NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』が話題だ。これまでの大河では描かれることの少なかった泰平の世の遊郭を真正面から取り上げ、江戸時代の吉原と花魁文化を詳細に伝えていて興味が尽きない。
その吉原と比肩する西の色街である神戸・福原に、伝説のソープ嬢がいる。89傳謄ップの豊乳、キュッとくびれた腰、美脚が眩しい、「FORTE(フォルテ)」所属の西ひとみ嬢(50)である。18歳で風俗の世界に飛び込んだこの道32年の大ベテランでありながら、20代前半のアイドル嬢たちを抑えて、現在も人気&売り上げランキングのトップを走り続けている。
西さんを「レジェンド」たらしめているのは、人気嬢という理由だけではない。彼女のもとには男性客だけでなく、嬢たちも訪ねてくる。風俗嬢に匠の技を伝授する「ソープの先生」でもあるのだ。 “教え子”ののべ人数は実に1万人以上。『べらぼう』の時代でたとえるなら、花魁の中の花魁と言えるだろう。
実際、西さんが伝授する技は古式ゆかしいものが多い。難易度別にリスト化しているのだが、「お山の大将」「鶴の恩返し」「表潜り」など典雅な響きがある。世俗的な言葉でなく、敢えて古典を引き継ぐ。日本風俗の王道をいく人なのである。
西さんがこの仕事を始めた地は中部地方最大のソープ街、金津園(岐阜県岐阜市)。ソープに入店してすぐ、講習があった。このときの体験が後の「先生」としての原点となっている。裸になった嬢が5~6人、部屋に集められ、先輩嬢が先生役を務めたのだが、これがきつかった。
「当時はお客さんを三つ指ついてお迎えしたのですが、手の置き方が少しでもずれていると先生に指先を踏まれました。覚えが悪い子は、後ろ髪を掴まれて湯船に頭を突っ込まれていました」
成績がふるわない嬢は、店長や男性店員を相手に個室でサービスを行うことが求められた。同僚相手に性技を施すのは嬢にとってこの上ない屈辱だ。実際の技術向上にはつながらず、制裁の意味あいが強い。男性店員の一存で行われることから「趣味講習」と忌み嫌われており、今でも一部の風俗店で行われているという。
西さんは優秀な嬢だった。講習の覚えも極めて早く、なんと入店2日目にして店から他の嬢の講習を依頼されたという。当時は深夜0時まで接客があり、営業終了後に同僚嬢への講習が始まる。しかもボランティアである。西さんは精神・肉体とも疲弊し、20代前半で金津園を出て福原に向かった。店外の嬢たちの講習も始めたのは30代後半のことである。
「『講習をやってください』というオファーが多かったから。私が講習で受けた屈辱やいじめを『私の代で終わらせたい』という思いもありました。きちっとした技術を身につけて趣味講習をされない嬢になってほしかった。やっかんで嫌がらせをしない嬢になってほしかったんです」
講習は2人とも水着になり、まず生徒のプレイを西さんが体験することから始まる。内容は完全にオーダーメイドで生徒によって変わる。
「その子が“素人っぽさ”でアピールしているのか、高級店で働くための基本と応用を学びたいのか。身長と体重、指の長さによっても講習メニューは変わります。最近は爪を伸ばしている子が多いので、その対策も伝授しています」
8月7日発売の『FRIDAY8月22・29日号』や有料版『FRIDAY GOLD』では、西さんが語る「伝説のソープ嬢」の極意と矜持、生徒との交流や今後について詳報している。
『FRIDAY』2025年8月22・29日合併号より
取材・文:神田憲行