主に女性が夫のある行動に対して「嫌だからやめてほしい」と伝えても「俺は大丈夫だから」などと言って、自分に都合がいいように考えて行為をやめてくれない現象を「嫌知らず」と呼ぶ。2023年、厚生労働省の人口動態統計速報によると離婚件数は18万7798 組で増加傾向にあり、前年と比べて4,695 組増えている。一方で、同居期間20年以上の夫婦の離婚件数は3万9812組で、この20年以上、4万組前後で高止まりしていることが判明。この結果から、相手への不満を抱きつつもそれに耐えられなくなり、熟年離婚に至るケースは多々あると考えられる。そんな中、夫に自分の気持ちを訴えかけるも、まるで理解されず長年我慢を強いられた人もいるようだ。
結婚して22年経つ専業主婦の陽子さん(仮名・50歳)。会社の上司だった夫(浩さん・仮名・55歳)は当時からコミュニケーション上手で人望も厚かった。結婚してからも、家事の大変さを労って優しくボディタッチをしてくれることも……。しかし、会話する中で日常的に頭を叩いたり、肩を押したりするようになって。陽子さんがやめるよう注意するも本人は「愛情表現だ」と言い張る。ある日、台所で食器を洗う陽子さんに向かって、風呂上りの浩さんがバスタオルを思い切り振り下した。強い痛みを訴えるも「もっとしてほしいんだろう」と言う夫を見て陽子さんは呆れるばかり。もう分かり合えることはないと諦めながら過ごしている。
記事前編は【「痛いからやめて」が通じない夫…その「衝撃の一言」に妻が「恐怖でゾッとした」と語るワケ】から。
「ある日、夫婦そろって姪の結婚式に呼ばれました。私が慣れないヒールを履いてヨタヨタ歩いていたら、突然夫が親戚の目の前で思いきり突き飛ばしてきたのです。あまりの勢いに派手に転んでしまい、大けがはしなかったものの軽く膝を擦りむいてしまって。結婚式が無事に終わってからなので、不幸中の幸いだったのですが……。思わず『なにするのよ! 危ないでしょ』『痛いからやめてって言っているじゃない』と声を荒らげてしまいました」
すると、夫は悪びれもせず「少し押しただけなのに大げさなんだよ」「俺ならこれくらいで転ばない」と逆ギレしたという。不穏な空気が漂う中、親戚からは「大丈夫?」「あの人ちょっとおかしいんじゃないの?」と心配されたのだとか。周りからの声で、夫の行動に我慢を重ねてきた陽子さんはふと我に返ったそう。
「このままでは何も変わらないと考えて、夫婦で話し合いの場を設けることにしました。そこで改めて『私はあなたの日常的な暴力行為によって、かなりの痛みを感じて非常に悲しい気持ちでいる』『あなたに傷つけられてとてもつらい』と率直な気持ちを伝えることに。続けて『もし、今後もあなたが態度を改善しないようなら、こちらは離婚も考えている』と夫の目をじっと見つめながら固い決意を示したのです。すると、彼は『嫌なことがあったら言ってほしかった』と信じられない言葉をつぶやきました」
今まで何度も嫌と言っているのに、聞く耳を持たず自分の都合のいいように考え続けた夫の発言にあ然とした陽子さん。ずっと彼の悪ふざけに耐えてきたものの、これを機に緊張の糸が切れて相手への気持ちが一気に冷めてしまったそう。もう一緒にはいられないと陽子さんは秘かに離婚を決意するに至った。
「独り立ちする資金がないので、夫には何も言わずにパートを探し始めました。結婚後すぐに会社を辞めたので、仕事にかなりブランクはあるけれど、時間さえかければいい職と巡り会えると思って。仕事さえ見つかれば、それを理由に家を不在にできるので、夫と顔を合わせなくていいことも、私には好都合だったのです」
結局、離婚話をチラつかせても夫の悪ふざけの癖が治ることはなかった。ただ自分が悪かったと本人も理解したようで、突き飛ばすほどのことはなくなったという。
「相変わらず、彼が強めのコミュニケーションを取ってくることに変わりはありません。毎日私の頭を叩くものの、すぐにハッとした様子で『ごめん』と謝ることもたまにあるぐらいです。でも、いくら言っても態度が改まらないことに正直うんざりしていて。なるべく顔を見たくないので、彼がリビングにいる時は、私は2階の自室にこもるようになりました」
幾度となく「痛いからやめてほしい」と夫の行動を注意してきた陽子さん。しかし、今回のように何も聞き入れることなく、数十年経ったところでやっと相手の本心に気づくというケースもあるようだ。夫婦として対等な立場であるために、相手の言葉にしっかり耳を傾けることも大事だろう。
「痛いからやめて」が通じない夫…その「衝撃の一言」に妻が「恐怖でゾッとした」と語るワケ