電車などで、スマホ操作をしている隣の人の肘がぶつかってきたり、肘が当たり続けるなどし不快な思いをしたことがある人は少なくないと思います。冬は厚着だったり、夏は直接肌が触れあったりします。ほとんどの場合は、我慢するか、自ら席を移動するか。中には、自分の肘などで押し返そうとすることを思い立つ人もいるでしょう。こうした行為が法的に問題あるのかなど、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。
Q.隣の人がスマホ操作で肘を突っ張る行為は法的に問題ないのでしょうか。横の人を窮屈にさせ、「座席占有権を侵害している」とはいえないのでしょうか。
牧野さん「確かに、常識的行動として道義的には問題がありますが、『座席占有権』を認めたり、その侵害を法的に保護している法律はないため、残念ながら『座席占有権を侵害している』とはいえません」
Q.ずばり、スマホを操作する乗客の肘が突っ張って自分の体に当たり続け、不快になったとき、肘を押し返すと暴行罪になってしまうのでしょうか。
牧野さん「暴行罪は、刑法208条で『暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料に処する』とあります。故意に『肘を押し返す』行為は、形式的には、『人の身体に対する不法な有形力の行使』として暴行にあたる可能性がありますが、実際には障害に至っていないこともあり客観的な証拠で証明することが難しいと思われます」
Q.例えば、座る位置を変えるふりをして、さりげなく肘を押し返した場合でも法的な問題は生じるのでしょうか。
牧野さん「故意に『肘を押し返す』行為である以上は、形式的には、『人の身体に対する不法な有形力の行使』として暴行にあたる可能性があります」
Q.スマホを操作する乗客の肘が突っ張って自分の体に当たり続けたとき、どのように対処すれば、法的にも問題にならないのでしょうか。
牧野さん「一時的なこととじっと我慢するか、(移動が可能な場合には)肘の突っ張りを避けるために所在場所を移動するか、あるいは、こちらでも同じ様にスマホ操作を自然にすることで相手に迷惑だと認識させる(その際に故意に押し返さない様にする必要があります)などが考えられると思います」
肘で押し返したりすると、逆上される可能性もあるため、なるべく避けましょう。このような時は、自分から席を移動するなどし、トラブルを回避するのがいいのかもしれません。