日本の男性は蓮舫氏(56)を嫌い、彼女が東京都知事選に立候補を表明するとネット上で悪質なバッシングを繰り広げた──元AERA編集長でジャーナリストの浜田敬子氏の指摘が波紋を呼んでいる。7月7日投開票の都知事選は6月20日に告示され、蓮舫氏はJR中野駅前で第一声を上げた。果たして彼女は“女性差別”の被害者なのだろうか?
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浜田氏は「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系列・平日・8:00)のコメンテーターを務めている。そして19日の番組に出演した浜田氏は都知事選の最新状況が取り上げられると、現職の小池百合子氏(71)と蓮舫氏という女性2人が主要候補と報道されていることに触れ、まずは「感慨深い」とコメントした。
「女性がもっと政治参画していくべきだと思っている時に、これだけ大きな選挙で2人の女性候補が最終的には有力になるというのは、時代の変化を感じる」
その上で蓮舫氏に関し、「立候補する時と言った時の、特に男性たちがネット上で、ものすごくバッシングしているのを見た時になぜ、ここまでたたくのかと思った」と憤り、「ちょっとヒステリックなまでの反応に対し、強い違和感を抱いた」と男性を批判した。
この発言を日刊スポーツ電子版が19日に記事として配信すると(註)たちまちネット上では異論や批判が殺到した。担当記者が言う。
「浜田氏の発言に対するネット上での反論は、大きく分類して3種類のパターンがありました。1つ目は『SNSなどネット上では個人情報を明かしていない投稿者が少なくないのに、なぜ男性だと判断できたのか?』という疑問です。2つ目は『蓮舫氏に対する批判には根拠があり、女性差別とは関係がない』という反論。3つ目は『蓮舫氏を嫌いな女性も多く、男性に限定するのは間違っている』との指摘です」
ここでは3つの中から「女性も蓮舫氏が嫌い」という指摘を考えてみたい。なぜなら率直に言って蓮舫氏は、「女性が嫌いな女性政治家ランキング」や「女性が嫌いな女性ランキング」で常に上位にランクされるからだ。
これまで蓮舫氏は「女性に嫌われる女性」の代表的人物の一人だった。ところが浜田氏は「蓮舫氏が都知事選に立候補を表明すると、男性がバッシングした」と指摘した。これまでは「女性に嫌われる女性」として名を知られていたのに突然、「男性に嫌われる女性」という指摘が飛び出したことになる。これは正しい見解なのか、専門家に意見を訊いた。
選挙コーディネーターの鈴鹿久美子さんは“勝たせ屋”の異名を持つ。政治家育成、国会議員秘書の人材育成なども手がけながら、これまでコーディネーターとして100人以上の立候補者を当選させており、その勝率は88%だという。
「選挙戦略の根幹の一つに立候補者の経歴があります。当選するためには、候補者の人生にプラスの経歴が多すぎる場合は減らし、マイナスの経歴が少なければ増やして選挙戦を戦います。なぜプラスだけでなくマイナスの経歴も必要なのか、疑問に感じる方もいらっしゃるでしょう。例えば商品の宣伝はプラスの要素しか言及しません。通販番組でフライパンが紹介されれば、性能が良く、手入れは簡単で、価格も安いと長所を並び立てるほど、注文が殺到します。ところが人間の場合は違うのです」
具体的に“プラスの経歴ばかりの政治家”を考えてみよう。名家に生まれ、幼い時から神童と評判。名門の私立中高一貫校から東大に進学し、国家公務員試験1種を余裕でパスすると、キャリア官僚として財務省に入省。要職を歴任しながらハーバード大学にも留学し、政界に転身すると衆議院議員選挙でトップ当選──こんな人生を歩んできた政治家に対し、あなたは関心や好感を持つだろうか?
「心理学などで研究が積み重ねられた結果、“プラスの経歴ばかりの政治家”は有権者に支持されにくいことが分かっています。『完全無比の人生だ』と見せつけられると、有権者は候補者の間に精神的な距離を感じ、『自分にとっては遠い存在』と判断するからです。要するに候補者への興味を失ってしまうわけですが、積極的に反発する有権者もいます。その場合は完璧な経歴に対する嫉妬心や、エリート層に対する反感などが原因となります」(同・鈴鹿さん)
物故した首相経験者を見ても、“プラスの経歴”と“マイナスの経歴”が人気に影響を与えていることが分かる。東京帝国大学法学部から大蔵省に進んだ福田赳夫や宮澤喜一の信奉者は決して多くない。一方、「尋常小学校卒業」を売りにした田中角栄は今も人気を誇っている。
では蓮舫氏の経歴を見てみよう。父親は貿易商という裕福な家庭に生まれ、幼稚園から大学まで青山学院。キャンパスにはフェアレディZで通い、その美貌からクラリオンガールとして芸能界にデビュー。バラエティ番組の出演を足がかりに、ワイドショーや報道番組のMCを歴任。結婚と出産で仕事をセーブした後、2004年に参議院議員東京都選挙区で初当選して以来、4回連続当選──。
「蓮舫さんも典型的な“プラスの経歴ばかりの政治家”ですから、有権者には好感を持たれません。つまり女性の有権者でも『蓮舫さんが嫌い』という人はたくさんいるのです。もし『男性たちがネット上で、ものすごくバッシングしている』という指摘が、『男性の有権者だけが蓮舫さんを嫌っている』という意味ならば、間違っていると言わざるを得ません。より正確な表現をすれば、『男性でも女性でも、蓮舫さんを嫌いな有権者はたくさんいる』です。ちなみに小池さんも同じ“プラスの経歴ばかりの政治家”ですから、やはり有権者は蓮舫さんと同じ印象を持っていると思います」(同・鈴鹿さん)
今回の都知事選で「小池さんにも蓮舫さんにも投票したくない」と考えている有権者は多いだろう。2人が共に“プラスの経歴”だけを並べ立てていることも大きな影響を与えているのだ。
「もし蓮舫さんが“マイナスの経歴”、つまりご自身の苦労や失敗の苦しさなどを上手に取り入れれば、有権者の関心を引き寄せることが可能です。例えば蓮舫さんは少子化対策や『結婚できない若者の不安や負担を取り除く』と訴えています。そうした公約を“プラスの経歴”しかアピールしない立候補者に主張されても、距離を感じているので誰も聞く耳を持ちません。報道によると蓮舫さんは離婚の経験があり、ご子息に批判されたこともありました。人生の苦しさも経験したことをありのままに演説に取り入れ伝えることができたなら、たちまち有権者の印象はガラッと変わります」(同・鈴鹿さん)
蓮舫氏が「私は結婚に失敗しました。わが子から痛烈に批判されたこともあります」と自分から率直に語り、「こうした失敗を経験しているからこそ、私は結婚を望む都民をサポートしたい。少子化対策に尽力したい」と呼びかけるわけだ。
「『蓮舫さんは批判ばかり』との批判にも同じ方法で対応できます。蓮舫さんが『決して順風満帆の人生ではありませんでした。むしろ常に厳しく批判されてきたのは皆さんがご存知の通りです。それでも皆さんの支援で、ここまで頑張ってきました。私は失敗を糧にします。どうか皆さん、私に力を貸して下さい』と訴えたら、有権者のイメージは変わるのではないでしょうか。『自分の弱さも率直に語っている』と蓮舫さんに親近感を持つはずです。蓮舫さんが自分の弱点も率直に語るだけの度量を示すことができれば、小池さんを逆転して当選することは可能だと思います」(同・鈴鹿さん)
註:浜田敬子氏、蓮舫氏の都知事選出馬めぐり「特に男性のネット上でのバッシングに違和感感じた」(日刊スポーツ電子版:6月19日)
デイリー新潮編集部