かつて、渋谷はギャルにあふれていた。その象徴的な存在とも言えるのが、90年代に登場した「コギャル」だ。髪を茶色に染め、ルーズソックスを履くスタイルが高校生のあいだで大流行した。
1995年に雑誌『egg』が創刊されると、ギャルの存在感はさらに大きくなっていく。派手なメイクや露出度の高いファッションを基本に、ガングロやヤマンバといった個性的なジャンルも誕生。ギャルは間違いなく、一時代を築いた。
しかし現在、そんなギャルを街で見かける機会は明らかに減った。大きな要因の1つが、2000年代に巻き起こった清楚系ブームだ。黒髪にナチュラルメイクが主流となり、オセロさながら女性のトレンドは黒から白へと反転。大きな影響力を誇っていたギャル系雑誌の休刊が相次ぎ、聖地・渋谷の109からもギャル御用達ブランドは徐々に姿を消していった。
ギャルは絶滅危惧種–。
そんなイメージが世の中には広がっている。
ところが、いま再び、新たなギャルが生まれ、ジワジワと勢力を伸ばしつつある。それが「小学生ギャル」だ。華やかなりし頃のギャルのスタイルはそのままに、イズムの継承者の年齢は大きく下がった。このギャップが生み出すインパクトは抜群で、メディア露出も少しずつ増え始めている。
“ギャル復権”のうねりを生み出したのが、『KOGYARU(コギャル)』という新メディアだ。
2023年にスタートした同メディアはウェブ展開がメインで、YouTubeやTikTok、インスタグラムなどで小学生ギャルが登場するコンテンツを配信している。実は、運営元の株式会社エイチジェイは現在『egg』も手がけている(同誌は年2回発刊、基本はウェブ展開)。
小学生ギャルの勢いについて、『KOGYARU』プロデューサーの井場ひとみさんは次のように語る(以下、「」内は井場さん)。
「明らかに小学生ギャルの数は増えていますね。最初はストリートスナップを企画しても40人ほどしか集まりませんでしたが、いまは300人近く参加してくれる。公式インスタのフォロワー数も1年で44万人まで増えて、モデルたちが歌う『SHIRANKEDO』というオリジナルMVは420万回以上も再生されています。正直、この大きな反響には私も驚いています(笑)」
最近は、しまむらグループの「バースデイ」とのコラボも実施した。KOGYARU専属モデルのりゅあがアパレルブランド「LOVE BOAT(ラブボート)」の広告モデルとして登場すると、瞬く間に完売してしまうほどの人気ぶりだったという。
では、なぜ小学生ギャルがこれほどまでに熱を帯びてきたのか。そう問うと、井場さんはひとりの女の子の名前を口にした。じゅな–。彼女こそ令和の時代における小学生ギャルの“始祖”だ。そのカリスマ性は当時小学5年生ながら群を抜いていたという。
「『茨城に面白い子がいるよ』と紹介されたのが、じゅなでした。とにかくギャルが大好きな子で、ギャルメイクもばっちり決まっていた。試しに『egg』のYouTube撮影に呼んでみたら、とてつもない反響で。『小学生なのにギャルなの?』と衝撃的だったみたいです。その後も登場するたびに、100~200万といったすごい再生回数を叩き出していました」
そして、小学生ギャルに対する確かな熱狂を感じた井場さんは新メディアを会社に提案。前述の通り2023年に『KOGYARU』をスタートさせる。
ただ「メインターゲットは海外」と井場さんは明かす。
「海外の方はギャルを日本文化として捉えてくれていて、メイクやコーデを真似する動画もたくさんあがっています。濃いメイクと派手なファッションが珍しく、なおかつカワイイと思ってくれているみたいです。
『#GYARU』というハッシュタグもあるほどで、以前からすごくウケが良いですね。海外でも通用する『GYARU』という言葉と90年代に流行した『コギャル』、それから『子供ギャル』をかけて、媒体名も『KOGYARU』にしています」
実際、コンテンツは狙い通りに届いているようだ。例えば『KOGYARU』のインスタフォロワーの国別の内訳は、アメリカ、ブラジル、日本、メキシコ、タイの順。「私の国でイベントを開いてください」といったコメントもちらほらあるという。
だが、批判的なコメントがないわけではない。
「海外と日本では反応が大きく異なります。海外では児童ポルノの規制がかなり厳しいので、『そんなに肌を見せないほうがいい』『性的な目で見られるかもしれないよ』といった子供を心配するスタンスのコメントが多い印象です。
一方で日本の方からの批判コメントは、基本的に悪口ですね……。『日本の恥でしょ』『こんなことやってバカじゃない?』『親の顔が見てみたい』『この年齢でメイクしてるとか痛い』など。誹謗中傷のようなあまりに酷いコメントは私たち運営側が消しています」
このような逆風もあるなか、井場さんは次のように続ける。
「でも、どの子も誰かに強制されてギャルをやっているわけじゃない。みんな好きでやっているんです。もちろん毛染めやメイクをするので心配な部分はいろいろあるでしょう。だからこそどのモデルの親も、頭皮が傷まないように髪の毛を根元まで染めないようにしたり、こまめにスキンケアをしたりといった配慮を欠かしていません。
子どもたちが自らの意思でギャルというスタイルを選び、ご両親はそれを一生懸命応援している。批判されるような活動は一切していないと思っています」
つづく記事『《ギャルは絶滅危惧種》…ではなかった!いま“地方”で「小学生ギャル」が急増している「意外なワケ」』では、謎多き小学生ギャルの実態に迫る。
《ギャルは絶滅危惧種》…ではなかった!いま“地方”で「小学生ギャル」が急増している「意外なワケ」