コメ価格の急騰を食い止めるべく、政府は備蓄米の放出を続けている。小泉進次郎氏が農水大臣に就任後、入札から随意契約に切り替え4年前の2021年産“古古古米”まで放出し、価格も5キロあたり1800円程度になる見通しを示している。古古古米を試食した小泉氏は「率直に僕は、どれを食べてもおいしくいただける」と表現。国会では「特に急激な上がり方をしているのがお米。このお米を備蓄米で1回落ち着かせていく」と述べた。
【映像】10年前のコメ、炊いたらこうなった(実際の映像)
コメ価格は5月12~18日には5キロ・4285円(対前年同期+102.2%)まで急騰したが、実際に作る農家からすれば「正直うれしい」との本音も。「ABEMA Prime」ではコメ農家が現状をどう捉えているかを聞き取り、理想のコメ価格についてなどを議論した。
政府は3回の入札で約31万トンを放出したが、コメの価格は下がらなかった。小泉氏が農水大臣に就任後、随意契約に切り替え約30万トンの放出を決定。内訳は古古米(22年産)が約20万トン、古古古米(2021年産)が約10万トンだ。入札と合わせて、約60万トンが放出されることになったが、起業家・投資家の成田修造氏は「60万トンは国民消費の約1カ月分に過ぎない。緊急事態の短期勝負の措置」と語る。
コメ農家でSHOKURO代表の山倉慎二さんは、価格急騰の状況を「正直うれしい。ベースが上がる消費者はきついだろうなという思いはある」と率直な思いを述べ、備蓄米の効果についても「本当に一時的で、コメ価格が1800円に戻ることはない」という見解だ。「僕ら農家からすると、今までずっとコメ離れだったような気がするので、今さら感がすごい。みんなコメが好きなんだとちょっと安心した。(適正価格は)3000円から3500円くらい」。急な価格変動で騒ぎにはなっているが、ずっとコメを作り続けてきた側からすれば、各種メディアが連日取り上げるほど話題になっていること自体、うれしい思いがある。
JA稲敷で理事を務めた大塚則昭さんは、インバウンドとの関連を指摘する。政府は2018年度まで約50年に渡り減反政策によって、コメの生産を抑えてきた。一方で海外からの観光客はコロナ禍だった2020年から2022年を除いてずっと右肩上がり。2024年には過去最多を更新する3687万人を数え、2025年も1~3月で1000万人を超えるなど最多を更新するペースだ。大塚さんは「インバウンドのおかげで年間3500万人が来て、みんな日本食を食べに来る。農水省は(日本の人口)1億2000万人で考えたが、そこに3500万人も来るならコメがなくなるのは当然だ。旅行業界も儲かっているが、農業もインバウンドのおかげで潤った」と説明した。
成田氏はコロナ禍とインバウンドというアップダウンの影響を考えた。「海外の人からすれば、コメの価格が倍になろうが(海外で食べるよりも)相対的に安いからどんどん食べるので、寿司などでも価格が上がる現象が起きている。コロナ禍で一気に旅行者数が減り、コメの生産量も減って、農家も苦しくなった。ここから一気に旅行者数が回復してしまったので構造の急速な変化に耐えられず、価格が一気に跳ね上がった」と分析した。
今回の“米騒動”により改めてコメの価格、さらには生産者も減り続けてきたコメ農家について注目されることになった。一時的に価格が高騰しても、これが続かず再び価格が下がればまたコメ農家の生活が苦しくなることも予想される。EXIT・兼近大樹からは「コメは金儲けをしてはダメなのか。食べ物にしろ服にしろ、高級ブランドでめちゃくちゃ儲けている。なぜコメだけ儲けたらダメなのか」と率直な質問が飛んだ。
これに大塚さんは「人命を維持するのに日本としてはコメがベース。だからそれで金儲けをしちゃいけないという感覚がある」。山倉さんは「僕は全然、金儲けをしていいと思っている。ブランドとして売り、有機米などを作れば高く売れる」と、農業に接するものでも意見は食い違う。兼近も「僕の記憶ではずっと農家の方が苦しい思いをしているフェーズにある。人のために作っているのに農家が全然儲からない。それなのに価格が上がるとよくない、と。農家にも種類があって安いブランドがあってもいいし、高いブランドがあってもいい」と語った。
今回の米騒動についてはJAを問題視する声も多いが、大塚さんは「JAは日本全体の(コメの)4割弱しか集めていないので、6割は民間が売っている。その情報が入ってこないので(市場との)情報がずれる」と実情を語る。また成田氏も「JAが流通していないコメの方が価格が上がっている。要は中間業者が新米が出た瞬間に買い集めて、それを高く売って儲けている人たちがいる。JAはむしろ価格を下げに行ったり安定させに行った側。民間が入ったことで今回の価格破壊が起きているのは面白い構造で、農家がビジネスになってきているということだ」という見方も示していた。(『ABEMA Prime』より)