12月中旬。雪がチラつく札幌の繁華街ススキノで、観光客の外国人が鼻の下を伸ばして、カメラのフラッシュをたいていた。その先にあったのは、バニーガールの格好をした女性の尻だ。
【写真】バニー女性の「後ろ姿」が目を惹く外観の設計、犯人の男が犯行前に投稿していた「犯行予告」など
「ビューティフル」──客寄せのために、上半身部分にだけスモークを貼った窓ガラス越しに、後ろ姿のバニーが接客している様子が見える。店内では、ノリの良い若い女性が男性客とテキーラを飲みながら騒いでいた。あえて店内に階段を設置することで、階段を上っていくバニーの尻がよく見えるように設計しているようだ。
「事件はよく知りません。私たちの店は、昼営業と夜営業でメンバーは違うし、店舗も違うから被害に遭われた女性のことも知りません」(系列店で働く女性)
バニーガール姿の女性と飲める札幌の人気ガールズバー「ミリオン」は日常と変わらず、昼夜問わず営業を続けている。5店舗あるうちの「ススキノ駅前通本店」で悲惨な事件が発生したのは11月26日だ。
「この日の午後、男が突如、バケツに入ったガソリンのような液体を店内にばらまきライターで火をつけた。爆発に巻き込まれた男を含む男女計4人が搬送され、男は意識不明の重体です。男はやけどした20代女性・A子さんと同棲していたが、別れたばかりだった。
女性は元交際相手とトラブルになっており、警察に『暴力をふるわれている』などと相談していた。男は、この女性を巻き込もうとしたとみられています」(北海道事件担当記者)
近年、ガールズバーなど男性を接客する店舗で、勤務する女性と客のトラブルから事件に発展するケースは少なくない。今年5月には、東京都新宿区のタワーマンションの敷地内で、ガールズバーを経営していた女性(25)が、かつて客だった男に刺殺された。男は1000万円近くの大金をこの女性に貢いでいた。
「『ミリオン』で“自爆”した男はもともと有名な太客でした。作業着のような服をよく着ていますが、シャンパンを次々に開けてA子に相当貢いでいた。ひと晩で20万円くらい使うようなこともありました」(2人を知る関係者)
この関係者によると、2人は数年前から交際していて、A子さんの希望でダルメシアンとサモエドという2匹の犬を飼っていたという。たしかに男のものとみられるXのアカウントには2匹の犬の写真が掲載されている。
「男の暴力やストーカー気質などで、二人の関係が悪化して別居することになった際に犬の所有権でも揉めたようです。もともと2匹は男が飼っていましたが、ダルメシアンはA子さん、サモエドは男のものとなった。一緒に飼っていた犬を、それぞれが1匹ずつ面倒を見ていることで、男は復縁の望みをまだ持っていたのでしょう。
それが、事件の少し前にサモエドも、A子さん側に渡すことに決まった。そこから男は、復縁はもう二度とないと悟ったのか、ストーカー行為が悪化し、今回の事件につながったんです」
確かに男のもとみられるXのアカウントのプロフィールには「はんぺん いなくなりました。もう何もなくなった」と書かれている。
事件直前の投稿は犬に関するもの、応援していた兵庫県知事・斎藤元彦氏など政治に関するものと、FX投資での勝ち負けに関するものが目立つ。
「ここ数日で本当に死にたくなるほど辛いから時間を過ごしたけど、あることをキッカケに気持ちがスッキリしました」(原文ママ)(11/15 12:46)
「これからサモエド連れて帰る。ダルメシアンがいないのは悲しいけど、なんとかサモエドだけでも一緒に暮らせることになったから安心」(11/18 20:50)
一度は2匹ともA子さん側が引き取り、それからサモエドは自分のもとに戻ったが、再び、サモエドもA子さん側にいったということだろうか。
「男は、たしかに相当額をA子さんに貢いでいたが、一緒に関西に旅行に行きそこでも問題を起こすなどA子さんは我慢の限界だった。さらにDVもあり、警察も介入していたわけです。それで、店に行きA子さんを巻き込んで死のうとしたんでしょうが、身勝手すぎます」(前出・関係者)
数年間でどれほどの金額を使ったのかは不明だが、決して許される行為ではない。