2025年のゴールデンウイークも、あっという間に後半戦。5月の過ごしやすい気候の中で、家族や友人とバーベキューを計画している人もいるのではないでしょうか? バーベキューといえば「河川敷」を思い浮かべる人がいるかもしれませんが、「えっ、河川敷でやっていいんだっけ?」「普通にダメじゃない?」といった疑問の声や、「あの煙が本当に迷惑なんだよね……」「ゴミ残していくのマジでやめて」といった怒りの声など、迷惑を被る人たちの体験談も少なくありません。
芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士は、河川敷でのバーベキューについて「損害の賠償を請求できるケースもある」と指摘します。そもそも河川敷でバーベキューを行ってよいのかについても含め、法的観点から詳しく教えていただきました。
行楽シーズンにバーベキューをする場所として「河川敷」をイメージする人は多いと思います。しかし、実際に河川敷でバーベキューを行った場合、「法的な問題に関わる可能性がある」と知っている人は、そう多くないのではないでしょうか。
というのも、河川敷でバーベキューをすることは、法律および各自治体の条例によって禁止や制限をされている場合が多いのです。そのため、禁止や制限に従って、必要な場合には許可を得て行う必要があります。
バーベキューを禁止・制限している法律や条例としては、次のようなものが挙げられます。
・軽犯罪法・自然公園法・都市公園法・廃棄物処理法・消防法・火災予防条例
さらに、その他条例による規制、私有地の所有者による禁止などがあり、多くの規制や制限が設けられていることが分かると思います。
特に、都市部の煙臭や騒音、ゴミについては、近隣住民が迷惑を被るケースが少なくありません。そのため、各自治体の条例によって禁止や制限があり、条例で火気使用が禁止されている場所もあります。
こうした法律や条例に違反すると、懲役や罰金といったペナルティーが課せられる可能性もあります。利用場所や方法の制限、事前許可の要否について、その場所を管理している各自治体に確認してから利用する必要があるでしょう。
例として、東京都狛江市の条例では、多摩川河川敷環境保全区域におけるバーベキュー(火気を用いて食品を調理する行為)と花火が禁止されています。違反行為をしようとする者に対し、市長は中止を勧告できるとともに、違反者に対して「2万円以下の過料(行政罰)」を科すことが定められています。
この背景には、バーベキューの後に捨てられていくゴミや、夜中の騒音などによる苦情が後を絶たなかったこと、また河川敷に大量に不法投棄されたゴミが、悪臭やカラス発生の原因となっていることがあるとしています。
また、京都府では、鴨川等の一定の区域(河川敷を含む)において、河川法の占用許可がない限り、バーベキュー(火気を用いて食品を焼く行為)が条例で禁止されており、中止命令に従わない場合は5万円以下の罰金が科されることになっています。
では、河川敷の近隣の住民が、バーベキューが原因で迷惑を被った場合、法的手段を取ることはできるのか――。答えは「可能」です。
仮に、河川敷でのバーベキューが原因で、近隣住民が煙臭・騒音によって実際に損害を被り、その損害や因果関係を証明できる場合には、民法の「不法行為」に基づき、バーベキューを行った者に対して発生した損害の賠償を、理論的には請求することができます。ただし、裁判になった場合には、近隣住民が煙臭・騒音によって被った損害を証明することが非常に難しい(不可能な場合が多い)ので、法的な請求は非常に難しいでしょう。
なお、「自宅の庭でなら、バーベキューをしても問題ない」と考えている人も要注意です。
自宅の庭やベランダなど、敷地内でのバーベキューは一見、自由で無制限と思われますが、都市部や住宅密集地では、煙臭や火事の危険、騒音の問題が発生するので、市町村の条例で禁止されている場合が多いです。
そもそも、マンションなどでは管理組合が火の扱いを禁止している場合がほとんどでしょう。もし通報されてしまうと、軽犯罪法違反となる可能性もあるので、くれぐれも注意しましょう。