1月4日、東京・新宿区で大学受験予備校「ニチガク」を運営する日本学力振興会が負債約1億円を抱え事業を停止、破産申請の準備に入ったことがわかった。これに伴い、ニチガクは受験シーズンの本格化を前にして突然の教室閉鎖となった。一体内部で、何が起きていたのか–。
【LINE入手】「無理です」チューターたちの悲痛な叫びも聞こえるLINE画面
突然の教室閉鎖となったニチガク(会社HPより)
予備校に通う生徒や保護者は、新宿の校舎の扉に掲示された「破産申し立て」についての張り紙を見て、初めて“教室閉鎖”を知ったという。
「校舎の扉には2枚の紙が張り出されていた。『債務の支払いに窮する状態』と題された4日付の1枚には、代理人弁護士名で教室閉鎖の理由を説明。もう1枚は生徒に向けて『ご迷惑をおかけ致します』と結んでいた。同校に通う生徒は破産が告げられた後、私物を整理しに教室にきていましたが、みな一様に不安げな表情でした」(社会部記者)
約40年の指導実績があるニチガク。専任講師による少人数制授業や個別指導、難関大学の現役生のチューター(個別指導者)による「弱点補強指導」が人気で、生徒数は一時、200人を超えることもあった。近年は少子化などの影響で生徒数は130人ほどに落ち込んでいたという。
「ここ数年で、生徒数が激減し、経営が苦しくなった。入塾生の減少が止まらない一方で、パソコンの導入や自習室の整備に多額の投資をしたのが重荷となり、資金難に陥ったとみられます。経営難のためか、昨年は2度も経営者が交代したそうです」(同前)
破産の兆候は昨年秋頃からあった。ニチガクで非常勤講師を務めていたA氏が語る。
「昨年5月頃から、給与の支払いが遅れるようになりました。最初のうちは、4、5日ほど遅れて振り込まれていましたが、次第に半月、1カ月と、振り込みが大幅に遅れるようになりました」
給与の振り込みの遅延が常態化していた「ニチガク」。給与未払いも発生していたようだ。
「人によってばらつきがあったそうです。例えば、河合塾から引き抜いた講師たちは遅配がそれほどでもなかったと聞きました。一方で、10月以降の給与が未払いになっている講師も多い。給与の支払い遅れは半年以上続いていたこともあり、正直、いつ破産してもおかしくないと思っていました。なので、1月の突然の教室閉鎖もあまり驚きませんでした」(同前)
ニチガクでチューターとしてアルバイトをしていたB氏もこう続ける。
「昨年12月9日、事務局からチューターのグループLINEに『12月10日支給の10月分アルバイト代金の支払いを12月30日に変更したい』という通達がありました。社員や講師への給与未払いについては知っていましたが、アルバイトへの給与の遅延は今までなかったので意外に思いました」
そのグループLINEは以下の通り。
〈金融機関からの融資等の交渉を進めております中で必要書類や条件面等で今少し調整に時間を要しますので、融資実行日が12月9日から12月30日に遅れてしまうことになってしまいました〉
しかし、予定されていた支給日の12月30日になってもアルバイト代は振り込まれなかった。
「12月30日になっても振り込まれなかったので、チューターの一人が、いつ振り込まれるのか催促のLINEを送ったのです。すると、事務局は『代表と連絡がとれないので確認できていない』と。いまだにアルバイト代は支払われていません」(B氏)
チューターの中には、有名大学に進学したニチガク出身者も多いという。チューターとして、生徒を支えてきた彼らもまた、給与未払い状態なのだ。そして、教室の閉鎖についても当日まで知らされていなかったという。
「生徒を通じて、閉鎖を知りました。生徒はみんな『これからどうしよう』『親になんて言えばいいのか……』と動揺していました」(同前)
受験本番直前の、突然の教室閉鎖に困惑が広がっている。
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