢化の進展とともにさらに増えていきそうなシニア向け分譲マンション。
一度購入・入居したからといって、住み続けられるとは限りません。出口戦略も視野に購入を検討することが重要です。

[参考資料]
ベンチャーサポートグループ『シニアの住み替えに対する意識調査』

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