今年の梅雨入りは、平年より遅い傾向です。梅雨入りすると早々に大雨になる可能性があります。今年も暑い夏になるでしょう。今年の梅雨から盛夏の天候は、エルニーニョ現象からラニーニャ現象に移行することが影響してきます。今後、太平洋赤道域の西側では海面水温が、過去30年で最も高いか、それに匹敵するほど高くなる予想です。
遅れる今年の梅雨 梅雨入り早々に大雨の可能性

今年は、沖縄と奄美で5月21日ごろ、平年より遅く梅雨入りしました。九州南部では、平年の梅雨入りは5月30日ごろですが、今年はまだ梅雨入りの発表がありません。九州北部地方から関東甲信の平年の梅雨入りは6月上旬、北陸と東北南部、東北北部は6月中旬です。

今年の梅雨入りは、ひと旬ほど遅れる傾向です。ただ、梅雨入り早々に、梅雨最盛期の大雨になる可能性があります。特に、沖縄や奄美、九州から近畿の太平洋側では、梅雨の期間の降水量は平年より多い予想です。本格的な雨の季節を迎える前に、側溝の掃除をして家の周りの水はけをよくするなど、大雨への備えをしておくとよいでしょう。
今年も暑い夏
今年も暑い夏になるでしょう。気象の夏は、6月から8月です。6月上旬は極端な暑さはなく、比較的過ごしやすい日が多いですが、広く長雨の季節を迎えるとみられる6月中旬になると、蒸し暑くなりそうです。梅雨が明け、盛夏到来となると、例年以上に暑さは厳しいでしょう。
遅い梅雨入り・梅雨入り早々大雨になるのは何故?

昨年の春、エルニーニョ現象が発生し、今年に入って最盛期を過ぎました。エルニーニョ現象が最盛期を迎えた翌年は、インド洋の海面水温が高くなります。今回は、インド洋の海面水温が高い状態はピークを過ぎていますが、夏の間も平年より高めの予想です。これが、梅雨入りの遅れと梅雨入り早々に大雨をもたらす原因の一つです。メカニズムをみてみると、インド洋の海面水温が高いと、そこで積乱雲が発生しやすくなります。インド洋で積乱雲の発生が多いと、そこから気圧が低いエリアが、地球の自転の影響で東へ広がります。この気圧が低いエリアに風が吹き込むことで、太平洋高気圧の西への張り出しが強くなります。一方、太平洋高気圧の北への張り出しは弱く、梅雨前線の北上が遅れています。梅雨前線が本州付近に停滞する6月中旬ごろになると、太平洋高気圧の縁に沿って、雨雲の元である暖かく湿った空気が、沖縄や奄美、西日本付近に流れ込みやすくなります。梅雨の期間、6月から7月は、暖かく湿った空気が流れ込みやすいだけでなく、偏西風が日本付近で平年より南を流れるため、梅雨前線の活動が活発になり、大雨になる可能性があります。
暑さをもたらす原因は? エルニーニョ現象からラニーニャ現象に移行
通常は偏西風が平年より南を流れる時は低温傾向になることが多いですが、今年の梅雨は違います。エルニーニョ現象が発生した翌年は、地球全体の温度が上昇することが知られています。これに加え、地球温暖化の影響が、今年の梅雨の期間も高温傾向になる原因です。今後、秋にかけてラニーニャ現象が発生する予想です。梅雨が明け、盛夏到来の頃になると、ラニーニャ現象の影響が顕著になるでしょう。太平洋高気圧は北へ張り出しを強め、偏西風は平年より北を流れるようになります。例年以上に厳しい暑さになる原因の一つです。
ラニーニャ現象 太平洋赤道域の西側の水温 過去30年で最高になる予想も

「ラニーニャ現象」が発生するのは、太平洋赤道域です。このあたりは貿易風と呼ばれる東風が吹いているため、通常、暖かい海水は西側のインドネシア付近に吹き寄せられる一方、東側の南米沖では、海の深い所から冷たい海水がわき上がっています。ただ、何らかの原因で東風が強まると、西側の暖かい海水が厚く蓄積するとともに、東側にわき上がる冷たい海水の勢いが強まり、南米沖の海面水温が通常より低くなります。このように、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて、海面水温が平年より低くなり、その状態が1年程度続く現象を「ラニーニャ現象」と呼びます。通常のラニーニャ現象では、太平洋赤道域の西側では、海面水温が平年より高くなります。今後、ラニーニャ現象の発生に伴い、太平洋赤道域の西側の海面水温は、過去30年で最も高くなる、もしくは過去の最高に匹敵するほど高くなる予想です。