薫風吹き抜ける新緑の季節を迎えたいまも、兵庫県では県政の混乱が続く。6月には議会が始まるが、初日の知事あいさつに斎藤元彦知事(47)が立てるかは微妙な状況だという。再選を果たした昨秋の選挙戦に持ち上がった“買収疑惑”の捜査が、大詰めを迎えているからだ。
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「兵庫県警と神戸地検による捜査はすでに終盤。立件は5月中とみられている」
と言うのは地元紙記者。
経緯を簡単におさらいすると、斎藤知事が再選を果たした3日後、選挙戦で陣営の広報戦略を担った西宮市のPR会社「merchu(メルチュ)」の折田楓代表(33)が、ネット上に“SNS運用や広報全般を手がけた”旨を投稿した。続いて斎藤陣営が同社に71万5000円を支払っていた事実が明るみに。
これが公職選挙法(買収、被買収)違反に当たるとして、大学教授と弁護士が斎藤知事と折田氏を刑事告発。2月7日には、折田氏の自宅や会社に対する強制捜査が行われた。
「ガサ入れには県警だけでなく、地検まで加わった。地検の同行は異例なので、当初から立件は時間の問題とみられてきたのです」
そのXデーが「5月中」とされる根拠は、議会開幕の時期によるものだという。
「捜査当局は、およそ10日後に開幕する2月議会への影響を懸念してガサ入れの日を選んだ。6月議会が迫るいま、当局はその前に結論を出したい意向だといいます。議会の会期は10日ほどとみられますが、立件が遅れれば、それだけ県政の混乱が続きますからね」
当の折田氏は、告発を受けた後も県警が繰り返し求めたスマホの任意提出をかたくなに拒否し続けた。
「彼女がネットに投稿した内容は、言わば実行犯による“秘密の暴露”で、スマホはそれを裏付ける必須の証拠品でした。県警らの最大の狙いは折田氏のスマホやパソコンを押収することにあったんです」
立件に向けたパズルの“最後のピース”は、かくして埋められた。
買収事件は、買収する側とされる側が表裏一体の関係にあるのが特徴だ。
「折田氏が罪に問われれば、知事ないし陣営の誰かも同様に罪に問われることになる。県警の関係者によれば、捜査対象者には、知事はもとより選挙を仕切った幹部らも含まれているとか」
告発者の一人、神戸学院大学の上脇博之教授が言う。
「当初、折田氏の投稿には彼女と斎藤知事が打ち合わせをする様子が写った画像に加えて、〈とある日、株式会社merchuのオフィスに現れたのは、斎藤元彦さん。それが全ての始まりでした〉〈ご本人は私の提案を真剣に聞いてくださり、広報全般を任せていただくことになりました〉との記述があったはず。つまり、知事本人が契約に合意していたことがうかがい知れます」
斎藤知事が“契約は知らなかった”と主張しても、
「実務的な担当者が誰であれ、知事の了解や指示に基づく契約だったことは明らか。周知の通り、斎藤陣営は選挙戦で折田氏の方針に沿ってSNSを駆使していた。知事が“知らなかった”と言い訳をしても、それは通用しないと思います」
先の記者も、斎藤知事の行く末は厳しいとみる。
「折田氏は起訴猶予とされる可能性が高いですが、その場合も知事側がPR会社を買収したと法的に認定される。仮に知事側が同じ起訴猶予とされても6月議会は紛糾し、知事は辞職勧告や不信任決議案を突き付けられることでしょう」
劇的な復活劇から5カ月。知事は再び身をやつし、奈落に落ちることになるのか。
「週刊新潮」2025年5月1・8日号 掲載