元火葬場・葬儀屋職員の下駄華緒さんが、1万人のご遺体を見送ってきた経験を元に原作をつとめた『最期の火を灯す者 火葬場で働く僕の日常』(漫画:蓮古田二郎)が、重版を重ねるヒット作となっている。
10月31日には、最新刊となる『最期の火を灯す者 火葬場で働く僕の日常(4)』が発売された。その衝撃的な内容が、ネットを中心に話題沸騰中だ。
4巻目では一般人がほとんど知らない火葬場のディープな内容まで紹介されている。
その知られざる世界を前編記事『ガン患者の火葬中、ご遺体から飛び出した”絶対にありえないもの”…火葬場職員が「最も恐れる瞬間」』に続き、下駄さんに案内してもらった。
1940年代、ガンで亡くなった男性患者の火葬で、ご遺体から2体の赤ちゃんが飛び出すという事件が起きた。
男性のご遺体から赤ちゃんが飛び出すというのは「遺体の取り違え」としか考えられず、絶対的にあってはならないこと――。すぐに火を止めて警察が捜査したところ、その真相は驚くべきものだった。
ガンで亡くなったご遺体の男性の主治医は、研究熱心な、若く野心あふれる外科医だった。その男は研究のためにガンに侵された臓器を、遺族に内緒で勝手に摘出していたという。
その際、臓器を取り出してへこんでしまった腹部を見た遺族に怪しまれないよう、あろうことか近くにあったホルマリン漬けの赤ちゃんを詰めて縫い合わせたのだ。それがご遺体の膨張とともに飛び出してしまったのだという。
ベテラン職員・尾知さんはこの事件のことを知ったとき、火葬場職員の対応に感心したという。異変に気付いた際に、少しでも火を止めるのが遅れていれば、赤ちゃんの骨はもろく、あとかたもなく消えていたはずだ。そうなれば事件の真相は永遠に闇の中だった。職員の機転があったからこそ、真相を突き止めることができたのだ。
この事件は“赤ちゃん”が飛び出してくるという非常に特異なケースだったが、通常の火葬においても、職員たちが十分に気を付けているものがあるという。
「特に気を付けているのは、心臓のペースメーカーです。何がダメかというと、内臓されている電池。だから腕時計もダメなんです。火葬中にパーンと、銃声のようなものすごい音が鳴って破裂するので、慎重に対応しています」(下駄さん)
遺体の取り違えは絶対的なタブーだが、下駄さんによると、そのほかにも火葬場にはさまざまな決まりがある。たとえば、いったんご遺体を火葬炉に収めたあとは、「現世に引き戻す」ことにならないよう、二度と炉から出してはいけないというものだ。
「火葬炉に収める霊台車は、基本的にバック禁止なので一度で決めないといけません。そのために練習もするんですよ。
また、『霊柩車も前進のみで、Uターンしたり、バックしたりしてはいけない』という決まりもあります。経路についても、たとえば学校の前は通ってはいけないとか、各自治体や地域のルールがあったりします。そのため、葬儀会場から出棺して火葬場に行くまでのルートは、霊柩車の運転手も事前に決めていたりするんです。
ただ、入院中に家に帰りたかったけれども、叶わぬまま病院で亡くなった方などの場合には、ご自宅の近くまで寄るといった配慮をしてくれる葬儀屋さんもあります」(下駄さん)
【もっと読む】「人身事故」で亡くなったご遺体の火葬…その棺に納められていた「衝撃の中身」《火葬場職員が明かす》
ガン患者の火葬中、ご遺体から飛び出した「絶対にありえないもの」…現場は大パニック、火葬場職員が「最も恐れる瞬間」