お金があったら教育費の不安はなくなると思っていませんか? 実は、まとまった貯蓄がある夫婦でも教育費の不安を抱えている方がたくさんいます。
そう指摘するのは、子育て世代のお金の悩みを日々解決している、1級ファイナンシャル・プランニング技能士の磯山裕樹さん。この記事では、教育費に不安を感じる親の現状と、実践すると「教育費の不安がなくなる」というポイントの1つを、磯山さんが詳しく解説します。
ソニー生命保険株式会社が実施した「子どもの教育資金に関する調査2023」では、75.4%の親が、教育費に不安を感じているというデータがあります。
注目すべきポイントは、子供が大学生になっても不安を感じている夫婦が多いことです。つまり、子育て中ずっと教育費の不安が続いているということです。
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実際に教育費の不安に悩まれてご相談に来られたAさん(仮名、以下同)の事例を見てみましょう。
Aさん30才、妻Bさん30歳、C君4歳、D君1歳の4人家族です。
Aさん、Bさんともに会社員で、年収はそれぞれ400万円、夫婦の貯蓄合計額は1000万円の状況です。Aさんは貯蓄が1000万円あっても不安に感じていました。
どうして子供の教育費が不安なのかお聞きすると、Aさんは「お金が原因で子供の選択肢を狭めたくないからです。そのためには、どのくらいお金を準備しておけばいいか分からなくて」と言われました。
ソニー生命保険株式会社が実施した「子どもの教育資金に関する調査2023」では、66.7%の親が、子どもの学力や学歴は教育費次第で決まると感じているというデータがあります。
多くの親が、教育費にどれだけお金をかけられるかが、子どもの学力や学歴と強く関係していると考えています。子供の将来は、子供の能力よりも親のお金の影響が大きいと認識しているということです。
僕は、Aさんに「どの親もお金が原因で選択肢を狭めたくないですよね。では、子供がハーバード大学に行きたいと言ってきた場合、4年で4000万円以上かかると言われていますが、全額出してあげますか?」とお聞きすると、Aさんは「そのお金はさすがに厳しいです。子供2人いますし……」と言われました。
その額を用意するのは、現実的ではないですよね。
「どの進路までは出してあげたいですか?」とお聞きすると、Aさんは「中学校までは公立を考えています。高校と大学はやりたいことがあって、私立に行きたいと言ってきたら全額出せるように準備しておきたいです」と言われました。
Aさん自身がスポーツの強豪校に行きたいという理由で、県外の私立の大学に進学しており、大学費用、下宿代を含めた仕送りも両親がしてくれて、本気でやりたいことを応援してくれた両親にすごく感謝しているそうです。自分の子供に対しても、やりたいことを全力で応援したい、お金が理由で子供の選択肢を狭めたくないと強く思っていました。
「あくまで平均ですが、私立高校は3年間で約320万円、理系の私立大学は4年間で約550万円、合計約870万円必要です。後は仕送りの平均が4年で約400万円なので、全額用意しようと思うと、約1270万円必要ですがいかがですか?」とお聞きしました。
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出典:日本政策金融公庫 令和3年度「教育費負担の実態調査結果」より拡大画像表示
Aさんは「二人とも高校大学両方を私立に行くかわからないですし、下宿が必要な場合は、奨学金を使ってもらうことにして、1人1000万円準備しておくのはどうですか?」と言われました。
Aさんは子供1人あたり1000万円貯めて、それ以上かかった場合は、奨学金を使ってもらう決断をされました。教育費はかけようと思えばいくらでもかけられます。このように、親がいくらまで準備するかを決めることが大切です。
この記事では教育費に不安を感じている多くの親の現状と、その不安がなくなるポイントの1つを紹介しました。〈「老後資金」よりもまず「教育費」を貯めたほうがいい…貯蓄額1000万円でも不安がある30代夫婦へのアドバイス〉では、もう1つの大切なポイントをお伝えします。