春の運動会シーズンが到来していますが、お子さんが通う学校の運動会は、どんなスタイルで行われますか。新型コロナを経て、運動会のあり方は多様化が進んでいます。全校あげての一斉開催に戻った学校もあれば、学年別の分散開催を続けている学校も。ただ、どちらになっても保護者としては一長一短があるようで…「変化し続ける運動会」に、保護者たちの思いはいろいろ複雑なようです。
【グラフ】運動会の半日開催…保護者の3人に2人が「賛成」(調査結果を見る)
愛知県在住のSさんは小学6年生の保護者です。今年の運動会は全学年での一斉開催との通知がきました。
子どもが小学校2年~5年生の間は、全学年での運動会は行われず、学年ごとの体育発表会が行われていました。最終学年として迎えた、久々の全校あげての運動会、おそらく子どもたちは大勢の観客の声援を受けて一層頑張ることでしょう。
しかし、子どもたちの意気込みとは裏腹に、Sさんはため息を漏らします。これまではコロナ禍で家族の観覧人数が制限されていましたが、今年は3年ぶりの通常開催。義理の両親も子どもの活躍する姿を見たいと楽しみにしています。
しかし、そのためにSさんは朝から家族観覧席の場所取り競争をし、一人っ子の3人家族なのに、義理の両親の分を含めた5人分のお弁当作りをしなければなりません。ましてや雨で翌日に延期になったら…と思うと、とても憂鬱なのです。
都心に住むMさんは、小学校2年生と5年生の保護者です。
近年学区内にファミリー向けマンションが乱立したことで、急激に児童数が増えました。コンクリート製の校庭は狭く、コロナ前も運動会の保護者観覧は校舎のバルコニーで譲り合って参観するという形態でしたが、コロナ明けの今年も学年別分散開催、保護者完全入れ替え制(校庭での立ち見)との通知がありました。
子どもたちは自分たち学年の時間だけ校庭に出て競技をし、それ以外の学年の時間は、教室で授業をします。開会式と閉会式、応援合戦のみ、全校で行われますが、それらの保護者の観覧は、わが子が「応援団である」、「吹奏楽部である」、また「全校生徒の前で発表をする子どもの保護者のみ」と決められていて、それ以外は子どもの学年の演技時間にだけの観覧です。
保護者たちは子どもたちの出番にあわせて、その都度学校に出向きますが、Mさんは、二人の子どもがそれぞれが低学年・高学年のリレーの選手に選ばれているので、当日はそれぞれの演技+リレーの出番と、学校へ最低4往復しなければなりません。
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様変わりした令和の運動会のスタイルについて、学校の専門家はどのように見ているのでしょうか。公立小学校の教員をしていた学校コンサルタントの深見太一さんに伺いました。
――コロナ後の運動会で、学校活動にも変化はありましたか?
運動会の開催については、その学校がおかれた環境などの地域性や、季節や天気などの環境に左右され、学校ごとの対応は様々です。
――どのような運動会が望ましいとお考えですか?
先生方の働き方改革などの負担軽減も考慮しつつ、学校・保護者・地域の方々の状況も変化しています。時代に合わせた対応が必要だと思います。学校に行けていない子もいるので、その子たちも参加しやすい運動会とはどういうものかをもう一度考えるタイミングなのかもしれません。
――保護者の皆さんにエールをお願いします。
学校でもなるべく保護者のご負担を軽くできるよう、またPTAの方々や地域の方々のご意見も取り入れながら三位一体となって頑張っていることと思います。非日常である運動会は子どもたちにとっても特別なものです。一年に1回しかないイベントですし、保護者様もぜひ楽しんでいただけたらと思っています。基本は先生たちを応援するスタンスで、けれども思っていることや感じていることを溜め込むことなく、学校側とも対話していけるといいですね。
◆深見太一(ふかみ・たいち)学校コンサルタント 小学校教師を15年経験。クラス会議(教室の中で子どもたちが輪になって座り、悩み事を解決していく話し合いの方法)の先駆者として年間200名以上が参加しているセミナーを開催。教員向け講演会や教育講演など幅広く活動中。SNS総フォロワー数10,000人を超える。
◆くま ゆうこ ネットいじめ、ハラスメント専門家。株式会社マモル代表取締役社長。自身の強みであるWebマーケティングのノウハウを活かし、 いじめや組織のハラスメントを未然に防ぐシステム「マモレポ」を開発する傍ら、学校コンサルティング、いじめ・ハラスメントのセミナー登壇、執筆を行う。