連立を長らく組んできた自民党と公明党が“破談”。公明に代わって自民と連立することになった日本維新の会が「衆議院議員の定数1割削減」を連立の条件としたことはよく知られている。本当に維新が求めるようなスピードと規模が実現するのかは不透明だが、この大胆な条件の波紋は広がり続けている。
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公明党の佐藤英道幹事長代理(衆院比例北海道ブロック)は10月28日に会見し、次期衆院選で北海道4区からの立候補を見送る意向を表明。同区を地盤とする自民候補との選挙区調整を経て9月に出馬表明していたが、急転直下、自重した形だ。同日、群馬でも自公の県連関係者が会談したが、これまで同様の選挙協力にはハードルが高そうだ。
「公明は去年10月の衆院選で自民が候補者を立てない11小選挙区に候補者を擁立し、4小選挙区で議席を得ました。斉藤鉄夫代表(広島3区)も含まれます。が、連立離脱を踏まえ、このままの状態で次期衆院選を迎えた場合、小選挙区選で候補を立てることは難しい、無理だと見られています」
と、政治部デスク。
「連立から離脱した時点で公明と支持母体の創価学会は比例選にヒトモノカネを集中させる方針でした。が、自民が維新との間で合意した衆院議員の定数1割削減には虚を突かれた格好です」(同)
もちろん傷を負うのは自民側も同様である。
「衆院選の1小選挙区あたりの公明・学会票は5000から2万5000あります。東京が最も多く、公明と選挙協力してきた自民候補はその恩恵にあずかってきたということになります。26年間も一緒にやってきましたし、各地域、選挙区によって人間関係もありますから対応は千差万別になるでしょう」(同)
仮に自民と野党候補が対決するとして、公明票2万5000が“沈黙”するなら単純にその票が減るだけだが、野党候補に公明票が動くとなれば5万の票差が生まれることになる。
「公明票が動かないだけでも死活問題ですが、ライバル候補に一部が入るだけでもう勝ち目はない候補者は多いですね」(同)
このマイナスを自民党が埋めるには、「公明党が離れたから自民党を応援する」という層を掘り起こす必要がある。その層の厚みについては諸説あり、現状、不明である。実際に選挙をしてみないとわからないのは当然だろう。
ただ、中央での自公連立の解体が全国各地に波及して対立を生んでいるかというと、必ずしもそうではない。
「公明・学会は絶対に与党に戻りたいと考えています。よく言われるように大臣ポストが欲しいとかそういうことではありません。与党の一員でいることで地域や地元の議員や関係者が周囲から丁寧な扱いを受けられるという点が大事だと聞きました。地域の行事に呼ばれる・呼ばれない、呼ばれるとしたらどれくらい厚遇されるのかとか、嫌な目に遭わないかとか……。1つ1つは本当に細かなことなのですがね」(同)
そうした「下心」がある以上は、決定的な対立構造が生まれることはないのではないか、という。そもそもどこまで本心なのかはわからないが、公明の斉藤代表は《石破政権だったら連立離脱はなかった》などと朝日新聞のインタビューに答えている。これは政権が代わればまたくっつく可能性を示唆しているとも読める。
「学会中枢は斉藤氏ら執行部をまったくと言ってよいほど評価していませんが、ずっと野党のままでいいと考えていないのは間違いありません。ただし、与党に戻るのならば大義名分が必要。今後は引き続きそれを探す、あるいは作っていくことになるのでしょう」(同)
しかし常識的に考えれば、連立離脱時の理由がすべて消えるなどという状況はまず起こらない。従って、与党に戻るきっかけとしては、高市「自・維」政権がうまくいかなくなる局面が訪れることが前提となる。離婚相手が新しく築いた家庭が破綻することを望むような状況と言えるだろうか。もっとも、そうなったとして復縁が実現するかは別の話なのだが。
デイリー新潮編集部