顧客の貸金庫から現金や金塊などを盗んで三菱UFJ銀行を懲戒解雇になり、警視庁に窃盗容疑で逮捕された元行員の今村由香理容疑者(46)=東京都練馬区=が、移動先の別の支店の貸金庫から現金を盗んだとして再逮捕された。
(画像)「高い化粧品も値段を見ず買っていた…」仲間たちとポーズをとる“ゆかちー”こと今村容疑者
「練馬支店の貸金庫から、およそ2億8000万円相当の金塊を盗んだとして、逮捕・起訴されていた元支店長代理の今村容疑者は昨年10月、玉川支店に異動後にも貸金庫から現金1650万円を盗んだ疑いがもたれている。
今村容疑者は玉川支店で盗んだ金を以前の職場である練馬支店で盗んだ現金の補填にあてていた。貸金庫の出入りは練馬支店時代に持ち出したマスターキーを利用、マスクや帽子で変装し客を装い出入りしていた」(社会部記者)」
地元・練馬の繁華街では「ゆかちー」の愛称で知られた存在だった今村容疑者は“酒豪”として仲間内の間では有名だった。今村容疑者が約半年前まで2、3年の間、足繁く通っていた飲食店責任者は1月の逮捕当時取材でこう証言した
「練馬に近い人が飲み友達として集まろうという目的で始められたLINEのオープンチャットがあり、彼女はそこで『ゆかちー』と呼ばれていて、そこのメンバーとウチの店に来るようになったんです。
まだゆかちーさんが江古田支店にいるころで、後から『練馬支店に移ったから通いやすくなった』なんて言っていました。チャットには100人近く入っていて、その中で集まれる人が来るという感じで、多い時は15人ぐらいで飲みにきたこともありました。
彼女が三菱UFJの行員というのは俺も聞いていたし、そのオープンチャットの人達も知っていました」
今村容疑者は、きれいな飲み方をする酒豪だったという。
「週末が多かったけど、最初のころは週2回のペースで飲みに来ていました。お酒は好きで、酒豪と言えば酒豪です。ハイボールがほとんどで、テキーラを飲むこともありました。
酒量は多かったけど、暴れたり道端で寝こむようなことはなかった。ハイボールを6、7杯飲んだあたりから呂律が怪しくなって、カウンター席につっぷして寝てしまうことはありましたが、基本的には周囲を不快にさせる飲み方ではなく、明るく楽しく飲むタイプの方でしたね。
オープンチャットの人達は30代の方が多かったので、ゆかちーさんはアネゴ的な立ち位置で、周囲に話題を振ったり気を遣える一面もあったので、みんなから親しまれていましたよ」
そのうちオープンチャットのメンバーが同店で集まる機会は減ったが、「ゆかちー」は銀行の同僚を連れて通い続けた。
「ゆかちーさんはウチを気に入ってくれたのか、銀行の同僚、どちらかと言うと後輩ともよく来てくれていましたね。
その後はひとりで飲みに来ることが増えていくのですが、当時は仕事や家庭のことでストレスが溜まっているように見えました。今思えば銀行内で事件を起こしていたわけですから、同僚と一緒じゃ気疲れするだろうし、ひとりの方が気楽だったのかもしれませんね。
最後に来たのは半年ほど前で、それ以来まったく顔を見せなかったので何かあったのかと気にはなっていたんです。
そんななか、練馬支店の40代の女性が貸金庫から十数億盗んで解雇されたという記事が11月に出たので、もしかしてとゆかちーさんでは?と親しい知人たちとは話していました」
店主には、ゆかちーは酒好きだが、夫を愛する家庭人に見えたという。
「よく『旦那は出張が多いのよ』『また出張なの。出張先で何やってるかわかったもんじゃない』と話題にしていたので、出張に行くのが寂しいように見えました。それに一度浮気されたらしく『次に浮気したら絶対に許さない』とか愚痴ってたので、旦那さんのことが好きなのかなって。
報道ではFXと競馬にお金をつかったと言っていましたが、ウチで携帯をいじっているときも『〇〇を呼んだけど来れないみたい』と誰かを呼ぼうとしていた感じで、FXのチャートを見ていたようなこともなかったです。
オープンチャットの人達で集まっていたころに、誰かが競馬の話題を振った時に話しを合わせるような場面はありましたが、前のめりというより競馬を少し知っているのかな程度の印象です」
服装も地味で、カネ絡みの話題に食いつくようなことは皆無に近かった。
「ハイブランドを着ているということもないし、財布の中が札束でパンパンなんてこともない。唯一お金の話で記憶にあるのは、オープンチャットのメンバーにたまたま三菱UFJの方がいて、ゆかちーさんより役職が上だったそのかたに、『私より稼いでるんでしょうね』と冗談ぽく言っていたことだけですね。
お酒を飲むのも庶民的なところやカラオケスナック程度でした。確かに帰りはいつもタクシーでしたけど、自宅は近いですしね」
酒以外の唯一の趣味は、旅行だったようだ。
「旅行が好きで特に温泉好きでした。最後に聞いたときは、鬼怒川だったか日光の方面に行ってきたって話でしたね。2年前には名古屋の方にも行っていましたね。本当に温泉は好きで東北の方まで日帰りでも行っちゃうようなそんな人ですね。
旅行と言っても海外に行ったとかは聞いたことないし、国内ばかりで派手に遊んでいた感じはありませんでした。ただ、仲のいい人から『ゆかちーさんは高い化粧品でも値段を見ずに次々に買ってた』と聞いたことはあります。その人とは相当気心が知れていたんでしょうね、『今は貸金庫を管理してるんだ』という話も聞いたことがあると言っていました」
仕事の愚痴をこぼすこともなく、「ゆかちー」はいつも笑顔を絶やさなかったという。
「1人で飲みに来るようになって疲れているように見えたことはあっても、職場の文句を言うことはありませんでした。銀行のことは『長年真面目に仕事してきたんだ』と漏らしていることはありました。
それに埼玉県が出身で、『実家の父親が認知症になりかけていて面倒を見にいかなきゃいけなくて大変』とも言っていました。だから実際に疲れた様子にも見えたし、色々と大変なんだろうなとは思っていましたが……」
練馬支店時代には客の貸金庫から金塊合わせて約22キロ、総額約2億8000万円相当を盗んだとして、すでに2度逮捕されている今村容疑者。3度目の逮捕容疑は現金1650万円を盗んだ疑いだ。警視庁は、今村容疑者が貸金庫から金塊や現金あわせて17億円相当以上を盗んだとみて捜査を続けている。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班撮影/村上庄吾