台湾の半導体製造大手「TSMC」日本国内初の工場完成に沸く熊本・菊陽町。「令和の黒船」進出が地方にもたらす光と影が見えてきた。
台湾の半導体製造大手「TSMC」の日本国内で初となる工場が完成した、熊本・菊陽町。
24日の開所式には、TSMCのマーク・リュウ会長や蒲島郁夫熊本県知事、斎藤健経産相などが出席し、岸田首相もビデオメッセージを送った。
岸田首相:わが国の半導体産業、ユーザー産業の双方にとって大きな1歩です。
完成した第1工場の敷地面積は東京ドーム4個分という広さ。ディレクターが工場の端から端を歩いてみると、8分半かかった。
この巨大工場が街にもたらしているのが、“半導体バブル”。
菊陽町で働く人:お給料も今までより、(時給が)1.5倍から2倍ぐらいは上がったかな。
「令和の黒船」が地方にとって、“光”となる一方、急激な変化にともなう影の部分も見えてきた。
3連休明けの26日朝、街にある無人駅の原水駅は、まるで東京並みの通勤ラッシュで混み合い、工場へ向かうバス乗り場にも大行列ができていた。
工場周辺の道路は大渋滞、車が進めない状態となっていた。
菊陽町の人:夕方とかもう全然動かない、毎日です。
もともとは広大な畑が広がっていた菊陽町。農家からは複雑な声が聞かれた。
工場周辺の畑でニンジンを作っている男性は…、
ニンジン農家・大地さん:作物を作る土地がなくなるけん。やっぱりすぐ借りようと思って、ここ借りたいとか言っても全然空いてないです。
畑を売却し、別の場所に畑を買おうとしたものの土地が見つからず、苦労したという。
さらにこう話す農家も。
大自然ファーム・本田さん:どいてくださいと言われるだけで、それ以降何かあるわけでもないですし、純粋にただ面積が減っていく。
今後の道路拡張などにより、ますます畑が減ってしまうという不安の声。
影響を受けているのは、農家だけではない。
地元住民:家賃とかがめちゃくちゃ上がって、もう住めないって、菊陽はと。その方は市内の方に行かれましたね。
工場周辺の家賃が上がり、やむを得ずほかの町に引っ越しをした人もいるという。
地元の不動産業者は、その上昇ぶりをこう話す。
アズマシティ開発第一営業本部・秋吉潤副本部長:実際ですね、土地の(価値が)どんどん上がっておりまして、弊社のこの場所も、4~5年前には坪単価約18万円で取得できてたんですけども、今50万を超えている。10年ほど前は、1DKの間取りが5万円台だった家賃が今、新築の家賃ですと7万円を超えてきてると。
土地の値段は2.5倍以上に高騰。いまや工場がある菊陽町の家賃は、熊本市よりも高くなっているという。
「令和の黒船」進出が街にもたらす“光と影”。今後の課題となりそう。(「イット!」2月26日放送より)