福岡県北九州市のマクドナルドで15歳の男女が刃物で殺傷された事件。5日後に捕まったのは43歳の無職男だった。面識のない中学生二人を無言で刺して逃げた凶悪犯は、どんな人生を歩んできたのか。
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【写真14枚】バスケットボールを手に体育館で…高校時代の「平原政徳」 一人で住んでいた「立派な一軒家」も
事件は2024年12月14日の夜8時25分ごろに起きた。福岡県北九州市小倉南区の「マクドナルド322徳力店」が現場である。
「福岡県警が男子生徒に対する殺人未遂容疑で逮捕、送検したのは平原政徳(ひらばる・まさのり)。店から直線距離で約900メートル、車で5分ほどの一軒家で一人暮らしをしていました」 と、社会部デスク。
「平原は容疑を認めたものの、取調べは難航しています。平原が“何度も同じことを聞くな!”などと変なタイミングでキレることが多く、肝心の動機が聞き出せていません」
キレるといえば、平原容疑者は事件前、自宅で騒音トラブルを繰り返していた。
家の中で拡声機を使って奇声を上げては“おいコラァ! なに考えよんか。くらすぞコラ、おお!?”などと外に向かって喚き散らす。軍歌や進軍ラッパを大音量で流すこともあった。
事件後、容疑者がこうした奇行によって地域で孤立していた様子は報じられている。一方で、地元で有数の資産家一族であることはあまり報じられていない。
容疑者宅から車で10分ほどの守恒(もりつね)という地域に、“平原一族の本家”がある。その近隣住民が語るには、
「平原さんの一族は守恒周辺の大地主として知られています。もともとこのあたりに大きな農地を持っていた家の一人娘が政徳の祖母で、そこに養子のような形で入ったのが祖父でした」
資産家であっても懸命に米や野菜を育てた祖父母。
「二人の息子が結婚し、4人の子どもをもうけた。その一番下が政徳です。上3人が女の子だったので、祖父は“4人目で跡継ぎとなる男の子ができた”と喜び、母親は“マー君”と呼んでかわいがっていました」
平原容疑者の父親は、守恒でガソリンスタンドを経営していた。
「しかし、政徳が中学生ぐらいのときに肝臓を悪くして亡くなりました。それでガソリンスタンドは閉め、跡地を複数のマンションやビルにした。祖父は、夫を喪った政徳の母親のために家を建てました。ここが、政徳が相続した一軒家です」
十数年前に祖父母が他界すると、
「一族は守恒の不動産をはじめ相当な財産を引き継ぎました。だから仕事せんでも生きていける。政徳もそう。守恒で中学校まで出て近くの私立高校を卒業したあとも、お金があるから定職に就かなかったと思う」
容疑者が長年通っていた理髪店のオーナーによれば、
「高校卒業後も時折来てくれて“派遣の仕事をしている”などと話していました。09年5月には“あした結婚式を挙げるから“と、顔そりのみで来店。“子どもも生まれる”とうれしそうにしていたので、デキ婚かと思ったのを覚えています」
妻子を得た平原容疑者は母親と暮らす一軒家から、付近のアパートに越した。アパート付近の住民は、平日の昼間、小学校に子どもを迎えに行く平原容疑者の姿を見ている。
5年ほど前に妻子と一軒家に戻るも、数年で離婚した。オーナーが続ける。
「23年1月の来店時の注文が“丸刈り3ミリ”。理由を尋ねても会話は成立せず、きょろきょろして落ち着きがない。まさに挙動不審でした。薬でもやっているのかと思った。完全に人が変わってしまっていました」
騒音トラブルなどの奇行も1年ほど前に始まっている。離婚でおかしくなったのか、おかしくなって離婚したのかは定かではない。
だが、資産家一族ゆえ、無職でも暮らせたのは事実。孤立した生活で、犯行への思いを募らせたのだろうか。
「週刊新潮」2025年1月2・9日号 掲載