備蓄米を「5キロ2000円」から「5キロ1800円程度」に――。5月21日に就任したばかりの小泉進次郎・農林水産相がまたぶち上げた。30日から始まる備蓄米の随意契約は、26日に放出した古古米よりさらに古い古古古米であるから、安くなるのは当然という見方はある。このスピード感とワンフレーズで大衆にアピールする姿に、父・純一郎元首相を思い出した人もいるのでは……。
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そもそも小泉氏は2015年から2年間にわたり自民党農林部会長として農協改革に取り組んだ過去がある。「農業の“護送船団”を改革する」と舌鋒鋭くスタートしたが、最終的には骨抜きにされて終わった。あの時、改革できていれば、今のようなコメ高騰は起こらなかったのではないか、という声もある。
そんな小泉氏に石破茂首相はなぜ農相を任せたのだろうか。政治ジャーナリストの青山和弘氏は言う。
「コメ価格が高止まりする中、前任の江藤拓農相は『コメは買ったことがない』『売るほどある』などの発言で辞任。石破さんが新農相を選ぶ際、最初に頭に浮かんだのが小泉さんだったと思います」
石破首相にとって小泉氏は、昨年9月の自民党総裁選では敵となり、10月の総選挙では党の選挙対策委員長を務めるも自公で過半数に届かなかった責任を取って辞表を提出した人物である。
「実は江藤さんが失言をする直前、小泉さんは石破首相に直接電話をして、自民党の政治姿勢について『これまでのように業界団体のほうを向くのではなく、国民一人一人のほうを向く政治にモデルチェンジをしないと自民党は見捨てられてしまう』と力説したそうです。『その典型的な例が、農協など農業団体におもねるやり方であり、それが昨今のコメ問題に繋がっている』と。地方創生を訴える石破さんは農業を再建する重要性を分かっているはずですし、断固として農政改革を行うべきだと伝えたんです」(青山氏)
青山氏は石破首相に確認したという。
「小泉さんと話したあと石破さんは『自分が麻生内閣で農相を務めていた時、減反廃止を目指したが、党内の反対で頓挫してしまった。そのことが今、非常に悔やまれる。あの時、改革できていれば、コメ不足は起きなかったのではないか』と話していました。こうした経緯があったので、石破さんの頭の中には新農相に小泉さんがまず浮かんだと思います」
上手くいかなかった者同士が手を組んだというわけだ。小泉農相は就任早々“コメ担当大臣”を自称し、放出する備蓄米の価格を「5キロ2000円」、さらに「5キロ1800円程度」と打ち出した。彼の身内はどう思っているのか。小泉氏の叔父で兄・純一郎元首相を秘書として支えた小泉正也氏に聞いた。
「(大臣に)就任してからは、まだ進次郎とは連絡を取っていないよ。こういう時は大変だから、連絡するのを避けてるの」(小泉正也氏)
大臣就任についてどう思うか?
「本人にとっては以前の農林部会長の時に上手くいかなかったという思いがあっただろうし、だからこそ『いつかは』という思いはあっただろうね。参院選も迫っているから、党幹部にはインパクトのある人をもってこなきゃという意図もあったのでしょう」(同)
石破内閣のNo.2で農林族のドンである森山裕幹事長は「米価を下げればいいというもんじゃない」と発言するなど、早くも牽制するような動きを見せている。
「でも、今回は以前のようなことにはならないと思う。だって大臣だからね。自分のやりたい政策がやれる立場なんだから。これは僕の推測だけど、事前に総理や幹事長から、ある程度、了承を得た上で、就任が決まったと思うよ。おそらく『今回は忖度せずにやらせてもらいますよ』といった約束を交わしていると思う。だから就任から間もないにもかかわらず、コメについてツッコんだ方針を示しているんだよ。そうじゃなきゃ、こんな大変な時期に大臣なんて受けないよ」(同)
大臣は環境相に続いて2度目だが、総裁選に出馬した際、純一郎氏は「若すぎる」と言っていた。
「あれは結局、押し出される形だったから、断れなかったんだと思う。今度、兄と会うから話しますよ」(同)
妻の滝川クリステル氏も総裁選の出馬に反対していたようだ。
「僕はあんまり直接、そういうことは聞かないようにしているんだよね。大変だろうし、今は子育てに集中してもらってね」(同)
長男は来年から小学生だ。
「そう。でも、どこかを受験するのかとかもあんまり聞かないようにしているんだ。それぞれの家庭に任せてというか、勝手なことは言わないようにしている」(同)
進次郎一家の家庭は良好?
「もちろん! 農水大臣になる前は子供との時間も取れるようになって、子煩悩になったから。2人目も生まれてね。ちょくちょく料理作ったりもするらしいよ」(同)
大臣がオムツを替えたりとかも?
「そりゃ誰だってやることだよ。オレだってやったんだから」(同)
進次郎氏は子育てに厳しいのだろうか。
「そんなことはないと思う。僕は子供が2人いて、孝太郎と進次郎とは兄弟みたいに育ったし、子供たちに厳しくするなんてことは絶対なかったから。兄にも『子供と会える時間が少ないんだから、あまり(子供に)厳しいこと言わないで』と言っていたし、兄も『分かった』と。だから時間があったら家に帰って、子供らとキャッチボールして東京に戻ったり、そうやって時間を作っていたんだ」(同)
そうやって育てられた小泉農相だが、自民党内では厳しい対応も迫られるというのは前出の青山氏だ。
「夏の参院選までは党としても協調してコメ価格を下げることに尽力するでしょうが、選挙後はどうなるか。改革を推し進めようとすれば、小泉氏は必然的に森山幹事長とぶつからざるを得ないでしょう。石破首相が政権運営で森山さんを頼っている以上、これは大きな判断になります。森山さんに配慮してある程度妥協するのか、それとも石破さんと小泉さんが組んで森山さんとは決別する覚悟で抜本改革に進むのか。大きな分れ目になるでしょう」(青山氏)
石破内閣にとって正念場である。
デイリー新潮編集部