日本では6割の夫婦が陥るといわれるセックスレス。「波風を立てないように生活することに限界を感じていた」と切ない心境を吐露するのは、紀子さん(仮名・40歳)。新婚早々に女性問題や価値観の違い、金銭感覚の不一致という深刻な課題が山積。そんななかで、突然レスが一気に解消した意外なきっかけとは?
交際してから半年が過ぎ、結婚を真剣に考え始めた頃に突然、妻子もちであるとカミングアウトをされ、正嫁との修羅場を乗り越えて結婚をした紀子さん。
3歳年下の夫は、アルバイト生活のまま、生活費を入れるどころか、お小遣いを無心したり、よそで浮気をしている様子。それでも紀子さんがめげなかったのは、夫を愛していたことと子どもが欲しいという気持ちが強かったからでした。
「惚れたものの弱みじゃないですが、そんな夫を結局許してしまうから、どんどん事態が悪化していったんですよね。『お前としても気持ちよくない』って言われたあと、2、3日経ってから、私から『どうしても子どもが欲しい、不妊治療でもいいから』っていう話をしました。そしたら『え? お金かかるじゃん』って言われたんです」と紀子さん。
夫の元嫁に慰謝料として自分の貯金から150万もの大金を支払い、節約しながら暮らしていても、夫の散財癖もあってなかなか思うように貯金はできていませんでした。しかし、紀子さんとしては30歳を迎える前になんとか第一子を…という気持ちが強かったといいます。
「同じ部署で産休をとった先輩がいて、出産時に大出血をして、悲しい結果になってしまったんです。出産は命がけっていうけれど、心のどこかで日本の病院ならなんとかなる! って甘く見ていた自分がいました。けれど、身近で悲しいことがあったことで、やはり体力のある若いうちに産みたいという思いが高まったんです。それで夫に『これはお金の問題じゃないから。性行為をしないなら体外受精をしたい』って話しました」
子どもが欲しいかといえば、すでに元嫁との間に子どものいる夫はそこまで欲しくなかったのかもしれません。けれど当時は自費負担のため多額のお金がかかる不妊治療をするかどうか…という議論においては、「絶対にやだ」というのが夫からの返答でした。
「よっぽど不妊治療にお金を使いたくない様子でした。論点が子どもの有無というより、『体外受精はお金かかるから性行為をします』という感じ。ついこの間、『お前としても気持ちよくない』って言っていたのに。だけど、そこで不貞腐れてもしょうがないし、それで私の願いが叶うならばなんでもいいやと投げやりな気持ちになりましたね」
こうして思いがけない形でレスが解消した紀子さん。排卵日が近づくと、愛はないけれど行為はするという状態が続きました。しかし、ある晩、まるで漫画のような事件が発生しました。
「生々しい話なんですが、行為の最中に夫が別の女性の名前をささやいたんです。『マキ…』って。私は全身が凍りつきました。夫も『あっ…』って自分の失敗に気がついた様子。どうしようって思っているうちに終わって、夫は何事もなかったかのように寝てしまいました」
紀子さんはびっくりしすぎて、眠れないまま朝になってしまったといいます。朝食を食べながら「あのさ、マキってだれ?」と聞いたものの、「なんの話?」とすっとぼけられてしまい、このときも追及せず、責めることもなく、おしまい。「惚れた弱みにつけ込まれ続けた顛末ですよ~」と明るく話す紀子さんですが、なんとこの日の行為からしばらくして、妊娠検査薬で陽性反応が出たのです。目標にしていた30歳が迫った29歳の春のことでした。
あの壮絶な略奪婚から、ようやくつかんだ幸せをかみしめた紀子さん。夫の女性問題、金銭感覚、価値観の違いという重大な課題がなにひとつ解決しないまま孤独な出産を迎えるお話はまた次回。