〈マック後継店に「ハローキティ」 ピンク色バーガー、SNS投稿次々―ロシア〉
時事通信社が運営するニュースサイト『JIJI.COM』が8月4日、サンリオ好きには見過ごせない記事を配信した。
ロシアから撤退したマクドナルドの後継店「フクースナ・イ・トーチカ(おいしい。それだけ)」で、「ハローキティ」の名を冠したハンバーガーが夏季限定で発売されたというのだ。
記事によると、ハローキティ・バーガーはバンズとチーズソースがピンク色。注文用タッチパネルの枠の上部にはハローキティの耳とリボンが描かれ、サイドには日本語で「かわいいでしょう?」と書かれたのぼり風のプレートが施されているらしい。
サンリオは’03年、モスクワにロシア初の「サンリオショップ」をオープン。’10年ごろからロシアでライセンス事業を展開し始めたようだ。
ロシアがウクライナに軍事侵攻して以降、日本はG7などの主要国と連携して経済制裁を科し、ロシア政府から「非友好国」に指定されている。侵攻が長期化する中、ロシアでの事業停止や撤退に踏み切った日本企業も多い。
それら企業の中に、サンリオは含まれていない。
『JIJI.COM』は「商品企画には、キャラクターのライセンス事業を続けるロシア企業が関わったとみられている」としている。
記事が配信された4日以降、SNSではサンリオファンの不満や非難の投稿が相次いでいる。
中でも目につくのが、「サンリオが許可したとは信じ難い」というニュアンスを含んだ前置きを添えた投稿だ。
そこで、ハローキティ・バーガー発売の経緯などをサンリオに文書で質問したところ、「コーポレートブランディング部 広報課」からメールで以下の返答があった。
〈欧州の事業を管轄する現地法人が、本件についてライセンス契約を結んでおります。
当社は、「One World, Connecting Smiles.」というビジョンのもと、一人でも多くの人を笑顔にし、世界中に幸せの輪を広げていくことを目指しております。
ライセンス事業では、サンリオのキャラクターを活用していただいて、グローバルで様々な企業や団体とビジネスを行っておりますが、個別のライセンス契約の詳細については、コメントを控えさせていただきます。〉
サンリオが今のロシアでキャラクターのライセンス契約を結ぶことに、ブランドイメージの低下や日本とその他の国々での売り上げ減少のリスクはないのか。ブランディングの専門家、松下一功氏は次のように話す。
「サンリオは『みんななかよく』という企業理念を掲げています。企業は理念を実現するために何をすべきか行動規範を定めるものなので、今回の判断は『みんななかよく』の理念に基づいて下されたのだろうと推測します。ロシアでのハローキティ・バーガーの発売は企業理念に反する行動ではないというのが、サンリオの判断なのでしょう。ブランドマネージメントからすると、間違った戦略ではありません。
ただ、世論には絶対、賛否がある。リスクに関しては、サンリオも考えていたはずです。そこで次の行動として、自分たちの考えを伝えるメッセージを出す必要があると思います。
サンリオがビジョンに掲げる『One World, Connecting Smiles.』には、ウクライナはもちろんロシアの子どもたちも含めた世界中の一人ひとりが笑顔であってほしいという思いが込められているわけですから、そこまでしっかり伝わる内容のメッセージを発信するべきです。商品を売るためではなく、企業としてのあり方を明確にするためにも。
このようなときに、リスクをできるだけ回避する対策を取っていかないと、ブランドの立ち位置がぐらつくことになってしまいます」
今回のサンリオからの返答には松下氏が指摘する「明確なメッセージ」は書かれていなかったが、ロシアの子どもたちの笑顔がその答えなのかもしれない。
取材・文:斉藤さゆり