2月14日の朝8時半すぎ。
警察署から1台の移送車が出てきた。後部座席に乗っているメガネにマスク姿の男は、終始うつむき顔を上げることはない。所属していた団体の口座から多額のカネを横領した、罪の重さに耐えかねているようだ。
警視庁本所署が業務上横領の疑いで逮捕したのは移送車でうつむいていた男ーー千葉県市川市に住む田中弘道容疑者(49)だ。田中容疑者は、育児のできない親から子どもを預かる「赤ちゃんポスト」の都内での設置を目指す社会福祉法人「賛育会」の元経理担当者。’17年4月から8月にかけ、「賛育会」の定期積立用口座から約1700万円を着服したとされる。
「田中容疑者は『賛育会』の口座から6回にわたり、自身の口座へ送金していたそうです。当時、経理担当は田中容疑者しかおらず横領金を『未払い金』の名目で記載していました。新しい経理担当者が、不自然なカネの流れに疑問を持ち上司に報告。事件が発覚したそうです。
’20年6月に『賛育会』を懲戒解雇された田中容疑者は『間違いありません』と犯行を認めています。金額については、驚きの供述をしているとか。『’08年頃から約10年間で1億円以上を横領しました』と」(全国紙社会部記者)
さらに驚かされるのは、横領金の使い道だ。田中容疑者は、警察の取り調べに対しこうも話しているという。
「遊んだキャバクラの代金に困っていました。住宅ローンの支払いにも使った」
社会福祉法人から1億円以上を着服し、キャバクラで豪遊していた田中容疑者。娯楽にカネをつぎ込み続け、犯行に歯止めをかけられなかったようだ。