「巫女さんの写真をバチバチ撮っている人がいる」
ある神社の関係者だという人によるXの投稿が注目を集めています。この投稿によると、許可なく巫女の女性を撮影する人がいるとのことで、女性たちは写真を撮られるのが嫌で巫女のアルバイトを辞めてしまうケースもあるといいます。
また、七五三で訪れた子どもを親族以外の第三者が勝手に撮影する人もいるそうで、「職員も参拝者も誰かの素材になる為にいる訳ではない」と苦言を呈しています。この投稿に対して、「神社はコスプレの撮影会場じゃない」などといった声が寄せられました。
神社で巫女や参拝者を無断で撮影するとどのような法的問題が生じるのでしょうか。僧侶でもある本間久雄弁護士に聞きました。
–神社で巫女や参拝者の人を無断で撮影したり、その写真をSNSに投稿する行為には、どのような法的な問題があるのでしょうか。
最高裁昭和44年12月10日判決は、「何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有」すると判示し、肖像権を認めました。神社で巫女や参拝者の人を無断で撮影すると、その人の肖像権を侵害することになります。
また、他人を無断で撮影し、SNSに投稿してしまうと、いつ、どこで、何をしているのかが全世界に知られてしまうので、その人のプライバシー権を侵害してしまうことになります。
–近年、神社仏閣では撮影を原則的に禁止する傾向があるように思います。神社仏閣側に、敷地内を撮影禁止にする権利はあるのでしょうか。
寺社仏閣には、その有する土地建物に関して、施設管理権(施設の管理者が所有する施設を包括的に管理する権利権限)があるため、施設管理権に基づいて敷地内を撮影禁止することができます。
–神社仏閣は他の施設とどのように異なり、なぜ撮影禁止にするところが増えているのでしょうか。
神社仏閣では、静謐な空間で神仏を拝むことが必要となります。自由に動画や写真の撮影ができるとなると、神仏を拝んでいる参拝者の心が乱されることにつながりかねません。
また、神社仏閣で撮影された動画や写真が無断で加工(例えば、仏像の顔をCG合成や生成AIで変えてしまう等)されて、それがSNSに投稿されてしまうと、神社仏閣の荘厳さが毀損されてしまうばかりか、信仰対象に対する冒涜につながりかねず、神社仏閣の信教の自由を脅かしてしまいます。
このような理由から、撮影禁止としている神社仏閣が増えているのではないかと思います。
【取材協力弁護士】本間 久雄(ほんま・ひさお)弁護士平成20年弁護士登録。東京大学法学部卒業・慶應義塾大学法科大学院卒業。宗教法人及び僧侶・寺族関係者に関する事件を多数取り扱う。著書に「弁護士実務に効く 判例にみる宗教法人の法律問題」(第一法規)などがある。事務所名:横浜関内法律事務所事務所URL:http://jiinhoumu.com/