能登半島地震後、珠洲市を中心に個人で犬猫の保護活動をしているYoichi Saitoさん。そこには、被災した家族と一緒に避難所まで来たが、避難所の中には入れず、雪降る中、コンクリートの上に薄っぺらいむしろを敷いて繋がれている犬たちがいた。(現在、珠洲市には、ペットと一緒に避難できる避難所が開設されている。)
【写真】飼い主の老夫婦と別れ、東京に向かうジョジョちゃん
その中に1匹、ある夫婦が飼っている雑種の中型犬がいた。名前はジョジョちゃん。夫婦のうち、夫は無事だったが、奥さんは重症で、治療を受けるためヘリで病院に運ばれる予定になっていた。
「ご主人が私に、『もともと野良犬だった犬を飼っていた。野良に戻してくれ』と言ったのです。奥さんは、治療を受けても、しばらく介護が必要な容体だった。ご主人は、暮らしの立て直しと介護、両方を担って行かねばならず、いっぱいいっぱいだったようです。」(Saitoさん)
夫の「野良犬に戻す」という決断を聞いて、奥さんは反対した。野良犬の多い地域ではあったが、一度ペットとして飼った以上、気持ちは「家族と同じ」だった。
Saitoさんは夫の説得を試みたが、なかなか意志は変わらなかった。そこで、Saitoさんが夫婦が犬を飼えるようになるまで預かることにした。
「そのことを話すと、やっとご主人も納得してくれました。奥さんは涙を流して喜んでくれたそうです。その後、お二人でヘリに乗り、病院へ向かわれました。」

先行きも見通せず生きていくのもやっとという中、ペットの世話までは無理という人もいるだろう。避難所ではそれぞれのフードを融通し合う被災者の姿もあり、Saitoさんは100kgのドッグフードを被災地に持って行ったという。
「家族」として共に暮らす人が増えている今、ペットと一緒に避難できる「同行避難」を含め、一緒に暮らし続けられる支援や体制についても考えておくことが必要ではないか。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)