「エレベーターの中でペティナイフを出して言うことを聞かせようとしたが、叫ばれたので刺した」今年8月、神戸のマンションで大手損保保険会社に勤める片山恵さん(24)を殺害した容疑で逮捕された谷本将志容疑者(36)は、兵庫県警の取り調べに対し、新たにそう供述しているという。
〈画像〉ベットに位牌、窓際には酒瓶、“谷やん”こと谷本容疑者の部屋
面識のない女性を2日間にわたってつけ回し、マンションのオートロックも女性の後に続くことで突破。2人きりになったエレベーター内で刃物で複数回刺して殺害した容疑がかけられているこの事件。
社会部記者が解説する。
「神戸市役所から約300m離れた9階建てマンションの住人から『エレベーター内で男が女性を羽交い締めにしている』と110番が入り、駆け付けた警察官が6階のエレベーター前で女性が倒れているのを発見。
肺に達する複数の刺し傷や、抵抗時にできる防御創があり、搬送後に死亡が確認された。谷本は新幹線に乗って逃走し、2日後に東京都奥多摩町で逮捕された」
8月に殺人容疑で送検され、9月からは鑑定留置が続いていた谷本容疑者。
「11月中旬に兵庫県警はストーカー規制法違反と邸宅侵入、銃刀法違反の容疑で彼を追送検した。谷本は『好みのタイプの女性と思って後をつけた』と話し、これらの容疑を認めている」(前同)
一方で殺人容疑については、冒頭のように刃物で刺した事実は認めながらも、『殺意を持っていたかはわからない』と供述しているという。
しかし谷本容疑者には、過去に2度、同様の事件を起こし逮捕されている。
「5年前、 神戸市内に住む女性につきまとい、女性の自宅マンション付近をうろつくなどしたことで、ストーカー規制法違反容疑などで県警に逮捕された。この時、谷本は罰金の略式命令を受けています。
また3年前には、当時23歳の女性に4か月間つきまとった後、女性がマンションのドアを開けた瞬間に部屋に押し入って女性の首を絞めるなどした殺人未遂の疑いで逮捕されている。いずれの女性も、谷本とは面識がなかったそうです」(在阪記者)
3年前の事件では、谷本容疑者が殺意を否認したこと、反省が考慮されたことで、傷害罪で懲役2年6カ月、執行猶予5年の判決を受けたが、判決文では、「再犯が強く危惧されると言わざるを得ない」とも言及されていた。
それから1年後、執行猶予中であるにもかかわらず、谷本はその事実を隠して新宿区の運送会社に就職した。この運送会社社長は事件直後、集英社オンラインの取材にこう語っていた。
「谷本君は、うちが就職情報誌に出した寮付きの社員募集の広告を見て面接に来ました。態度がよかったので即採用を決めました。以前、関西の会社で10年以上働いたと言うので『なんで関東に来たの?』とたずねると、『昔ヤンチャしてて悪い仲間と関係を絶ちたいので東京に来た』と。更生するなら手伝ってあげたいと思い採用しました」
“谷やん”の愛称で慕われ、休日は所属する都内の社会人バレーボールチームで、子どもたちの面倒をみるなど、社会に溶け込んで生活を送っていた谷本容疑者。
彼を知る飲食店の店主は、
「いまだに彼があんな事件を起こしたなんて、信じられない。“いい奴”という印象しかなかったからね」
と振り返る。初めて店に谷本容疑者が訪れたのは、事件のおよそ1年前だという。
「彼が勤めていた運送会社の上司に連れられてきたのが最初でした。以来、多い時では週1くらい来ていたけれど、いつも会社の人たちと一緒で、一人で飲みに来ることはなかったね。うちでは生ビールや緑茶ハイなんかを飲んでいたけど、酔って醜態をさらすようなことは一度もない。むしろ、店が混んでいる時なんかは飲み物や料理を運ぶのを手伝ってくれることもあった」(店主)
四畳半の社員寮に暮らし、日曜日と平日の週休2日で働き、月30万円くらいの給料を受け取っていたが、運送会社社長によると、金に困っているような素振りを見せることもあったという。
「入社から半年ほど後に、毎月5万円を前借りさせてほしいと言ってきたことがあった。ここの寮費は3万5千円で、彼はギャンブルもしないので、理由を聞くと『親の療養費に使い、サラ金から300万円くらいの借金がある』と。それで僕の顧問弁護士の勧めで自己破産手続きを始めましたが、本人のやる気がなく、結局自己破産には至らなかった」
一方で、「勤務態度はいたって真面目で取引先からのクレームもなかった」(同前)そうで、
「同僚が、『あいつは飲んでも仕事の話ばかりでつまらないんだ』と冗談交じりにこぼすくらい、とにかく仕事一筋という感じだった。あまり自分の話をしている様子はなかったが、『神戸の悪い奴と付き合いたくなくて上京したんだ』ということは言っていたね。今思えば、その悪い奴が本当に存在したのか怪しいものだけど……」(店主)
この飲み屋で谷本容疑者と知り合ったことをきっかけに、何度かヘアカットを担当したという美容室のオーナーもこう語る。
「彼はどちらかというと物静かで、自己主張をしないタイプ。飲みの場でちょっとした揉め事が起こった時にも、『いやいや、やめようよ』と仲裁してくれる“いい奴”という印象。どちらかというと、彼の周りのほうがヤンチャそうだったので、『本当に彼が?』と驚いた」
このオーナーが谷本容疑者を担当したのは、二度ほどだという。
「彼はもともとクセ毛で、頭頂部は長さを残しつつ、サイドや襟足を刈り上げるツーブロックのような髪型にしていた。毛量と長さを調整してすっきりしたいというのと、根本を脱色してほしいというオーダーで、ブリーチをしたと記憶しています。
施術中は、『最近飲んでる?』なんて、他愛ない会話を交わしていた。プライベートにはあまり踏み込まなかったけれど、飲み歩くのはいつも会社の人とだったし、女性関係はなさそうだなと感じていた」(同前)
これまで見知らぬ女性をターゲットに、犯罪を重ねてきた谷本容疑者。女性への強い執着心がうかがえるが、私生活では女性の影はなかったようだ。前出の店主もこう語る。
「実は今年に入ってから、うちで飲んだ後に会社の人たちと彼と一緒に何人かでガールズバーに行ったことがある。その時も彼は女性に対して積極的に話しかけることもなく、静かに飲んでいた。最後にうちに来たのは、事件の2週間ほど前。その時も、会社の人たちと4人くらいで来ていましたが、いつも通り楽しげに飲んでいて、特に変わった様子はなかったのですが――」
今回の事件の現場となったのは、3年前に殺人未遂事件を起こしたマンションのほど近く。彼はなぜこの場所にこだわり、再び凶行に及んだのか。谷本容疑者の勾留期限は12月11日まで。鑑定留置の結果を踏まえ起訴するかどうかが判断される。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班