埼玉県行田市で下水道管の点検中だった作業員4人がマンホール内に転落して死亡した事故で、点検前の排水作業によって汚水がかき混ぜられ、内部で有毒な硫化水素の濃度が急上昇したとみられることがわかった。
4人の死因は硫化水素中毒や中毒が原因の窒息と推測されることも判明。県警は現場の安全管理が十分だったか調べる方針。
市から点検を受注した土木会社「三栄管理興業」(さいたま市)が公表した資料によると、2日午前9時からポンプで排水を始めたところ硫化水素の濃度が急激に上がり、ガス検知器が鳴ったため、作業員を地上に避難させたという。
その後、検知器のアラームが止まり、排水状況を確認するため、はしごを伝ってマンホール内に入った作業員が転落。助けようとした3人も相次ぎ転落したとみられる。4人とも転落防止のための安全帯や酸欠を防ぐマスクを着用していなかった。4人の転落が確認された際、硫化水素の濃度は作業が許される国の基準の15倍超に達していた。
東京大学の加藤裕之特任准教授(下水道政策)は「現場の下水道の構造上、汚れがたまりやすく、硫化水素が発生しやすい。排水作業で水がかくはんされ、濃度が急激に上昇したことは十分考えられる」と分析。「マスクに酸素を送る機械や安全帯は現場には必須。安全管理上の問題が大きいと考えられる」と指摘した。
一方、県警によると、司法解剖の結果、2人は硫化水素による中毒死で、残る2人は中毒が原因で嘔吐(おうと)物を吸い込んだことによる窒息死とみられるという。