市街地でも目撃されることが多くなったクマ。今年も全国でこれまでに75人の被害が報告されています。
こうしたなか、北海道の猟友会が、自治体からの駆除の要請に応じないことを検討していることがわかりました。
日々、クマと対峙しているのが猟友会。狩猟免許を持つ会員らが自治体と協力して活動し、要請を受けた際には、現場に駆け付け、駆除する仕組みになっています。
一体、何があったのでしょうか。
2018年8月、当時、砂川市で猟友会の支部長を務める池上治男さんは、市からの要請を受け、警察官と現場に同行し、クマを駆除します。ところが、翌年の4月、北海道の公安委員会が「弾丸が周囲の住宅5軒に到達する恐れがあった」として、猟銃の所持許可を取り消します。
池上さんは、これを不服とし、処分の取り消しを求めて、札幌地裁に提訴します。札幌地裁は、クマを駆除した現場の検証を実施。池上さんの主張が認められました。
これに対し、北海道側が控訴。池上さんは、高低差8メートルの斜面にいるクマに向かって発砲しましたが、札幌高裁は、先月18日、弾丸が周辺建物に到達する危険性があったと認定。池上さんは逆転敗訴しました。
この判決を受け、北海道猟友会は14日、自治体や警察がハンターの発砲の責任を負わないならば、“要請を拒否”することを検討するという事態になったのです。
岩見沢市で猟師歴50年の中路正一さんは、今回の判決について、こう話します。
現行の法律では、市街地でクマに向けて猟銃を使うことは原則禁止とされています。また、発砲には、同行した警察官の許可が必要で、その許可も“実際に危険が生じ、急を要する場合”に限られています。
環境省の検討会では、人的被害の可能性がある場合や、市街地での発砲を“猟師の判断”で行えるような方針案が出されています。
北海道の猟友会を取り巻く環境には、ほかにもハンターの報酬額をめぐる問題もあります。
奈井江町では、今年5月、報酬額が低いなどを理由に猟師がクマの駆除を辞退。町も猟友会への依頼を断念していました。
中路さんは、猟師を取り巻く環境を改善するには、まずは行政との関係の改善が必要だと指摘します。
街の人の声です。