なんとか当初予算の年度内成立は死守したものの、首相自身の商品券問題もあり、内閣支持率は相変わらず低空飛行の石破政権。現在のところ、自民党内の石破おろしは不発で、党内からはこのまま参院選に突入することへの悲鳴も聞こえる。そんななか、永田町でささやかれることが多くなったのが、国民民主を自公の連立に取り込み、「玉木雄一郎首相」を誕生させる案だ。ただ、玉木氏の足元はもろく、首相になるには多くの壁があるようで……。
【画像】国民民主と自民のパイプ役になると噂される重要人物
看板政策の「103万円の壁」引き上げをめぐる協議が決裂し、当初予算案に反対するなど、自民とは距離ができていた国民民主だが、ここに来てふたたび急接近の気配を見せている。
まずは3月31日、企業・団体献金をめぐって、インターネット上の公開を条件に存続させることで自公と合意。
もともと国民民主は公明とともに、献金を受け取る側を政党本部と都道府県組織に限定する規制強化案を示していたが、自民の反発を受けて大幅に譲歩し、政党支部への寄付も容認する形へと転じた。
さらにガソリンの暫定税率廃止をめぐっても、立憲は国民民主や維新と連携して暫定税率廃止法案を提出したい考えだが、国民民主はあくまでも自公との協議を進める構えだ。
「自民としても、『103万円の壁』引き上げをめぐって溝ができた国民民主との関係を改善するチャンスが来ている。さらに、維新より国民民主を取り込んだほうが、国民民主と立憲、連合の関係にくさびを打ち込むことができて、選挙も戦いやすくなる」(自民党関係者)
さらに、首相補佐官として官邸入りし、3月31日付で退官した元国民民主の矢田稚子氏が再び国民民主から参院選に出て、改めて国民民主と政府・自民のパイプ役になるのでは、ともささやかれているというのだ。
こうしたなか、永田町内でささやかれ始めているのが、「玉木首相」案だ。
「支持率の低い石破首相に辞めてもらったところで、少数与党での政権運営ができる人はなかなかいない。そうしたなかで玉木氏を首相に担ぐシミュレーションがされている」(自民党関係者)
ポスト石破の面々を見ても、高市早苗前経済安保相はタカ派色が強く、幅広い支持は集めにくい。小泉進次郎元環境相はというと経験が浅く少数与党のかじ取りは難しい。
さらに、商品券問題が過去の首相にも飛び火したため岸田文雄前首相の再登板も考えづらい……と、衆目一致する候補がいないのが現状だ。
さらに、石破首相とは関係が悪い麻生太郎最高顧問が玉木氏と近いため、麻生氏がポスト石破として玉木氏を担ぐのでは、との見方も出ている。
ただ、玉木氏本人が本当に連立政権入りを現実的に考えているかというと、疑問符がつく。
「玉木氏本人も、側近の榛葉賀津也幹事長も、連立入りして担がれたところで自民に使い捨てされるのはわかっている。それよりも、少数与党の状況を生かし、自党の主張する政策をその都度飲ませ、注目を集めたほうが得策だ」(野党担当記者)
一方で、野党がまとまって首班指名で玉木氏を担ぐ、という案も取りざたされているが、現在のところこちらも実現可能性は高くない。
「支持率では国民民主>立憲になっているとはいえ、立憲は全国に国会議員がおり、夏の参院選でも現職を多数擁立する予定。一方、支持母体が重なる国民民主が、すでに立憲の候補者がいる選挙区に新人を擁立することは簡単ではない。国民民主が立憲に議席数で勝る日はまだまだ遠いだろう」(野党担当記者)
そうした状況下で、玉木氏を担ぐのは野党第一党のプライドが許さないというのだ。
「立憲幹部はこれまで玉木氏や国民民主について『小さなお山の大将でいたいだけ』『野党第一党の立憲のほうが、ニュースで取り上げられる時間も圧倒的に長い』と小ばかにしてきた。それなのにいきなり玉木氏が注目されるようになり、焦っている。これまで小ばかにしていた以上、玉木氏を担ぐなんて立憲執行部は考えられないはず」(立憲議員)
そもそも、玉木氏自身の足元も揺らいでおり、首相どころではないという現実もある。
まずは国民民主のガバナンスの問題だ。千葉県連では、昨年秋の衆院選で比例復活した岡野純子衆院議員らがパワハラを行なったとされる問題が勃発し、地方議員の離党が相次いだ。急速に党勢が拡大したゆえのひずみも生じているのだ。
そして玉木氏自身の女性問題では、相手の女性タレントがSNSを再開し「交際も宿泊もとっくに否定済み」と投稿するなど、蒸し返される懸念も出ている。
「今のところ、玉木氏の女性問題は支持率には影響せず、国民民主の議員らも玉木氏と女性タレントが密会していたワインバーで飲み会をするなど『ネタ』にしている雰囲気もある。ただ、相手の女性の動きによっては、参院選前に打撃となる可能性もある。しばらくは首相どころではないのでは」(野党担当記者)
支持率1%で「地下アイドル」と揶揄されていたのも今は昔となったが、一気に天下取りはやはり難しいか?
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班